RTEベーカリー
施設の衛生管理(cGMP)・食品安全計画
⚠ FDAが指摘した実例焼きたてのパンが止められる日——工場の「見えない衛生リスク」
パンやケーキ、お惣菜パンのように「そのまま食べられる」食品は、実は衛生管理のハードルがいちばん高い部類に入ります。加熱や調理をもう一度しないまま口に入るため、工場のちょっとした管理の甘さがそのままリスクになってしまうからです。今回は、米国のベーカリー工場がFDA(米国食品医薬品局)から警告を受けた実例をもとに、何が問題とされたのかを見ていきます。
はじめに——cGMP・予防管理とは
米国で食品を製造する施設には「予防管理規則(21 CFR 117)」というルールが適用されます。これは、①工場の衛生管理(cGMP=Current Good Manufacturing Practice、適正製造規範)、②起こりうる危害をあらかじめ洗い出す「ハザード分析と予防管理(HARPC)」、③それらをまとめた食品安全計画、の3つを、PCQI(予防管理適格者)という専門知識を持つ担当者の監督のもとで作り、実行することを求めるものです。特にRTE(そのまま食べられる)食品は、リステリア菌などの菌が製造後に付着してしまう「再汚染」のリスクが高く、環境モニタリングや衛生管理が重視されます。査察でこうした管理の不備が見つかると、その食品は「adulterated(不良食品)」とみなされ、Warning Letter(警告書)の対象になります。
実際の例——ベーカリー工場に届いた警告書
2024年8月、FDAは米国フロリダ州フォートローダーデールにあるベーカリー工場、Mena Food Group LLCに警告書を送りました。この工場ではパン・ケーキ・ペストリーといったRTE製品を製造していましたが、2023年10月30日から11月20日にかけての査察で、21 CFR Part 117(cGMP&予防管理規則)に反する重大な違反が見つかりました。FDAは、この工場で作られた食品が「不衛生な状態で調製・保管されており、健康を害するおそれがある」と判断しています。
なぜ問題なのか
FDAが特に指摘したのは、ハザード分析の抜け漏れでした。この工場は、パン・ケーキ・ペストリーについて「製造工程のあとで環境中の病原菌が再び付着してしまう」というリスクを、あらかじめ想定すべき危害として洗い出せていませんでした。具体的には、サルモネラ菌やリステリア菌といった病原菌に対する管理策が実行されていなかったとされています。RTE食品はこのあと加熱されることがないため、こうした菌がそのまま消費者の口に入ってしまう可能性があります。「衛生管理をしていたつもり」でも、危害を正しく洗い出せていなければ、予防管理として認められないということです。
日本企業が注意すべきこと
日本からパンやお菓子、お惣菜パンを米国に輸出する場合も、同じ枠組み(21 CFR 117)が適用されます。「加熱済みだから安全」という考え方は通用せず、製造後の取り扱いまで含めてリスクを洗い出しておくことが大切です。次のような点は、事前にチェックしておきたいポイントです。
- 自社のRTE製品について、製造後の「再汚染リスク」(リステリア菌・サルモネラ菌など)を危害分析の中できちんと洗い出せているか
- そのリスクに対する予防管理策(環境モニタリングや清掃手順など)が、書面と実務の両方できちんと運用されているか
- これらの計画がPCQI(予防管理適格者)の資格を持つ担当者の監督のもとで作成・見直しされているか
「作れている」と「証明できている」の違い
今回の事例は、工場が悪意を持って手を抜いていたというより、「想定すべきリスクの洗い出しが足りなかった」ことが引き金になっています。これは、初めて米国輸出に取り組む日本の食品事業者にとっても、他人事ではないポイントです。
ワールドシフトでは、cGMP・HARPC・食品安全計画の整備状況の確認や、PCQI観点での見直しサポートも行っています。「うちのRTE製品は、このままの管理体制で輸出して大丈夫なのか」といった判断も含めて、米国輸出前のFDA対応をお任せいただけます。
※輸出前の確認だけでなく、取得後の更新・表示の維持・査察対応まで、取った後も一緒に点検します。対応できる範囲は品目・工程により異なり、米国代理人・FSVP等は連携先を通じてご案内します。
出典・参考:FDA原文で確認する(fda.gov)↗
自社の商品で同じ指摘を受けないために——