月餅・中華菓子(RTE)
施設の衛生管理(cGMP)・食品安全計画
⚠ FDAが指摘した実例月餅の生地に虫がいた——中華菓子ベーカリーが受けたFDAの指摘
中秋節向けの月餅や中華菓子を作るベーカリーが、FDAの査察で「食品安全計画がない」「虫の侵入を防げていない」と指摘されました。あんこ入りの和菓子を米国に送る日本の輸出者にとっても、他人事ではない事例です。
はじめに——cGMP・予防管理とは
米国で食品を製造する施設には「予防管理規則」(21 CFR 117)が適用されます。求められるのは大きく3つです。まず、工場の衛生管理(cGMP)。次に、どんな危害要因があるかを洗い出す「ハザード分析」と、その対策(予防管理)。そして、これらをまとめた「食品安全計画」です。この計画は、PCQI(予防管理適格者)という資格を持つ人の監督のもとで作られる必要があります。特にRTE(そのまま食べられる)の菓子やベーカリー製品は、リステリア菌などのリスクが高いとされています。あんこ・カスタードなど水分の多いフィリングは、微生物が増えやすいので注意が必要です。
実際の例——「虫がいた」ではすまなかった査察
Sheng Kee of California, Inc.(Sheng Kee Bakery)のブリスベン(カリフォルニア州)にある工場は、2023年8月14日から31日にかけてFDAの査察を受け、2024年4月24日付で警告書を受け取りました。指摘は大きく分けて4つです。1つ目は、食品安全計画そのものが作成・実行されていなかったこと(21 CFR 117.126(a)(1))。しかもPCQIの監督下で計画を作る体制も整っていませんでした(21 CFR 117.126(a)(2))。2つ目は、アレルゲンのハザード分析の不備です。査察官は8月15日、従業員が蓮の実あん・小豆あんの月餅(Lotus Mooncake、Red Bean Mooncake)の生地に卵液を塗る様子を確認しました。工場は卵・大豆・小麦・乳・ごま・落花生・木の実など複数のアレルゲンを含む製品を作っていたのに、これらを「起こりうる危害要因」として洗い出せていませんでした。3つ目は、害虫の侵入防止です。8月14日、原材料や製品を保管する常温倉庫で多数の飛ぶ虫が確認され、大型の搬入口は稼働時間中も開けっ放しでした。各製造室でも飛ぶ虫が見つかりました。翌8月15日には、冷たいデザート用に使う予定だった調合ボウルの中に飛ぶ虫がいるのが確認されています。さらに、小麦粉サイロの下の粉だまり付近を虫のようなものが歩いており、倉庫・調理準備室・電気室ではクモも見つかりました。4つ目は、一部商品(小型月餅の詰め合わせ、ミニ茶菓月餅の詰め合わせ、卵パン)の栄養成分表示が基準(21 CFR 101.9)を満たしていなかったことです。
なぜ問題なのか
今回の指摘は、単発の見落としではありません。根が深いのは、そもそも「食品安全計画」という土台が最初から存在しなかった点です。計画がきちんとあれば、害虫のリスクやアレルゲンのリスクは事前に洗い出され、モニタリングや是正の手順も決まっていたはずです。土台がないまま製造を続けていた、というのがFDAの見立てです。虫が見つかったこと自体も深刻ですが、それを防ぐ仕組みがなかったことがより本質的な問題とされています。
日本企業が注意すべきこと
あんこ・カスタード・生クリームなど水分の多いフィリングを使う和菓子は、保管や輸送の途中で微生物(リステリア菌など)が増えるリスクがあります。RTE(そのまま食べられる)商品は、後から加熱する工程がないため、工場の衛生状態がそのまま食べる人のリスクに直結します。米国輸出の前に、次の点を確認しておくと安心です。
- 食品安全計画が文書として存在するか。PCQIの資格を持つ人が作成・監督に関わっているか。
- 卵・小麦・乳・ごま・落花生・木の実・大豆などのアレルゲンを使う工程で、交差接触の防止やアレルゲンの洗い出しがされているか。
- 搬入口・倉庫・製造室で虫やクモなどの侵入経路がふさがれているか。定期的な点検記録が残っているか。
- 栄養成分表示が21 CFR 101.9の様式に沿っているか。
「うちは大丈夫」を、書類で言えるように
今回のケースで問われたのは、味や品質そのものではなく、「仕組みとして守れているか」でした。感覚的に衛生管理をしているつもりでも、それを文書や記録として示せなければ、FDAには伝わりません。
ワールドシフトでは、食品安全計画やPCQI体制の整備、アレルゲン管理、輸出前のラベル確認といった具体的な準備もサポートしています。「うちのあんこ菓子はリステリア菌のリスクをどう説明すればいいのか」「PCQIって誰に頼めばいいのか」といった判断も含めて、米国輸出前のFDA対応をお任せいただけます。
※輸出前の確認だけでなく、取得後の更新・表示の維持・査察対応まで、取った後も一緒に点検します。対応できる範囲は品目・工程により異なり、米国代理人・FSVP等は連携先を通じてご案内します。
出典・参考:FDA原文で確認する(fda.gov)↗
自社の商品で同じ指摘を受けないために——