海藻加工(酸性化)
酸性化食品・低酸性缶詰(LACF)
⚠ FDAが指摘した実例昆布やわかめの加工品も要注意?ある海藻加工品メーカーがFDAから警告を受けた話
常温で長く保存できる密封食品には、実はかなり厳しいルールがあります。今回は、海藻を使った加工食品を米国に輸出していたデンマークの会社が、FDAから警告書を受け取った実例を見ていきます。昆布やわかめの酢漬け・佃煮を輸出している(または輸出を考えている)日本の会社にとっても、他人事ではない話です。
はじめに——LACF・酸性化食品とは
缶詰やパウチのように、密封した容器に入れて常温で流通させる食品には、「低酸性缶詰食品(LACF)」と「酸性化食品」という2つの区分があります。どちらも、ボツリヌス菌という毒素を作る菌のリスクを防ぐための制度です。ボツリヌス菌は酸素のない密封容器の中で増えやすく、加熱やpH(酸性度)の管理が不十分だと命に関わる中毒を起こすことがあります。そのため、製造工場はFDAに「FCE(Food Canning Establishment)」として登録し、さらに商品ごとの加熱条件やpH、水分活性などの製法(Scheduled Process)を、製造を始める前にFDAへ提出しておく必要があります。
実際の例——海藻の酢漬け製品をめぐる指摘
今回のケースは、デンマークの会社Agustson A/Sです。FDAは2024年3月4日から5日にかけて、同社の酸性化食品工場(Vejle所在)を査察しました。その結果、「Emergency Permit Control(21 CFR Part 108)」と「酸性化食品規則(21 CFR Part 114)」への重大な違反が見つかりました。対象となったのは、海藻を使った酢漬け加工品「Seaweed Cavi-art Black」です。同社はこの製品のScheduled Processを2023年7月に提出していましたが、それ以降も米国向けに約3回輸出しており、少なくとも1ロットは提出済みの製法どおりに作られていませんでした。さらに、米国に輸出されたある1ロットは2022年8月に製造されたもので、これはScheduled Processを提出する2023年7月よりも前です。この製造記録には、pHも冷却保管の工程条件も記録されていませんでした。加えて、容器のふたに記載されたコードは賞味期限と再包装日を示すだけで、どの工場で作られた製品かを識別できるものではなく、21 CFR 114.80(b)が求める表示にもなっていませんでした。会社側は2024年3月25日付で回答しましたが、FDAはその内容を不十分と判断しています。
何が指摘されたか
ポイントは大きく2つです。1つ目は、Scheduled Processを提出する前に作られた製品を、そのまま米国に輸出してしまったこと。提出前の製法は、FDAが安全性を確認できていない状態です。2つ目は、実際の製造でpHや冷却保管といった、安全を守るための管理値をきちんと記録していなかったことです。せっかく製法を届け出ていても、その通りに作られているかを確認できなければ意味がありません。ラベルの識別コードが不十分だった点も合わせて、FDAは「この会社が安全に製造できているか確認できない」と判断し、警告書を出しました。今後は、輸入時に現物検査なしで留め置かれる可能性にも触れられています。
日本企業が注意すべきこと
昆布やわかめの酢漬け・佃煮、味噌、醤油、漬物、レトルト食品、缶詰、密封豆腐なども、常温で密封保存するタイプであれば「酸性化食品」や「LACF」に該当する可能性があります。輸出前に、次の点を確認しておくことが大切です。
- 自社の製品が酸性化食品・LACFに当てはまるかどうかの判断
- 製造工場のFCE登録が済んでいるか
- 商品ごと・容器サイズごとにScheduled Processを提出しているか
- 実際の製造でpH・加熱・冷却などの管理値を記録し、提出済みの製法どおりに作れているか
- 容器に、製造工場を識別できるコードを正しく表示しているか
輸出前の一手間が、信頼を守る
今回の実例は、製法を届け出ること自体は行っていた会社でも、その後の運用(記録や表示)が伴わないとFDAから警告を受けてしまうことを示しています。ルールを知らなかったでは済まされないのが、この分野の難しいところです。
ワールドシフトでは、FCE登録やScheduled Processの提出、pH・加熱条件などの製法整理といった実務対応もサポートしています。「うちの佃煮はLACFに該当するのか」「そもそも酸性化食品にあたるのか」といった判断も含めて、米国輸出前のFDA対応をお任せいただけます。
※輸出前の確認だけでなく、取得後の更新・表示の維持・査察対応まで、取った後も一緒に点検します。対応できる範囲は品目・工程により異なり、米国代理人・FSVP等は連携先を通じてご案内します。
出典・参考:FDA原文で確認する(fda.gov)↗
自社の商品で同じ指摘を受けないために——