すり身・大豆スナック(レトルト)
酸性化食品・低酸性缶詰(LACF)
⚠ FDAが指摘した実例すり身と大豆スナック、「決めた条件で殺菌したはず」が崩れた話
レトルトパックのすり身製品や大豆スナックは、常温のまま棚に置けて便利です。ですがその裏側では、ボツリヌス菌を防ぐための厳しいルールが働いています。今回は、そのルールが守られていなかった中国メーカーの実例を通じて、日本の輸出者が押さえておきたいポイントを見ていきます。
はじめに——LACF・低酸性缶詰とは
レトルトパウチや缶など、密封した容器に入れて常温で流通させる食品は「低酸性缶詰食品(LACF)」と呼ばれ、21 CFR 113という規則で細かく管理されています。密封した容器の中は酸素が少なく、ボツリヌス菌が増えやすい環境になりやすいためです。そのため製造施設は、あらかじめFDAに施設登録(FCE)を行い、製品ごとの加熱殺菌条件(Scheduled Process)を事前に届け出る必要があります(21 CFR 108も関連します)。これを怠ったまま製造・輸出すると、Warning Letterや輸入差し止めの対象になります。日本では、レトルトの惣菜や煮物、魚肉のすり身加工品、大豆を使ったスナックなどが、まさにこのLACFの対象になり得ます。
実際の例——すり身・大豆スナックの殺菌条件がずれていた
FDAは2023年11月20日から23日にかけて、中国・湖南省岳陽市華容県にあるHunan Gagazui Food Co., Ltd.の低酸性缶詰(LACF)製造施設を査察しました。その結果を受けて、2024年2月9日付でWarning Letterが発行されています。指摘の中心になったのは、すり身と大豆を使ったスナック製品(surimi soybean snack)の加熱殺菌に関するものでした。
何が指摘されたか
指摘された内容は、次のようなものでした。2023年に米国向けに出荷されたすり身大豆スナックは、すべてFDAへ事前に届け出ていた加熱殺菌条件(Scheduled Process)とは異なる時間・温度で処理されていました。製品の初発温度(加熱前の温度)も測定されていませんでした。さらに、加圧加熱殺菌に使うレトルトには正確な温度記録装置が備わっておらず、すり身大豆の加工ラインにある横型の静止式水殺菌釜2基は、どちらも温度記録計が設置されていませんでした(21 CFR 113.40(b)(2))。加えて、届け出た殺菌条件を裏付けるはずの熱分布試験の内容も不十分で、殺菌工程を任される工場長・品質管理副責任者・設備保全責任者が、FDA承認の講習を受けていないことも分かりました(21 CFR 113.10)。製造記録にも、初発温度や処理データなど法律で定められた記載事項が欠けていました(21 CFR 113.100(a))。どれも単独では小さく見えても、「決めた条件通りに殺菌されている」という保証を根本から崩してしまう問題です。
日本企業が注意すべきこと
レトルトの惣菜や練り製品を米国向けに輸出する場合、この事例は他人事ではありません。次のような点を、あらためて確認しておくことが大切です。
- 一度届け出たScheduled Process(加熱殺菌条件)通りに、毎回処理できているか
- レトルト設備に温度記録装置が備わっており、正しく作動しているか
- 殺菌工程の責任者が、FDA承認の講習(Better Process Control School=缶詰の加熱殺菌講習会など)を受けているか
- 製造記録に、初発温度・処理時間・温度・担当者などの必要事項が漏れなく残されているか
その後どうなったか
FDAは2024年4月11日付で、この会社が是正措置を行ったことを確認したフォローアップを公表しています。つまり、きちんと対応すれば輸出を続ける道は残されているということです。ただし、それまでの間は出荷停止や輸入差し止めといった実害を伴います。
ワールドシフトでは、FCE登録やScheduled Processの提出、温度記録・製造記録の整備状況の確認など、米国輸出前のLACF対応もサポートしています。「うちのレトルト商品はLACFに当たるのか」「Scheduled Processをどこに出せばいいのか分からない」といった判断も含めて、米国輸出前のFDA対応をお任せいただけます。
※輸出前の確認だけでなく、取得後の更新・表示の維持・査察対応まで、取った後も一緒に点検します。対応できる範囲は品目・工程により異なり、米国代理人・FSVP等は連携先を通じてご案内します。
出典・参考:FDA原文で確認する(fda.gov)↗
自社の商品で同じ指摘を受けないために——