醤油・わさびドレッシング(酸性化)
酸性化/LACF
⚠ FDAが指摘した実例FDA登録だけでは不十分?酸性化食品とグレーマーケットから見る米国流通リスク
食品をアメリカへ輸出する際、FDA施設登録や英語ラベル対応は重要な準備のひとつです。しかし、米国向け食品輸出では、FDA登録だけで対応が完了するとは限りません。特に注意したいのが、商品カテゴリーの判断です。一見すると一般的な食品に見える商品でも、FDA上は「酸性化食品」として扱われ、通常の食品とは別の手続きや工程管理が必要になる場合があります。また、流通経路にも注意が必要です。自社が直接米国へ輸出していない場合でも、取引先を通じて商品が米国市場に流通すれば、製造者であるメーカー側がFDA上の責任を問われる可能性があります。今回は、FDAが公表したある日本の醤油メーカーへのWarning Letterをもとに、米国向け食品輸出で注意すべき「酸性化食品」と「グレーマーケット」のリスクについて整理していきます。
実際の事例でFDAが指摘した内容
今回の事例は、FDAによるある醤油メーカーの酸性化食品施設への査察から始まります。
FDAは査察の結果、酸性化食品に関する規則から見て重大な逸脱があると指摘し、査察終了時に、指摘事項をまとめた文書「FDA-483」を発行しました。
FDAからの主な指摘は、以下の内容でした。
- 米国へ出荷されていた商品について、酸性化食品として必要なscheduled processがFDAに提出されていなかった
- scheduled processの未提出だけでなく、pH値、温度管理、充填工程など、工程面の管理にも問題があった
scheduled processとは、簡単にいうと、その食品を安全に製造するための工程情報のことです。
酸性化食品に該当する場合、通常の食品としてのFDA対応だけでなく、このような追加の手続きや工程管理が求められる場合があります。
また、流通経路についても重要なポイントがあります。
同社は査察時、自社が直接米国へ輸出しているのではなく、国内の貿易会社に商品を販売し、その貿易会社が米国へ輸出しているとFDA査察官に説明していました。
その後、同社はFDA-483発行後の書面回答で、以下の内容を説明しました。
- 対象商品について、酸性化食品としての対応が必要であることを認識した
- 対象商品がFDA上の酸性化食品に該当するとの認識を、国内の販売先や従業員へ通知した
- 対象商品の米国輸出を行わないことを決め、取引先に対しても米国への輸出停止を依頼した
しかしFDAは、この回答を十分とは認めず、Warning Letterを公表しました。
この事例には、輸出前の確認と、FDAから指摘を受けた後の回答内容の両方に重要なポイントがあります。
この事例から押さえたい2つの注意点
① 商品カテゴリーに応じたFDA対応が抜け落ちるリスク
1つ目は、米国向けに流通する商品がFDA上どのカテゴリーに該当するのかを、事前に確認しておく必要があるという点です。
今回FDAに指摘された商品は、酸性化食品としての対応が必要な商品でした。
酸性化食品に該当する場合、一般的な食品としてのFDA対応だけでなく、scheduled processの提出が必要になる場合があります。
今回の事例では、このscheduled processの未提出に加えて、pH値、温度管理、充填工程など、工程面の管理にも問題があると指摘されています。
つまり、商品カテゴリーの判断を誤ると、必要な手続きだけでなく、酸性化食品として確認すべき製造工程や管理体制まで見落としてしまう可能性があるということです。
その結果、FDAから追加の説明や根拠資料の提出を求められたり、米国への輸入時に留め置きや拒否の対象になったりする場合があります。
「食品だから通常のFDA対応で大丈夫」「国内で問題なく販売できているから、米国向けも同じ対応で足りる」と自己判断してしまうのは危険です。
米国向けに食品を流通させる場合は、まず自社商品がFDA上どのカテゴリーに該当するのかを確認し、その商品に必要な手続きや管理項目を整理しておくことが重要です。
② 取引先経由の流通では、輸出停止だけでは回答になりにくい
2つ目は、商品が取引先経由で米国へ流通している場合、「今後は輸出しません」と伝えるだけでは、FDAから十分な回答と見なされにくいという点です。
今回の事例では、同社は自社が直接米国へ輸出しているのではなく、国内の貿易会社に販売した商品が米国へ輸出されていたと説明していました。
そのうえで、対象商品の米国輸出を行わないことや、取引先に対して米国への輸出停止を依頼したことを説明しています。
しかしFDAは、それだけでは十分ではないと判断しました。
この背景には、大きく2つの理由があると考えられます。
理由A:グレーマーケットによる再流通リスクが残るため
グレーマーケットとは、メーカーが直接管理していない流通ルートを通じて、商品が別の国や市場へ流通することです。
自社で米国向けの流通を管理している場合は、どの商品を出荷し、どの商品を出荷停止にするのかを自社で判断・管理できます。
一方で、今回のように取引先経由で商品が米国へ出ている場合、メーカー側が輸出停止を依頼しても、自社の管理が及ばないルートで流通する余地が残ります。
つまり、輸出停止を依頼したとしても、第三者経由で再び米国へ流通する可能性までは完全に否定できないということです。
そのためFDAは、輸出停止の依頼だけでは、再流通リスクを防ぐ対応として不十分だと見ていたと考えられます。
理由B:FDAの指摘内容そのものへの回答になっていないため
もう一つ重要なのは、FDAが求めていたのは「今後輸出するかどうか」だけではないという点です。
今回FDAが指摘していたのは、scheduled processの未提出だけではありません。
pH値、温度管理、充填工程など、酸性化食品としての工程管理についても問題があると指摘されていました。
そのため、「今後は輸出しません」と伝えるだけでは、FDAが指摘した内容に対して、何を確認し、どのように対応するのかが十分に示されていないと判断される可能性があります。
つまり、今回の事例は「指摘されたら輸出を止めればよい」という話ではありません。
米国へ流通する前の段階で、商品カテゴリーに応じたFDA対応と、取引先経由の流通リスクを整理しておくことが重要です。
企業が輸出前に確認したいFDA対応と流通経路のチェックポイント
ここまで見てきたように、今回の事例では、酸性化食品としての対応不足と、取引先経由で米国へ流通する場合のリスクが問題になりました。
同じようなリスクを避けるには、米国へ流通する前の段階で、必要なFDA対応と流通経路を確認しておくことが重要です。
特に確認したいポイントは、次のとおりです。
- 自社商品がFDA上どのカテゴリーに該当するのか
- 酸性化食品に該当する場合、scheduled processなどの追加対応が必要ないか
- pH管理、温度管理、充填工程など、工程面の確認が必要ないか
- 取引先経由で米国へ流通する可能性がないか
- 取引先と、米国向け輸出の可否や事前確認ルールを共有できているか
- FDAから指摘を受けた場合に、根拠資料や説明資料を提出できる状態になっているか
また、FDAから指摘を受けた後に「今後は輸出しません」と伝えても、それだけで十分な回答になるとは限りません。
指摘内容に対する説明、根拠資料の提出、再発防止策の整理、すでに米国へ流通した商品の確認など、後から対応範囲が大きくなる可能性があります。
だからこそ、米国輸出を検討している段階で、自社商品に必要なFDA対応と、取引先経由で流通する可能性を整理しておくことが重要です。
ワールドシフトなら、継続運用まで支援します
ワールドシフトでは、食品の米国輸出を検討している企業様向けに、FDA登録だけでなく、商品ごとの該当性確認や、必要な手続きの整理、米国向けに流通する際の注意点まで含めたFDA対応サポートを行っています。
「この商品は酸性化食品に該当する可能性があるのか」
「FDA登録以外に必要な対応はあるのか」
「取引先経由で米国へ輸出する場合、どこまで確認すべきなのか」
このような不安がある場合は、輸出前の段階で、自社商品に必要なFDA対応を確認しておくことをおすすめします。
FDA対応は、一度登録を済ませたら終わりではありません。
商品カテゴリー、製造工程、原材料、流通経路、取引先との関係性まで含めて、継続的に確認・管理していくことが大切です。
FDA対応を一度きりで終わらせず、安心して米国販売を続けるための体制を整えたい企業様は、ぜひワールドシフトへご相談ください。
※輸出前の確認だけでなく、取得後の更新・表示の維持・査察対応まで、取った後も一緒に点検します。対応できる範囲は品目・工程により異なり、米国代理人・FSVP等は連携先を通じてご案内します。
出典・参考:FDA原文で確認する(fda.gov)↗
自社の商品で同じ指摘を受けないために——