Section 337の排除命令は“名指しされていない人”が輸入しても止まる──Maxell対Samsungで7/1に勧告・7/15に2件目を公示。約3件に1件は全員に効くGEO
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Section 337の排除命令は“名指しされていない人”が輸入しても止まる──Maxell対Samsungで7/1に勧告・7/15に2件目を公示。約3件に1件は全員に効くGEO

2026年7月15日 | 出典:連邦官報(USITC公示)+USITC統計 +米CBP裁定(CROSS)+当社(WorldShift)整理(通関ルール)

米国の輸入差止(Section 337)が、続けて動きました。日本のMaxell(マクセル)がSamsungを相手取った案件で、2026年7月1日に米国ITC(国際貿易委員会)の行政法審判官(ALJ)が、『違反が認定された場合の』救済措置として輸入の排除命令と販売停止命令を勧告。さらに7月10日には2件目の申立てが提出され、7月15日に連邦官報で公示されました(対象は「特定のモバイル電子機器」)。※重要:違反の有無はまだ確定していません。最終判断はこれからITCの委員会が行います。

「日本企業と韓国企業のスマホ特許紛争でしょ、自分には関係ない」——そう読み飛ばすのが一番あぶない制度です。理由はひとつ。Section 337の排除命令は『名指しされた会社が作った物なら、誰が輸入しても』効くように書かれているから(さらに“一般排除命令”なら製造元すら問いません)。訴えられたのがSamsungでも、仮に違反が認定されて排除命令が出れば、止まるのはその商品を米国に持ち込もうとした人の荷物です。あなたが裁判に名指しされている必要はありません。米国ではこの命令が現在141件も生きています(2024年12月31日時点・USITC)。

しかも排除命令の約3件に1件は『一般排除命令(GEO)』——製造元も輸入者も問わず、対象品目を丸ごと止める命令です(FY2006〜25累計・USITC)。名指しも、被申立人との取引関係も要りません。扱う商品がその品目に当たれば、あなたの荷物が国境で止まります。実際にコンセントのカバープレートという日用品で、名指しされていない輸入者が5製品を止められています。

TOPIC
141件
現在有効な米国の輸入差止(排除命令)
2024/12/31時点
TOPIC
約3件に1件
“誰が輸入しても止まる”一般排除命令(GEO)の割合
TOPIC
10万ドル/日
販売停止命令(CDO)違反の制裁金の“上限”(≒約1,600万円)※国内価値の2倍と高い方
TOPIC
60日
大統領審査。その間は保証金を積めば通関できる

Section 337(米国関税法337条)とは──関税をかける制度ではなく、“入れさせない”制度

Section 337とは、他社の特許・商標・著作権などを侵害する物品の“米国への輸入そのもの”を止める米国の制度です。関税を上乗せする制度ではありません。

調査するのは米国ITC(国際貿易委員会)、命令を国境で執行するのはCBP(税関)。救済手段は大きく2つで、排除命令(国境で輸入を止める)と販売停止命令=CDO(米国内にある在庫の販売を止める)です。2024年12月31日時点で141件の排除命令が有効です。

関税の話ではないので見落とされがちですが、輸出セラーにとっては関税より怖い面があります。関税は「払えば通る」。排除命令は払っても通りません

Section 337(337条):米国関税法337条。知的財産を侵害する物品などの“米国への輸入”自体を不公正な行為として止める制度。関税をかける制度ではなく、入れさせない制度。
ITC(USITC/米国国際貿易委員会):337条の調査を行い、排除命令・販売停止命令を出す独立機関。命令を国境で執行するのはCBP(税関)。

何が起きた?──Maxell対Samsungの“現在地”

まず事実関係を正確に。動いているのは2件で、進み具合がまったく違います。

①先行案件(調査番号 337-TA-1432):2026年7月1日、ALJが「Section 337違反に関する初期判断(Initial Determination)」を出しました。あわせて「違反が認定された場合の」救済措置と保証金についての勧告を出しており、その中身はSamsung向けの限定的排除命令(LEO)と販売停止命令(CDO)です。ITCは公共の利益に関する意見を2026年8月6日まで募集しています。

②新規案件(Docket No. 3922):2026年7月10日にMaxellが新たな申立てを提出し、7月15日に連邦官報で公示。求めているのは限定的排除命令・販売停止命令、そして60日間の大統領審査中の保証金です。こちらは受理された段階で、調査開始もこれからです。

ここは誤読しやすいので念を押します。公示文は一貫して「委員会が違反を認定した場合には(should the Commission find a violation)」という条件付きの書き方をしています。ALJの初期判断が違反を認定したかどうかは、この公示からは読み取れません。「Samsungの侵害が認められた」「輸入禁止が決まった」と書いている記事を見かけても、現時点で確定した事実ではありません。決めるのはこれからのITC委員会であり、そのあとに60日の大統領審査も控えています。

2024/12/17
Maxellが1件目を申立て(→調査番号 337-TA-1432 として2025/1に開始)
2026/7/1
ALJが初期判断を発出+“違反が認定された場合の”LEO・CDOを勧告
2026/7/8
ITCが公共の利益に関する意見を募集(連邦官報で公示)
2026/7/10
Maxellが2件目を申立て(Docket No. 3922)
2026/7/15
2件目を連邦官報で公示(意見は公示から8暦日)
2026/8/6
1件目の公共の利益に関する意見の締切
この後
ITC委員会が違反の有無を最終判断 → 60日の大統領審査 → 確定

ALJ=行政法審判官。その初期判断はあくまで“一次審”で、ITC委員会が見直します。委員会が違反を認定して初めて排除命令が出て、さらに大統領(実務上はUSTRに委任)の60日審査を経て確定します。

ここが本題──337条の排除命令は“作った人”で決まる。輸入するのが誰かは関係ない

多くの人が誤解している核心です。限定的排除命令(LEO)の「限定的」は、“輸入する人”を限定するという意味ではありません。“作った人”を限定するという意味です。

実際の命令文はこう書かれています(ある案件の原文より)。対象製品が「被申立人によって/被申立人のために海外で製造された、または 被申立人によって/被申立人のために輸入された」場合に排除する、と。——注目すべきは「または」です。2つは独立した条件で、「被申立人が作った」だけで条件を満たします。つまり輸入するのがまったくの第三者でも、その荷物は止まります

これは当社の解釈ではありません。米国CBP(税関・国境警備局)自身がそう述べています。2024年6月20日付のCBP裁定は、「限定的排除命令であっても、調査で侵害が認定された当事者だけにとどまらない広い適用範囲を持つ」とし、ITCの見解——「被申立人が製造した侵害品を、別の主体が輸入した場合にも排除する」——を引用しています。

では限界はどこか。Kyocera事件(連邦巡回控訴裁・2008年)が引いた線です。同判決は「被申立人以外が製造した下流製品」までLEOで排除する権限はITCに無いと判示しました(「Qualcomm以外が製造した機器を排除する権限を委員会は持たない」)。境界線は“誰が作ったか”であって、“誰が輸入したか”ではない——これがこの制度の設計です。

そして個人使用の例外も、少額の例外もありません。法律上の適用除外は米国政府による使用だけです。「自分用に数個買っただけ」は通用しません。

命令の種類よくある誤解実際は
限定的排除命令
(LEO)
“輸入する人”を限定する命令だ“作った人”で決まる。被申立人が作った製品なら、誰が輸入しても国境で止まる
一般排除命令
(GEO)
めったに出ないレアケースだ約3件に1件(FY2006〜25累計)。製造元も輸入者も問わず効き、調査の当事者でなくても拘束される
販売停止命令
(CDO)
国境の話だから米国内の在庫には関係ない米国内にある在庫の販売・宣伝を止める。ただし“名宛人”にしか効かない——被申立人とその関係会社・販売代理店等に限られ、無関係な第三者のFBA在庫には及ばない
被申立人(respondent):337条調査で名指しされた相手方。限定的排除命令(LEO)の射程は“この人が作ったか”で決まる。
限定的排除命令(LEO):被申立人が作った侵害品の輸入を止める命令。“限定的”なのは製造元であって、輸入する人ではない。

LEOが“輸入者を問わず効く”という点は、ITCとCBPが実際にそう運用している立場です。条文自体は「違反する者が輸入した物品」という書き方をしており、この読み方を正面から是認した連邦巡回控訴裁の判決は見当たりません。ただし国境で執行するのはCBPであり、輸入者にとっては“今そこにある運用”です。

販売停止命令(CDO)は米国内在庫を止める──ただし“名指しされた人”にしか出ない

ここは誤解が広まっているところなので、正確に切り分けます。

排除命令は国境で止める命令です。だから「まだ日本にある在庫を送らなければいい」で済みます。しかし販売停止命令(CDO)は、すでに米国内に入っている在庫の販売・宣伝を止める命令です。米国内に在庫を置くのがFBAの前提である以上、止まるとしたらFBA在庫そのものになります。

ただし──ここが肝心です。CDOは“誰にでも”出る命令ではありません。条文(19 U.S.C. §1337(f)(1))は、CDOを「本条に違反している者、または違反していると考えられる者」に対して発出し、送達すると定めています。相手を名指しして出す“対人”の命令です。実際の発出例でも、命令は被申立人とその関係会社等を名指ししています(Powered Cover Plates事件では、GEOと併せて4件のCDOが被申立人4社とその関係会社に向けて発出されました)。

つまり排除命令とCDOでは、効き方が正反対です。排除命令は“物”に対して効くので、名指しされていないあなたが輸入しても止まります。CDOは“人”に対して効くので、命令の名宛人にならない限り、あなたのFBA在庫には及びません。名宛人になるのは、調査で名指しされた被申立人と、その関係会社・販売代理店など“被申立人のために動く者”です。被申立人と何のつながりもない第三者が、ある日いきなりCDOで在庫の販売を止められる——CDOは、そういう作りの命令ではありません。条文も、欠席した被申立人に対する救済について「その者に限る(limited to that person)」と明記しています(19 U.S.C. §1337(g)(1))。

では他人事かというと、そうではありません。海外のオンラインセラーが被申立人として名指しされた例は、実際にあります。ある案件では、ITCが「上記調査に参加しなかった一部の被申立人に対する販売停止命令」を出したことが公示に明記されています。しかもこれはITCの裁量ではありません。条文は、被申立人が欠席した場合、申立書の事実を真実と推定したうえで、請求があれば救済を「発出しなければならない(shall)」と定めており(19 U.S.C. §1337(g)(1))、連邦巡回控訴裁もこの「shall」は一義的で、公益上の考慮だけを条件にITCに救済の付与を義務づけると判示しています(Laerdal Medical Corp. v. ITC・2018年)。名指しされたうえで応答しなければ、反論しないまま欠席でCDOが確定しますITCから書類が届いたら、絶対に放置しないこと——これがCDOに対する最大の防御です。

制裁金には上限が定められています。法律(19 U.S.C. §1337(f)(2))は「1日あたり10万ドル(≒約1,600万円/1ドル=160円換算)その日に輸入・販売した物品の国内価値の2倍いずれか高い方を“超えない”額」と定めています(原文は not more than)。上限であって、必ずこの額が科されるという意味ではありません。ただし1回の違反ではなく1日ごとに積み上がります。

下のグラフのとおり、ITCが出す救済命令はCDOのほうが多いのも事実です。2025会計年度はCDO 46件に対し、排除命令は18件(LEO 16+GEO 2)=約2.5倍。累計(FY2006〜FY2025)でもCDO 545件 対 排除命令242件です。ただしこれは「名指しされた被申立人の数だけCDOが出る」ということであり(1件の調査で被申立人が複数いれば、その人数分のCDOが出ます)、名指しされていない人に及ぶ命令が増えている、という意味ではありません。名指しされていないあなたに効くのは、あくまで排除命令——とくにGEOのほうです。

33件
FY23 CDO
13件
FY23 排除
38件
FY24 CDO
11件
FY24 排除
46件
FY25 CDO
18件
FY25 排除
米国ITCが出した救済命令の比較(会計年度別・USITC統計)。赤=販売停止命令(CDO)/灰=排除命令(LEO+GEO)。FY2025はCDO 46件に対し排除命令18件(LEO 16+GEO 2)で約2.5倍。FY2006〜FY2025の累計でもCDO 545件に対し排除命令242件。

CDO=Cease and Desist Order。米国内にある在庫の販売・宣伝・勧誘を止める命令で、排除命令(“対物”・国境で執行)とセットで出ることが多い。米国内に相当量の在庫や事業拠点を持つ被申立人に対し、排除命令だけでは救済が骨抜きになる場合に出されます。/実際のCDOの条項は、名宛人である被申立人に加えて、その役員・従業員・代理人・ライセンシー・販売代理店・支配下の関連会社・承継人にも及ぶと書かれるのが通例です(被申立人のために、または被申立人と共に行為する限りにおいて)。つまり、被申立人と取引関係のある販売者は、自分の社名が命令に書かれていなくても射程に入り得ます。/条文上、欠席した被申立人に対する救済は「その者に限る(limited to that person)」と明記されています(19 U.S.C. §1337(g)(1))。名指しされていない第三者にまで及ぶのは、CDOではなく一般排除命令(GEO)のほうです。

数字で見る──“全員に効く”一般排除命令(GEO)は、珍しくない

「うちは名指しされないから大丈夫」が通じないもう一つの理由が、一般排除命令(GEO)です。GEOは製造元も輸入者も問わず、対象品目を丸ごと止めます。連邦巡回控訴裁も、GEOは「その物品を輸入する者が調査の当事者だったか、当事者と関係があったかを問わずに」適用されると述べています(Vastfame Camera事件・2004年)。

そしてGEOは“レアケース”ではありません。USITC自身の統計では、2006〜2025会計年度に出た排除命令242件のうちGEOが79件=約3件に1件(33%)。「めったに出ない」と紹介されることがありますが、当局の実数はそう言っていません。

実例があります。しかも相手はスマホではなく、日用品です。

調査番号337-TA-1124の対象は「Certain Powered Cover Plates」=コンセントのカバープレート(ナイトライト付き壁プレート)でした。この案件のGEOをめぐるCBP裁定(2023年12月20日)は、「AmerTac社は被申立人として名指しされていなかった」と明記したうえで、同社(輸入者)に自社製品が特許を侵害しないことの立証を求めました。そして結論は——「AmerTacは立証責任を果たしていない(has not met its burden)」。同社のナイトライト付きプレートなど5製品は、GEOの対象と判断されました

整理すると、訴訟に名指しされていない会社が、ごく普通の日用品で、自社製品を米国に入れられなくなったということです。「うちは訴えられていないから」も「うちはスマホなんて売っていないから」も、この記録の前では通用しません。

もう一点。立証責任は輸入者側にあります。通常の特許訴訟では「侵害を主張する側」が立証しますが、国境では逆で、あなたが「侵害していない」ことをCBPに証明する側に回ります。AmerTacは、そこを覆せませんでした。

  • 限定的排除命令(LEO)=“作った人”で限定163件
  • 一般排除命令(GEO)=製造元も輸入者も問わず全員79件
米国ITCが出した排除命令の内訳(FY2006〜FY2025累計・USITC統計)。約3件に1件は“誰が作って誰が輸入しても止まる”GEO。

141件はUSITCが公表する直近の年次集計(2024年12月31日時点)。有効な排除命令の一覧はUSITCが公開しており、誰でも無料で確認できます。

米国に商品を輸出するには:『輸入差止に当たらないか』を確かめる手順

いつもの通関手順に、ひとつ工程を足すだけです。特に他社ブランドを仕入れて売る(転売・並行輸入)モデルの方は、③を飛ばさないでください

  1. HTS分類:まず自社商品の関税分類を確定します(→HTSコードの調べ方)。
  2. 規制の確認:FDA(食品・化粧品)・CPSC(製品安全)・FCC(無線)など、商品カテゴリごとの規制に該当しないかを確認します。
  3. ★ITCの排除命令リストで確認USITCが「現在有効な排除命令の一覧」を公開しています。自分が扱うブランド・製品カテゴリが載っていないかを、仕入れの前に見ます。無料で、誰でも、ログイン不要で見られます。命令ごとに全文PDFが公開されているので、対象品目の定義まで読めます。
  4. グレーなら、CBPに事前に聞く:判断に迷う場合、CBPの排除命令執行部門(EOE Branch)に事前裁定(19 C.F.R. Part 177)を求められます。実際に、設計変更した製品が既存の排除命令の対象外だと認められた例があります(ただし立証するのは申請者側です)。
  5. 原産地表示・通関書類:品名を具体的に書き、Made in Japanの恒久表示を整えます。
  6. 輸入者(IOR)を決めて配送:FBAは米国内在庫が前提。Amazonは輸入者になりません(→米国FBAの輸入者(IOR)とは)。誰が通関の主体になるかを先に決めます。

③④は無料の公開情報なので、ご自身で確認できます(ここは誰かに頼む必要がありません)。そのうえで、①②⑤⑥の通関実務——HTS分類・規制の確認・品名設計・原産地表示・通関書類・FBA納品——は当社の発送代行(SLC)がまとめて引き受けます。

💡 実務のワンポイント

調べる場所を間違えると、何度確認しても“ゼロ件”しか返ってきません。CBPには『IPR e-Recordation』という知財の登録制度があり、多くの人はここを検索して「載っていないから大丈夫」と判断します。ところがこの制度で登録できるのは商標と著作権だけで、特許は登録できません。CBP自身が「米国特許商標庁に登録された特許はCBPに記録できない」と明言しています。つまり特許にもとづく337条の排除命令は、IPR e-Recordationを何度見ても絶対に出てきません——「調べたけど何も出なかった=安全」が、いちばん危ない勘違いです。見るべきなのはUSITCが公開している「現在有効な排除命令の一覧(Outstanding Exclusion Orders)」という“まったく別のリスト”。無料・ログイン不要で、命令ごとの全文PDFから対象品目の定義まで読めます。仕入れ前に見るならこちらです。

よくある質問

Maxell対Samsungで、Samsungの侵害は認められたのですか?
いいえ、確定していません。2026年7月1日にALJ(行政法審判官)が「Section 337違反に関する初期判断」を出し、あわせて「違反が認定された場合の」救済措置(限定的排除命令・販売停止命令)を勧告した段階です。連邦官報の公示も一貫して「委員会が違反を認定した場合には」という条件付きの書き方をしています。違反の有無を最終判断するのはITC委員会で、その後さらに60日の大統領審査があります。
Galaxyを売っていないので、自分には関係ないですよね?
この2件そのものは、直接は関係しません。ただし仕組みは他人事ではありません。337条の排除命令は「名指しされた会社が作った製品なら、誰が輸入しても」効くように書かれており(一般排除命令なら製造元も問いません)、現在141件(2024/12/31時点)が有効です。あなたが扱う商品が既存の命令の対象品目に当たれば、あなたが裁判に名指しされていなくても国境で止まります。仕入れ前にUSITCの一覧を確認するのが確実です。
個人使用や少額なら見逃してもらえますか?
いいえ。337条の排除命令に個人使用の例外も少額(デミニミス)の例外もありません。法律上の適用除外は米国政府による使用だけです。「自分用に数個だけ」は理由になりません。
FBAで既に米国内に在庫がある場合はどうなりますか?
排除命令は国境で止める命令なので、既に米国内に入っている在庫には及びません。米国内在庫の販売を止めるのは販売停止命令(CDO)ですが、CDOは条文上「本条に違反している者、または違反していると考えられる者」に対して発出・送達される“対人”の命令です(19 U.S.C. §1337(f)(1))。つまり、あなたが命令の名宛人(被申立人本人か、その関係会社・販売代理店など被申立人のために動く者)に当たらない限り、あなたのFBA在庫がCDOで止まることはありません。被申立人と取引関係のない第三者が、名指しもされずにCDOで止められることはありません。実際の発出例でも、CDOは被申立人とその関係会社等を名指しして出されています。ただし、海外のオンラインセラーが被申立人として名指しされた例は実際にあり、ITCは調査に参加しなかった被申立人に対してもCDOを出しています。名指しされたのに応答しなければ、反論しないまま欠席でCDOが確定します。ITCから書類が届いたら放置しないでください。なおCDOに違反して販売を続けた場合の制裁金は、1日あたり10万ドル(≒約1,600万円・1ドル=160円換算)とその日に輸入・販売した物品の国内価値の2倍の、いずれか高い方を“上限”として、1日ごとに加算されます(19 U.S.C. §1337(f)(2)。原文は not more than =上限であり、必ずこの額が科されるという意味ではありません)。これはCDO違反に対するもので、排除命令違反に対するものではありません。
うっかり対象品を送ってしまったら、いきなり没収されますか?
いいえ、初回からいきなり没収にはなりません。まず通関拒否と書面通知があり、その通知を受け取った後に同じ物をもう一度入れようとすると、没収・没取に進みます(19 C.F.R. §12.39)。届いた通知を確認しないまま再送するのが、いちばん重い結果につながります。なお大統領審査中に保証金を積んで通した貨物は、ITCの違反認定が確定した後にCBPから「その貨物の輸入を拒否する」旨の通知が届き、その“通知の日”から30日以内に、税関の監督下で輸出または廃棄が必要です(19 C.F.R. §12.39(b)(3))。起算点は命令の確定日ではなく、通知が届いた日です。
特許だけが対象ですか?
いいえ。337条は特許のほか、登録商標・登録著作権・半導体マスクワーク・船体設計を対象とし、さらに包括規定でトレードドレスや営業秘密も射程に入ります。偽造品(カウンターフィット)は登録商標の侵害としてそのまま対象です。並行輸入品(グレーマーケット)も対象になり得ますが、正規品と『実質的な差異』があることの立証などが必要で、無条件ではありません。
出典は?
連邦官報の公示(2026/7/8付=調査番号337-TA-1432の公共の利益に関する意見募集、2026/7/15付=Docket No. 3922の申立て受理公示)、USITCのSection 337統計(有効な排除命令数・救済命令の発行数)、米CBPの裁定(CROSS:H338253ほか)、および19 U.S.C. §1337の条文です。すべて一次情報にあたって確認しています。
📘 用語ミニ解説
  • Section 337(337条):知的財産を侵害する物品の“米国への輸入”自体を止める米国の制度。関税ではなく差止。
  • 排除命令(Exclusion Order):国境で輸入を止める命令。“作った人”で限定するLEOと、全員に効くGEOがある。執行はCBP。
  • 販売停止命令(CDO):米国内に既にある在庫の販売・宣伝を止める命令。「違反している者、または違反していると考えられる者」を名指しして出す“対人”の命令で、名指しされていない第三者の在庫には及ばない。違反した場合の制裁金は1日あたり10万ドル(≒約1,600万円)または国内価値の2倍の高い方が“上限”。
  • 初期判断(Initial Determination):ALJ(行政法審判官)が出す一次審の判断。これだけでは確定せず、ITC委員会が最終判断する。
🤝 むずかしく見えても、ここは任せられます

怖い話に見えますが、やることはシンプルです。①この制度が止めるのは“他社の特許・商標を侵害する物品”です。あなたの商品がどれにも当たらなければ、そもそも関係がありません。②注意が要るのは、扱う製品カテゴリが既に排除命令——とくに製造元を問わないGEO——の対象になっているのに、気づかないまま仕入れてしまうケースです。「普通に売っていれば大丈夫」とは言い切れません(実際にコンセントプレートのような日用品で起きています)。ただし、これは事前に気づけます。USITCの一覧は無料・ログイン不要で、仕入れの前に対象品目の定義まで目を通せば、多くは避けられます。③それでも迷う場合は、CBPの事前裁定という公式の確認手段があります。つまり“見えない地雷”ではなく、公開された一覧です。そのうえで、HTS分類・規制の確認・品名設計・原産地表示・通関書類・FBA納品といった煩雑な発送実務は、当社(WorldShift)の発送代行(SLC)がまとめてお引き受けします(通関の可否・所要日数・費用は最終的にCBP等の当局が判断するもので、当社が結果をお約束するものではありません)。あなたは“米国で売れる日本製”を選ぶことに集中してください。

出典・参考
本記事は2026年7月15日時点の一次情報にもとづきます。【重要】Maxell対Samsungの2件はいずれも手続の途中であり、Section 337違反の有無は確定していません。連邦官報の公示は「委員会が違反を認定した場合には」という条件付きで救済措置の意見を募集しているものであり、侵害の認定・輸入禁止の決定を意味しません。最終判断はITC委員会が行い、その後60日の大統領審査(実務上はUSTRに委任)を経て確定します。/LEOが“輸入者を問わず”適用される点は、ITCおよびCBPが実際に採用している立場です(CBP裁定H338253、ITC Certain GPS Devices, 337-TA-602, Comm'n Op. at 17 n.6)。条文は「違反する者が輸入した物品」という書き方であり、この読み方を正面から是認した連邦巡回控訴裁の判決は確認できていません。GEOが当事者以外にも及ぶ点は連邦巡回控訴裁の判示があります(Vastfame Camera v. ITC, 386 F.3d 1108, 1114)。/販売停止命令(CDO)は、19 U.S.C. §1337(f)(1)により「本条に違反している者、または違反していると考えられる者」に対して発出・送達される“対人”の命令であり、名指しされていない第三者の在庫に直接及ぶものではありません(実際の発出例でも被申立人とその関係会社等を名指ししています=Certain Powered Cover Plates, 337-TA-1124)。ただし実際の命令条項は、被申立人に加えてその役員・代理人・ライセンシー・販売代理店・関連会社等にも及ぶのが通例であり、被申立人と取引関係のある販売者は、自社名が命令に書かれていなくても射程に入り得ます。欠席した被申立人に対する救済については、同(g)(1)が「その者に限る(limited to that person)」と明記しています。同(f)(2)の制裁金は「not more than」=上限額の定めであり、必ずその額が科されるという意味ではありません。/保証金を積んで通した貨物の輸出・廃棄期限は、19 C.F.R. §12.39(b)(3)により「CBPからの通知の日から30日以内」であり、命令の確定日が起算点ではありません。/円換算は1ドル=160円で計算した参考値です。/個別の商品が既存の排除命令の対象に当たるかの判断は、USITCの一覧および必要に応じてCBPの事前裁定(19 C.F.R. Part 177)で必ずご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的とした見本です。金額はわかりやすさ優先のざっくり試算で、個別の通関・税務判断を保証しません。正確な税率・分類は各製品のHTSコードと最新の公式情報をご確認ください。