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衛生cGMP2024-11

RTEベーカリー(1900品)

施設の衛生管理(cGMP)・食品安全計画

⚠ FDAが指摘した実例

釘が刺さった木のカゴと台——「手作り感」が仇になった日

実例で学ぶ(実録)|施設の衛生管理(cGMP)

サワードウ生地を発酵させる木製のカゴ。木のこね台。パン屋さんならどこにでもありそうな道具です。でも、その道具が原因でFDAから警告書を受け取った会社があります。そのまま食べられる(RTE)ベーカリー製品を作る米国の施設、Breadbox Co.の事例です。「衛生管理」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、実は日常の道具の扱い方ひとつが問われる話でもあります。

はじめに——cGMP・予防管理とは

米国で食品を製造する施設には「予防管理規則」(21 CFR 117)という決まりが適用されます。まず土台になるのが、施設をきれいに保つための基本ルール「cGMP」(Current Good Manufacturing Practice)です。そのうえで、施設ごとに「どんな危害(ハザード)が起こりうるか」を分析し、それを防ぐための計画(食品安全計画)を作ることが求められます。この計画は、PCQI(Preventive Controls Qualified Individual=予防管理適格者)という、決められた研修などを受けた責任者の監督のもとで作らなければなりません。

特にRTE(そのまま加熱調理せずに食べられる)食品は注意が必要です。加熱の工程がない、もしくは加熱後に人の手や設備に触れる機会が多いため、リステリア菌などが施設内に住み着いて製品に付いてしまうリスクが高いといわれています。だからこそ、施設の衛生状態や道具の管理が細かくチェックされるのです。

実際の例——木製の道具に残っていた食品残渣と釘

FDAは2024年5月10日から6月7日にかけて、カリフォルニア州サンタフェスプリングスにあるBreadbox Co.の施設を査察しました。同社はRTEのベーカリー製品(サワードウ生地を含む)を製造していました。

査察でFDAが確認したのは、次のような状態です。サワードウ生地を発酵させるために使う木製のカゴが、割れて破損しており、金属の釘で補修されていました。また、製パン室にあった木製の作業台には深い溝ができていて、そこに食品の残りかすがこびりついた状態になっていました。しかもその台の表面からは、釘やねじが飛び出していました。

これらの状態から、FDAはこの施設で作られたRTEベーカリー製品について、不衛生な環境で調製・保管されており、汚れが混入したり健康を害するおそれがある状態(連邦食品・医薬品・化粧品法402(a)(4)にいう「不良品」)にあると判断しました。さらに、施設は製品ごとの危害要因分析を行っておらず(21 CFR 117.130(c)(1)(ii)違反)、PCQIの監督のもとでの食品安全計画も作成・実行されていませんでした。回収(リコール)が必要になった場合の手順書も、文書として用意されていませんでした。

出典(FDA Warning Letter)↗

なぜ問題なのか

木製の道具そのものが悪いわけではありません。問題は「破損した木材」と「金属の釘・ねじ」が組み合わさっていたことです。割れた木の隙間や深い溝は、洗浄してもきれいに汚れを落としきれません。そこに食品の残りかすが入り込むと、菌が住み着く温床になりやすくなります。加えて、飛び出した釘やねじは、製品に金属片が混入する物理的な危害にもつながります。

そしてもうひとつ大事なのは、食品安全計画そのものが作られていなかった、という点です。仮に道具を新しくしても、危害要因を洗い出し、監視し、問題があれば正す仕組みがなければ、また別の形で同じような問題が起きかねません。FDAが厳しく見るのは、個別の汚れそのものよりも「それを防ぐ仕組みがあるかどうか」なのです。

日本企業が注意すべきこと

日本のパン・菓子・惣菜メーカーの中にも、木製の発酵カゴや木のこね台、木べらなど、天然素材の道具を「手作りらしさ」として大切にしているところは多いはずです。それ自体は悪いことではありません。ただ、米国向けに輸出する場合は、その道具の状態と管理の仕方が問われることを意識しておく必要があります。

  • 木製・自然素材の道具は、ひび割れや破損がないか定期的に点検されているか
  • 洗浄してもかすが残ってしまうような溝・傷がある道具は、早めに交換する基準があるか
  • 釘やねじなど金属部品が使われている場合、緩みや突出がないか確認されているか
  • そもそも自社の製品について、危害要因分析(ハザード分析)を行った食品安全計画が文書として存在するか
  • その計画は、PCQI(予防管理適格者)の資格を持つ担当者の監督のもとで作られているか
  • 万が一の際の回収(リコール)手順が、あらかじめ文書化されているか

「うちは大丈夫」と思う前に、一度点検を

今回のケースは、決して特殊な工場だけの話ではありません。手作りにこだわる工程ほど、木製道具や昔ながらの設備が使われがちだからこそ、点検の目が届きにくくなることがあります。

ワールドシフトでは、食品安全計画の整備やPCQI配置の要否判断、施設の衛生管理体制の見直しといった、米国輸出前のFDA対応をサポートしています。「うちの発酵カゴは交換が必要なのか」「PCQIは自社で用意すべきか、それとも外部に依頼すべきか」といった判断も含めて、輸出前の段階からご相談いただけます。

※輸出前の確認だけでなく、取得後の更新・表示の維持・査察対応まで、取った後も一緒に点検します。対応できる範囲は品目・工程により異なり、米国代理人・FSVP等は連携先を通じてご案内します。

出典・参考:FDA原文で確認する(fda.gov)↗

自社の商品で同じ指摘を受けないために——

WorldShift Trade Watch — 出典はFDA。