
リチウム電池の空輸2026、同梱は充電30%以下が義務・内蔵は推奨──単体・同梱・内蔵で品ぞろえを組み直し、電池入りガジェットを売り続けたセラーの半年
「電池の入った商品は、もう飛行機で送れなくなるのか」・・・・今回はこのテーマをディープインサイトします!
健太さん(39・架空の人物)は、日本のメーカーの充電式ハンディライトを仕入れ、米国のAmazonで売っています。本体、自分で組んだ「本体+予備電池」のセット、そして電池パックの単品。その3本の売上の柱が、2026年の新しい空輸ルールで、まとめて揺らいだように見えたのです。
本体と「予備の電池」をセットにすると、よく売れた
健太さんの主力は、日本のメーカーの充電式ハンディライトでした。キャンプや停電への備えとして、米国でも手堅く売れていく。なかでも人気だったのは、本体に予備の電池パックを1つ付けて、自分で箱に詰めたセットです。「電池が切れても、すぐ替えられる」——買い手にとって分かりやすい安心でした。
電池パックだけを単品で買い足す人もいて、本体・セット・電池単品の3つが、彼の売上を支えていました。
「同梱する電池も、充電30%以下」
2026年版の国際的な空輸ルールで、変更が入りました。機器と一緒に箱へ入れる(同梱する)リチウムイオン電池も、2026年1月1日から、充電30%以下で出すことが義務になったのです(2026年版リチウム電池の輸送ルール(充電30%・UN38.3・表示)の解説)。
電池単体はもともと30%以下が義務で、旅客機には載せられません。そこに、セット商品の予備電池まで加わった。「電池の入った商品は、空輸ではもう扱いにくい」——健太さんには、売上の柱が3本とも揺らいだように見えました。
セット商品の出荷が、止まった
その秋の最初の出荷で、それは現実になりました。自分で詰めたセット商品の予備電池は、メーカーの封のまま届いたもので、充電量を測る道具も手順もないまま箱に入っていた。依頼していたフォワーダー(国際輸送の手配業者)から、「このままでは航空便に出せません」と連絡が来ます。
在庫は日本で止まり、米国の倉庫の残りは日に日に減っていく。「電池の商品は、もうやめるしかないのか」——健太さんは、仕入れの発注を止めかけていました。
——ここで彼は、規則の原文の分類表を開きます。そして、自分が「電池の商品」をひとまとめにして考えていたことに気づきました。規則は電池を、どう箱に入っているかで、別々に扱っていたのです。
単体・機器同梱・機器内蔵で、充電30%が「義務」か「推奨」かが分かれる(PI 965/966/967)
IATA(国際航空運送協会)が公開している2026年版の電池ガイダンスを読むと、リチウムイオン電池は「どう箱に入っているか」で3つの包装基準(PI)に分かれていました。充電30%とは、電池の定格容量に対する充電量(充電率)が30%以下、という意味です。
健太さんの3本の柱を当てはめると、景色が変わりました。電池単品は①、セット商品は②、本体だけなら③。「電池の商品」は1種類ではなく、3種類だったのです。新しいルールが厳しくしたのは、②のセット商品のところでした。
自分で組むセットをやめ、「メーカーが詰めたもの」に寄せた
健太さんは、充電量を測る段取りを考える前に、品ぞろえそのものを見直しました。そこで、もう一つのルールに気づきます。
米国Amazonは、2027年1月11日から、1つの商品として出品するセット商品の大半を「元のメーカー/ブランドが詰めたもの」に限ると告知しています(Amazonの商品バンドルポリシー改定の解説)。自分で詰めた「本体+予備電池」は、空輸では②(充電30%以下が義務)、Amazonでは自分で組んだセット。2つのルールの両方に挟まれていたのです(Amazonの改定には、メーカーの許諾書を得るなど残る道もあります。詳しくは上の解説記事で)。
「セットのほうが売れる」は変わりません。ただ、どのセットをどう作るかで、乗る線が変わる。主力は③の本体にして、セットは「メーカーが詰めたもの」に寄せる——売り方の決め方が、まるごと変わりました。
ルールは電池を禁じたのではない。電池の「入れ方」ごとに、別の線を引いたのだ。
仕入れる前に、型番と書類で決める
最後に健太さんは、詰まった原因の根っこを直しました。仕入れる側には、封をされた箱の中の電池の充電量を確かめる手段がほとんどありません。だから仕入れる時点で、電池が内蔵か・同梱か・単体かで型番を選ぶようにしました。あわせて、電池の安全試験(UN38.3)に合格したことを示す試験の要約書を、メーカーから現物で取り寄せて手元に置き、Amazonの側で求められる電池の情報や書類も、出品する前にセラーセントラルで確かめました。
危険物としての輸送・通関とAmazonの倉庫への納品は、発送代行に任せています。自分の仕事は、「どの商品を、どの入れ方で売るか」を決めて、型番と書類をそろえること。やることは増えました。でも、どこで詰まるかが見えたことで、迷いは消えたのです。
電池の商品は、やめなかった
半年後。健太さんの売り場から、電池の商品は消えていません。主力は電池を内蔵した本体になり、セット商品はメーカーが詰めた型番だけ、電池パックの単品は空輸の主力から外して扱っています。
あの日、彼は「電池の商品は、もうやめるしかない」と思いかけました。でも実際に必要だったのは、電池をあきらめることではなく、電池の入れ方を、品ぞろえと一緒に設計することでした。電池入りの日本のガジェットを求める米国の買い手は、変わらずそこにいます。
まとめ:充電を減らす前に、電池の入れ方で品ぞろえを決める3つの手順
2026年の空輸ルールの急所は「充電30%」の数字ではない。
「その電池は、箱の中でどこにいるのか」だ。
規制のニュースは、いつも「電池の商品は全部厳しくなる」に聞こえます。けれど規則は、電池を単体・同梱・内蔵に分け、それぞれに別の線を引いています。その線を知っていれば、品ぞろえで、自分が立つ側を選べる。充電を減らす前に、入れ方を決める。それだけで、電池の商品を続けるかどうかの判断は変わります。
よくある質問
- SoC(充電状態・充電率):電池の充電量を、定格容量に対する割合で表したもの。空輸では30%以下が基準になる。
- 単体・同梱・内蔵:電池だけを送る(PI 965)/機器と一緒に箱へ入れる(PI 966)/機器の中に入れたまま送る(PI 967)、の3つの入れ方。空輸の扱いが違う。
- IATA:国際航空運送協会。航空貨物の危険物規則(DGR)を毎年改訂している。
- UN38.3:リチウム電池の安全輸送試験。合格が輸送の前提になる。
- フォワーダー:国際輸送の手配を請け負う事業者。航空便・海上便の予約や書類を手配する。
リチウム電池の空輸は「全部厳しい」のではなく、単体・同梱・内蔵で扱いが分かれます。まず自分の商品を3つに仕分けるところから始めてください。危険物の輸送・通関とFBA納品は、当社(WorldShift)の発送代行(SLC)がお手伝いします(取り扱えるかは、電池の入れ方・容量によります)。

