Ahiまぐろ(水産)
水産物HACCP
⚠ FDAが指摘した実例「記録が無い」だけで警告書に——ハワイのマグロ加工会社が問われたこと
ハワイのある水産加工会社が、FDAから警告書を受け取りました。理由は、まぐろの「鮮度チェックの記録」が残っていなかったことです。まぐろは、生食用として人気の高い食材です。でも、鮮度管理を誤ると、思わぬ健康被害につながることがあります。今日は、この実例から学べることを整理します。
はじめに——水産物HACCPとヒスタミン
水産物を加工したり、アメリカへ輸入したりする事業者には、「水産物HACCP」というルール(21 CFR Part 123)が適用されます。これは、危害要因(ハザード)をあらかじめ分析し、それを防ぐための管理計画(HACCP計画)を作って、実際に守ることを求める制度です。特にキハダマグロやメバチマグロ(英語でAhiと呼ばれます)は、「ヒスタミン形成魚」の代表格です。魚の鮮度が落ちると、魚肉の中でヒスタミン(スコンブロイド毒素)という物質が作られます。厄介なのは、一度できてしまったヒスタミンは、加熱しても壊れないことです。だからこそ、原料を受け入れる時点での鮮度・温度チェックが、管理計画の中でも特に重要な「CCP(重要管理点)」に位置づけられます。
実際の例——ハワイの水産加工会社に届いた警告書
ハワイ・ホノルルにある水産加工会社「SI Marketing Inc.」は、2017年2月にFDAの査察を受けました。同社は、生食用(刺身用)として販売するフレッシュなAhi(まぐろ)を扱っていました。査察の結果、FDAは同社のHACCP計画に複数の不備があると指摘しました。まず、2017年2月2日と6日に受け入れたまぐろの入荷について、ヒスタミン(スコンブロイド毒素)を管理するための基準(クリティカルリミット)を守れているかを確認した記録が残っていませんでした。さらに、冷蔵保管中の温度管理についても、細菌の増殖やヒスタミン形成を防げているかどうかの監視記録がありませんでした。加えて、HACCP計画そのものにも欠陥があり、「受け入れ・保管時の温度管理を誤ると、ヒスタミン形成やそれに伴う菌の増殖が起こりうる」という危害要因が、十分に位置づけられていませんでした。
なぜ問題なのか
今回のポイントは、「実際に食中毒が起きた」ことではなく、「管理していたはずの証拠(記録)が無かった」ことです。FDAのルールでは、HACCP計画を作るだけでなく、決めた基準を実際に守れているかどうかを、その都度記録に残すことが義務づけられています。記録が無ければ、たとえ現場できちんと確認していたとしても、「確認した」という証明ができません。FDAは今回の不備に対して、該当するロットを冷蔵保管したままヒスタミン分析をするか、それができなければ廃棄するよう勧告しました。さらに、生食用まぐろを扱う工場としての衛生管理記録(用水の安全性、二次汚染の防止、器具の洗浄、薬品の保管・表示、害虫の侵入防止など)も、十分にそろっていませんでした。
日本企業が注意すべきこと
日本からアメリカへまぐろなど生食用の魚介類を輸出する場合も、同じ考え方が問われます。「現場でちゃんとやっている」だけでは足りません。「やった」という証拠を、記録として残すことが必須です。
- 入荷したまぐろごとに、受入れ時の温度・鮮度を確認した記録を残しているか
- 冷蔵・冷凍保管中の温度モニタリング記録を、決めた頻度で残しているか
- HACCP計画の中で、ヒスタミン形成や菌の増殖という危害要因を、受入れ・保管それぞれの工程できちんと位置づけているか
- 生食用として扱う場合、用水・二次汚染防止・洗浄・薬品管理・防虫といった衛生管理記録もそろっているか
記録は「やっていた証明」
このケースでは、FDAが2019年に追跡調査を行い、SI Marketing社が指摘事項を改善したことを確認しています。つまり、記録の仕組みを整え直せば、挽回は可能だということです。裏を返せば、最初からきちんとした記録の仕組みを作っておくことが、輸出を止めないための一番の近道とも言えます。
ワールドシフトでは、水産物HACCP計画の整備や、受入れ・保管時の記録フォーマットづくりといった具体的なサポートも行っています。「うちのヒスタミン管理の記録は、これで十分なんだろうか」「HACCP計画のどこを直せば指摘を防げるのか」といった判断も含めて、米国輸出前のFDA対応をお任せいただけます。
※輸出前の確認だけでなく、取得後の更新・表示の維持・査察対応まで、取った後も一緒に点検します。対応できる範囲は品目・工程により異なり、米国代理人・FSVP等は連携先を通じてご案内します。
出典・参考:FDA原文で確認する(fda.gov)↗
自社の商品で同じ指摘を受けないために——