ブリ属フィレ(対米輸出)
水産物HACCP
⚠ FDAが指摘した実例ぶり・はまちの刺身輸出、「冷やしているから大丈夫」で本当にいいですか
刺身用のぶり・はまち・かんぱちを対米輸出するなら、ヒスタミン管理は避けて通れません。今回はベネズエラの水産加工会社がFDAから警告書を受け取った実例から、その理由を見ていきます。
はじめに——水産物HACCPとは
魚介類を加工して輸出する事業者には、「水産物HACCP」(21 CFR 123)というルールが適用されます。自社の製品にどんな危害(ハザード)があるかを分析し、それを防ぐための計画(HACCP計画)を作って、実際に守ることが義務づけられています。
ぶり・はまち・かんぱちなどのブリ属(Seriola)の魚でとくに注意が必要なのが、ヒスタミンです。魚に含まれる成分が、温度管理の甘さによって分解され、ヒスタミンという毒素に変わります。これは「スコンブロイド毒素」とも呼ばれます。厄介なのは、一度できてしまうと加熱しても壊れないことです。もう一つの代表的な危害が寄生虫です。生食用に出す魚は、冷凍によって寄生虫を死滅させる工程が必要になります。
実際の例——ベネズエラの水産加工会社に届いた警告書
2024年10月、FDAはベネズエラ・カラカスの水産加工会社「Grupo VPAS C.A.」に警告書を出しました。対象は、フィレにして急速冷凍した「Medregal」という魚です。英語で"greater amberjack"、日本でいう「かんぱち」と同じ仲間の魚です。
FDAは2024年1月22日から26日にかけて、この会社の水産物HACCP体制をリモートで確認しました(Foreign Remote Regulatory Assessment)。その結果、いくつもの不備が見つかりました。
何が指摘されたか
まず、HACCP計画そのものに問題がありました。ヒスタミンを防ぐための管理基準(クリティカルリミット)が、腐敗臭が出ていないかという基準しか設けられておらず、不十分だと判断されました(21 CFR 123.6(c)(3))。
さらに、船から水揚げして加工場まで運ぶ間の温度管理が、そもそもHACCP計画の管理ポイント(CCP)として設定されていませんでした。輸送中は4℃以下を保ち、連続的に温度を記録・監視する必要があるとFDAは指摘しています。
加えて、実際の監視のやり方にも問題がありました。魚の内部温度だけを測っても、魚全体がきちんと冷えているかは分かりません。また、何尾を検査するのかという最低限のルールも決まっていませんでした。HACCP計画に書いた監視手順を、受け入れの工程できちんと実行できていなかったのです(21 CFR 123.6(b)、(c)(4))。
日本企業が注意すべきこと
この事例は、南米の遠い会社の話に見えるかもしれません。でも、ぶり・はまち・かんぱちを刺身用に対米輸出する日本の事業者にとっても、構造はまったく同じです。水揚げから加工、輸送まで、どこか一か所でも温度管理が緩むと、ヒスタミンは静かに増えていきます。しかも、後から加熱しても取り返しがつきません。
チェックしておきたいポイントはこちらです。
- HACCP計画のクリティカルリミットが「腐敗臭の有無」だけでなく、温度・時間の数値基準になっているか
- 水揚げから加工場搬入までの区間も、CCP(管理ポイント)として計画に含めているか
- 「内部温度を測っただけ」で監視完了にしていないか。魚全体が均一に冷えているかを確認できているか
- 検査する尾数の最低ルールを決めているか
- 生食向けなら、寄生虫を死滅させる冷凍工程(温度・期間)も別途管理できているか
「たぶん大丈夫」を「確認済み」に変える
ヒスタミンは、見た目や匂いだけでは判断できないことがあります。だからこそ、HACCP計画に数字で基準を書き、その通りに記録を残すことが必要になります。
ワールドシフトでは、ぶり・はまち・かんぱちなど生食向け水産物の水産物HACCP計画の整備や、輸送・受入時の温度管理体制の見直しをサポートしています。「うちの冷凍工程は寄生虫対策として十分な温度・期間になっているか」「クリティカルリミットの数値をどう決めればいいか」といった判断も含めて、米国輸出前のFDA対応をお任せいただけます。
※輸出前の確認だけでなく、取得後の更新・表示の維持・査察対応まで、取った後も一緒に点検します。対応できる範囲は品目・工程により異なり、米国代理人・FSVP等は連携先を通じてご案内します。
出典・参考:FDA原文で確認する(fda.gov)↗
自社の商品で同じ指摘を受けないために——