冷凍まぐろ(対米輸出)
水産物HACCP
⚠ FDAが指摘した実例そのまぐろ、本当に「冷えたまま」でしたか?——ヒスタミン管理で警告を受けた水産会社の教訓
冷凍まぐろを米国に送るとき、多くの方が気にするのは鮮度や品質でしょう。でも実は、FDAがいちばん厳しく見ているのは「加工中に常温にさらされた時間」だったりします。インドネシアの水産加工会社が受けた警告書から、その理由を見ていきます。
はじめに——水産物HACCPとヒスタミン
魚介類を加工して米国に輸出する事業者は、「水産物HACCP(21 CFR 123)」というルールに沿って、自社の製品にどんな危害(ハザード)があるかを分析し、それを防ぐためのHACCP計画を作って実行する義務があります。
まぐろは、その中でも特に注意が必要な「ヒスタミン形成魚」の代表格です。鮮度が落ちると、魚の中でヒスタミン(スコンブロイド毒素)という物質が作られてしまう場合があります。厄介なのは、いったんできてしまうと、あとで加熱しても分解されないことです。だからこそ、水揚げから加工・冷凍・保管まで、どの段階でどれくらい常温にさらされたかという「温度管理(CCP=重要管理点)」が決定的に大切になります。生食用(刺身・寿司ネタなど)の場合は、これに加えて寄生虫対策としての冷凍条件も関わってきます。
実際の例——冷凍まぐろのHACCP計画に見つかった穴
今回取り上げるのは、インドネシアの水産加工会社PT. SIG Asiaのケースです。FDAは2019年7月、生食・加熱調理用として冷凍・真空パック出荷される同社のまぐろ製品について、スコンブロイド毒素形成魚に関するHACCP計画の提出を求めました。同社は「HACCP FROZEN TUNA」という計画書と、モニタリング記録5件をFDAに提出しています。
ところがFDAがこれを審査したところ、その計画は水産物HACCP規則(21 CFR 123)の要求から見て、重大な不備があることが分かりました。
なぜ問題なのか——指摘された3つのポイント
FDAが指摘した内容は、大きく分けて次の3点でした。
1つ目は、常温にさらされる加工工程すべてに、ヒスタミン形成を防ぐための重要管理点(CCP)が設定されていなかったことです。工程の一部にしかCCPがなく、抜け落ちている段階があったのです。
2つ目は、各CCPで定められていた管理基準(クリティカルリミット)が、そもそもヒスタミン形成やボツリヌス毒素の形成を防ぐには不十分な内容だったことです。「一応、基準は書いてある」だけでは足りない、ということです。
3つ目は、基準から外れたときの是正措置が適切でなかったことです。FDAは、該当するロットをいったん冷却・保管したうえで、その中から代表的に集めた最低60尾の魚についてヒスタミン分析を行うよう求めています。なお同社はその後対応を進め、2019年12月には是正措置についてFDAの評価が完了し、指摘事項への対応ができていると確認されています。
日本企業が注意すべきこと
日本のまぐろ・かつお輸出でも、水揚げ後の選別や加工の現場では、どうしても常温にさらされる時間が発生します。大切なのは、「気をつけて冷やしている」という感覚ではなく、それを工程ごとに文書化し、数値の基準と記録として残せているかどうかです。今回の事例を、自社の計画を見直すきっかけにしてみてください。
- 水揚げから加工・梱包までの中で、常温にさらされる工程をすべて洗い出し、それぞれにCCPを設定しているか
- 各CCPの管理基準(時間・温度)が、実際にヒスタミン形成を防げる具体的な数値になっているか
- 基準を外れた場合の是正措置(保管方法・検査の方法や検体数など)を、あらかじめ具体的に決めているか
- 生食用として出荷する製品については、寄生虫対策としての冷凍条件もHACCP計画に含めているか
- モニタリング記録を、実際の作業の中で継続して取り続けられているか
「計画はある」で終わらせないために
HACCP計画そのものは作っていても、その中身がFDAの求める水準を満たしているかどうかは、また別の話です。今回のケースのように、計画書と記録を提出したうえで「不十分」と判断されるケースは珍しくありません。
ワールドシフトでは、水産物HACCP計画の整備や、CCP・管理基準の見直しといった具体サポートも行っています。「うちのCCPの設定でヒスタミンは本当に防げているのか」「生食用と加熱用で計画を分けるべきか」といった判断も含めて、米国輸出前のFDA対応をお任せいただけます。
※輸出前の確認だけでなく、取得後の更新・表示の維持・査察対応まで、取った後も一緒に点検します。対応できる範囲は品目・工程により異なり、米国代理人・FSVP等は連携先を通じてご案内します。
出典・参考:FDA原文で確認する(fda.gov)↗
自社の商品で同じ指摘を受けないために——