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森永、米国の餅アイス首位を約216億円で買収 棚は冷凍ケース

米国で「mochi」といえば餅アイス。常温の大福・もち米粉も通販に並ぶ

米国で広がる「mochi」の菓子(画像はイメージ)

森永製菓は2026年3月6日、米国の餅アイス(mochi ice cream)のブランド「My/Mochi」を持つMyMo Holdco, Inc.の株式を取得すると発表した。取得価額は概算合計1億3,500万ドル(約216億円)で、4月2日に取得の完了を開示した。My/Mochiは、森永によると米国のモチアイス市場でシェア1位だ。

米国の小売で「mochi」の名で並ぶ主力商品は、和菓子ではなく冷凍ケースの餅アイスだ。アイスを餅で包んだ一口菓子で、個包装で売られる。

一方で、常温の大福やもち米粉も米国の通販に並ぶ。日本から米国への農林水産物・食品の輸出は、2025年に2,762億円と前年より13.7%増えた。

米国で「mochi」といえば冷凍の餅アイス

森永製菓のリリースは、My/Mochiの強みとして「全米主要小売への配荷」を挙げる。米国のモチアイス市場でのシェアは1位だという。根拠は、Circana(旧IRI)MULO+Convの、2025年12月25日時点の直近52週のデータだ。

Targetの通販ページでは、My/Mochiの6個入が5.69ドルで売られている。1個あたり約0.95ドル、約152円になる。円は1ドル≒160円で換算した。

ルーツは日本にある。森永の日本語リリース(2026年3月6日)は、My/Mochi社を、前身である老舗和菓子店MIKAWAYA(ミカワヤ)の和菓子づくりを受け継いだ会社と説明する。会社の創業・設立は1910年だ。本社はカリフォルニア州ヴァーノンにあり、代表者はCraig Berger氏だ。

米国の「mochi」と日本の「餅」
場所指すもの
米国の小売米国の小売で「mochi」といえば、冷凍ケースにある一口サイズ・個包装の餅アイスを指すことが多い。
日本日本で「餅」といえば、常温の切り餅・大福・最中などの和菓子を指す。

価格はTargetの商品ページ(My/Mochi 6個入)の表示で、店舗・時期により変わる。

米国のノベルティアイス市場は86億ドル

森永製菓の英文リリース(2026年3月9日)によると、米国のノベルティアイス市場は2025年に推定86億ドル(約1兆3,760億円)だった。ノベルティアイスは、1人分ずつ個包装されたアイスの売り場区分だ。数字はCircana MULO+Convの2025年第52週のデータによる。

My/Mochiの店頭販売額は、2026年1月25日までの52週で8,000万ドル(約128億円)だった。SPINS MULOの集計だ。8,000万ドルを86億ドルで割ると約1%(0.93%)で、首位のブランドでもアイス売り場全体ではまだ小さい(編集部の試算)。ただ、2つの数字は集計した会社も対象も違う。

森永のリリースは、米国のアイス市場の変化として「個食ノベルティやクリーンラベル志向、プレミアム化の進展」を挙げる。英文リリースは、My/Mochiの商品を「20種類を超えるフレーバー」と説明する。乳製品を使わない(dairy-free)選択肢もあるという。

市場調査会社のGrowth Market Reportsは、冷凍モチアイスの市場を次のように見込む。法定の開示や政府の統計とは性質が違う、調査会社の推計だ。

冷凍モチアイスの市場推計(Growth Market Reports)
範囲推計
世界世界の市場は、2024年に13億4,000万ドル(約2,144億円)で、2033年に26億ドル(約4,160億円)になり、年平均7.6%伸びると見込む。
北米北米の市場は、2024年に約4億200万ドル(約643億円)で世界の30%を占め、年平均8.2%伸びると見込む。

同じレポートは、主な企業として20社を挙げた。My/Mochi、Bubbies、Little Moons、Mochidoki、Trader Joe's、Häagen-Dazs、Ben & Jerry'sなどだ。日本勢では、Maeda-en、Mikawaya、井村屋グループのほか、ロッテの雪見だいふく、ニッセイの宇治金時の名前もある。一覧は編集部が一部を抜き出した。

取得価額は概算1億3,500万ドル

森永製菓は2026年3月6日、MyMo Holdco, Inc.の株式の取得を適時開示した。取得価額は、普通株式が1億3,000万ドル、アドバイザリー費用等が概算500万ドルだ。合計は概算1億3,500万ドル(約216億円)になる。

株式譲渡の実行日は、2026年4月1日(日本時間)と開示された。森永は2026年4月2日、「(開示事項の経過)MyMo Holdco, Inc.の株式取得完了に関するお知らせ」を適時開示した。取得は完了している。

同じ3月6日の開示には、対象会社の2025年6月期の数字が載っている。売上高は6,000万ドルで、営業損益は1,300万ドルの損失だった。損失の理由は開示に書かれていない。

MyMo Holdcoの2025年6月期の数字(森永の適時開示)
項目中身
売上高2025年6月期の売上高は、6,000万ドル(約96億円)だった。
営業損益2025年6月期の営業損益は、1,300万ドル(約20億8,000万円)の損失だった。
純資産2025年6月期の純資産は、2,600万ドル(約41億6,000万円)だった。
総資産2025年6月期の総資産は、1億2,600万ドル(約201億6,000万円)だった。
調整後連結EBITDA2025年6月期の調整後連結EBITDAは、1,000万ドル(約16億円)で、監査を受けていない数値だ。

調整後連結EBITDAについて、開示は一時費用等を経営陣が調整したもので、監査を受けた数値ではないと注記している。取得価額の概算合計は、この1,000万ドルの約13.5倍にあたる(編集部の試算)。

円は1ドル≒160円で編集部が換算した目安。

「8,000万ドル」と「6,000万ドル」は別の数字

My/Mochiの規模として引かれる8,000万ドルと、開示にある6,000万ドルは、測っているものが違う。前者は店頭でいくら売れたか、後者はメーカーとしていくら売り上げたかだ。混ぜると、店頭価格の上乗せ分が会社の売上に見え、規模を大きく見誤る。

My/Mochiの2つの数字
数字何を測ったか
店頭販売額SPINS MULOの集計では、2026年1月25日までの52週に、小売の店頭で8,000万ドル(約128億円)が売れた。
会社の売上高森永の適時開示では、対象会社の2025年6月期の売上高は6,000万ドル(約96億円)だった。

本記事の旧版は、題名で「年商約128億円」と書いていた。8,000万ドルは店頭販売額で、会社の年商ではないため、2026年9月17日に直した。

井村屋、米国向け日本産アイスでシェア8割

日本のアイスを米国へ送った前例が、農林水産省の資料にある。「令和2年度 輸出に取り組む優良事業者表彰」で紹介された、三重県津市の井村屋グループだ。

資料は見出しで「米国向け日本産アイスのシェア8割を獲得」と書く。本文では、アメリカ向け専用商品の開発によって、日本からのアメリカ輸出シェアの8割を得ているとする。資料によると、同社が取り組んだのは次の3点だ。

  • 輸出専用のレシピ。国内とは違う輸出用のレシピを開発し、米国FDAの基準を満たした。
  • 包材まで輸出専用に。原料だけでなく、パッケージに使う糊やフィルムの構造まで輸出専用に開発した。
  • 時間をかけた。2013年に海外事業戦略部を立ち上げた。2年のリサーチを経て、2015年から直接取引を始めた。

同じ資料は、国内のアイスメーカーの中で、同社の国内シェア率は3%、輸出シェア率は10%とも書いている。資料は2020年度のもので、掲載した時点の内容だ。

日本から米国への食品輸出は2,762億円

農林水産省は2026年2月3日、2025年の農林水産物・食品の輸出実績を公表した。輸出先の第1位は米国で、2,762億円と前年より13.7%増えた。財務省の貿易統計をもとにした、2025年1〜12月の値だ。

品目別では、菓子(米菓を除く)が373億8,400万円で、前年より8.8%増えた。農水省は増えた理由を、米国・アジア向けでSNSを通じた日本産品の人気が高まったことや、新しい商流の開拓で需要が高まったことなどと説明している。

同じお菓子でも、米菓(あられ・せんべい)は59億5,900万円で、前年より9.3%減った。

常温の棚:もち米粉・大福・あんこ

ここまでの数字は、冷凍の餅アイスのものだ。常温の側の棚を、編集部が2026年9月17日に米国の小売サイトで確かめた。

  • もち米粉。Targetでは、Koda Farmsのもち米粉(Mochiko Sweet Rice Flour)16オンスが3.89ドル、約622円で売られている。1オンスあたりは0.24ドルだ。餅アイスの6個入と同じ小売チェーンに、原料の棚がある。
  • 大福。常温の大福(daifuku)は、Walmart.comとAmazon.comで扱われている。主な大きさは7.4オンス入りで、210gにあたる。例は、Royal Familyの「Japanese Rice Cake Mochi Daifuku(Red Bean)」7.4オンスだ。7.5オンスのMy/Mochi 6個入のような冷凍の餅アイスとは、別の商品の区分になる。
  • あんこ。Targetの通販で「red bean paste anko」を検索すると216件が出た。ただ、確かめた範囲では、あんこに当たる商品は見当たらなかった。1社の通販の在庫だけを見たもので、実店舗や他のチェーンの在庫を否定するものではない。

米国の小売サイトで使われている英語の表記は次のとおりだ。もち米粉はmochiko、大福・餅はdaifukuまたはmochiと書かれる。あんはsweet red bean pasteまたはanko、餅アイスはmochi ice creamだ。

価格はTarget・Walmart.com・Amazon.comの商品ページの表示で、店舗・時期により変わる。円は1ドル≒160円で換算した。

大福・もち米粉を米国へ送る手続き

餅アイスは冷凍食品で、冷凍倉庫と、冷凍を切らさない物流(コールドチェーン)が要る。大福・最中・餅菓子・あん・もち米粉のような常温品は、賞味期限を輸出向けに設計できていれば、通常の食品の手続きで送れる。主な手続きは次のとおりだ。

  • 関税の分類(HTSコード)。菓子や調製食料品は、1905や2106などが候補になる。もち米粉は穀粉として分類する。番号と関税率は品目ごとに変わるため、原材料の構成と加工の度合いから個別に決める。
  • FDA食品施設登録。製造・加工する施設の登録で、2年ごとに更新する。
  • 事前通知(Prior Notice)。食品が米国に着く前に、FDAへ通知する。
  • 米国の輸入者の責任。FSVPの義務は米国の輸入者側にある。ただ、日本のメーカーにも書類の提供とDUNS番号が要る。
  • 賞味期限。輸送・通関・Amazonの受領までに数週間かかる。国内向けの品をそのまま送るのではなく、輸出向けに賞味期限を設計した常温品かが問われる。
  • 英語の表示。原材料・正味量・製造者に加え、米国の重点アレルゲン9品目を表示する。9品目は、乳・卵・魚・甲殻類・木の実・落花生・小麦・大豆・ごまだ。ごまは2023年から義務の対象で、あんや和菓子では落としやすい。健康への効能はうたわない。
  • 包材。糊やフィルムまで含めて、食品に触れる素材として問題がないかを確かめる。
  • FBAへの納品。常温品は、賞味期限の表示や梱包などAmazonの受け入れ要件を満たせば、FBAで在庫を米国に置ける。
解説

「mochi人気」の入口は常温の和スイーツ

米国で「mochi」が棚を広げているのは数字で確かめられる。ただ、日本の作り手が冷凍の餅アイスでそのまま棚に入るのは難しい。冷凍倉庫とコールドチェーンが要るからだ。当社は、入口は冷凍ではなく、常温で送れる和スイーツと製菓材料のほうだとみている。

森永が約216億円で買ったのは、いまの利益ではなく、ブランドと全米主要小売の棚、米国内の自社製造体制だと当社は読む。My/Mochiの営業損益は赤字で、取得価額は調整後EBITDAの約13.5倍だった。裏を返せば、重い設備を自ら持たずに同じ「mochi人気」に乗る道が、日本の作り手には残っている。

井村屋の例が示すのは順番だ。国内の商品をそのまま船に載せるのではなく、送るための商品に作り直す。米国向けの日本産アイスで8割を取った井村屋でさえ、レシピと包材を作り直した。だからこそ、設備の要らない常温から小さく始める価値がある。

最初の3手は、商品を作らずにできる。まず、自社の常温の商品を1品選び、賞味期限と包材を確かめる。次に、HTSコードの候補を出す。最後に、FDA施設登録が要るかを確かめる。商談では、最初に「冷凍の餅アイスの話か、常温の和菓子の話か」をそろえたい。ここが決まらないと、賞味期限・包装・温度帯・棚割りの話がすべてずれる。

商品名の英語は、米国の小売サイトで実際に使われている表記に合わせたい。mochiko・daifuku・ankoなどの表記にそろえると、棚の商品と並べて比べやすい。

(ワールドシフト編集部)

キーワード解説
  • 餅アイス(mochi ice cream):アイスを餅で包んだ一口菓子。米国の小売では、冷凍ケースに個包装で並ぶ。
  • My/Mochi:米国の餅アイスのブランド。森永製菓によると、米国のモチアイス市場でシェア1位。前身は老舗和菓子店MIKAWAYA(ミカワヤ)で、2026年に森永製菓が取得した。
  • ノベルティアイス:1人分ずつ個包装されたアイス(バー・サンド・一口菓子など)の売り場区分。米国では2025年に推定86億ドル。
  • SPINS MULO/Circana MULO+Conv:米国の小売の販売データ。SPINS MULOは店頭でいくら売れたかを集計したもの。CircanaのMULOは大手量販とドラッグストア等、Convはコンビニを指す。
  • FDA食品施設登録:食品を米国へ送る施設に求められる登録。2年ごとに更新する。
  • 事前通知(Prior Notice):食品が米国に着く前に、FDAへ行う通知。怠ると留め置きの原因になる。
Q&A:よくある質問
米国で「mochi」といえば、アイスのことですか?
米国の小売の棚では、ほぼそう考えて差し支えありません。スーパーで「mochi」の名で並ぶ主力商品は、アイスを餅で包んだ一口菓子の餅アイス(mochi ice cream)です。ただ、言葉としての「mochi」は餅そのものも指すため、商談では「冷凍の餅アイスか、常温の和菓子か」を最初に確かめてください。
米国で餅アイスのMy/Mochiはいくらで売られていますか?
Targetの通販ページでは、My/Mochiの6個入が5.69ドルです。1個あたり約0.95ドル、約152円になります(1ドル≒160円で換算)。価格は店舗・時期により変わります。
森永製菓によるMy/Mochiの買収額はいくらですか?
概算合計1億3,500万ドル、約216億円です。森永製菓の適時開示(2026年3月6日)によると、MyMo Holdco, Inc.の普通株式が1億3,000万ドル、アドバイザリー費用等が概算500万ドルです。株式譲渡の実行日は2026年4月1日(日本時間)と開示され、2026年4月2日に株式取得の完了が適時開示されました。
My/Mochiの会社は、2025年6月期に利益を出していましたか?
営業損益は1,300万ドルの損失でした。森永製菓の適時開示によると、2025年6月期の売上高は6,000万ドル、純資産は2,600万ドル、調整後連結EBITDAは1,000万ドルです。調整後EBITDAは一時費用等を経営陣が調整したもので、監査を受けていない数値と注記されています。損失の理由は開示されていません。
My/Mochiの売上の「8,000万ドル」と「6,000万ドル」は何が違いますか?
測っているものが違います。8,000万ドルはSPINS MULOの店頭販売額で、2026年1月25日までの52週に小売の店頭で売れた額です。6,000万ドルは森永の適時開示にある対象会社の2025年6月期の売上高で、メーカーとしての売上です。混ぜると規模を大きく見誤ります。
日本の大福や最中、もち米粉は米国に輸出できますか?
常温の大福・最中・餅菓子や、あん・もち米粉は、賞味期限を輸出向けに設計できていれば、通常の食品の手続きで送れます。必要なのは、関税の分類(HTSコード)、FDA食品施設登録(2年ごとに更新)、到着前の事前通知(Prior Notice)、英語の表示、包材の確認です。英語の表示には、原材料・正味量・製造者と、米国の重点アレルゲン9品目が要ります。
冷凍の餅アイスを、個人で米国へ輸出できますか?
本体は冷凍食品で、冷凍倉庫とコールドチェーンが要るため、個人にはハードルが高い領域です。まずは常温の和スイーツ(大福・最中・餅菓子)や製菓材料(あん・もち米粉)で始めるのが現実的です。
2025年の日本から米国への食品輸出はいくらでしたか?
農林水産物・食品で2,762億円で、前年より13.7%増えました。米国は輸出先の第1位です。農林水産省が2026年2月3日に公表した2025年の輸出実績によります。
出典金額は1ドル≒160円で円換算(併記)。市場全体はCircana MULO+Conv、店頭販売額はSPINS MULO、会社の売上高・取得価額・調整後EBITDAは森永製菓の適時開示、輸出額は財務省「貿易統計」を基にした農林水産省の集計によります。冷凍モチアイスの市場規模は市場調査会社(Growth Market Reports)の推計で、法定開示や政府統計とは性質が異なります。井村屋の事例は農林水産省の令和2年度(2020年度)資料で、掲載時点の内容です。小売価格はTarget等の商品ページで2026年9月17日に確認した値です。HTS分類・関税率・FDAの手続きは個々の商品の原材料や加工によって異なり、最終的な判断は米国の当局が行います。「解説」は当社(WorldShift)の意見で、FDAの判断、通関の可否、売上・利益を保証するものではありません。

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