米国で菓子が「外国語パッケージの全ユニット」回収に──英語のアレルゲン表示がなかった
FDA規制

米国で菓子が「外国語パッケージの全ユニット」回収に──英語のアレルゲン表示がなかった

2026年8月10日() | 出典:FDA公表の回収告知(企業プレスリリース)/21 CFR 101.15・CPG Sec 110.900/FALCPA・FASTER法/食品アレルゲンQ&A 第5版+当社(WorldShift)整理(FDA規制)

米国のディスカウントスーパー Lidl US が、自社ブランドのショートブレッドを回収しました。7月24日に1品で始まった回収は、7月31日に外国語の原材料・栄養成分パネルが付いた全ユニット・2品へ広がっています。中身に問題があったわけではありません。英語の原材料・栄養成分・アレルゲン表示が無く、買う人が小麦・大豆・乳・卵の存在を判別できなかった——落ちたのは情報の側です。日本の対米「農林水産物・食品」輸出は2,429億円(2024年実績・前年比+17.8%)で米国が輸出先1位。日本語パッケージのまま送ろうとする事業者に、そのまま当てはまる事例として整理しました。

TOPIC
全ユニット対象
外国語パネル付き製品2品に拡大(7/31・Lidl US)
回収拡大
TOPIC
9州+D.C.
2026年7月15〜28日にLidl US店舗で販売
TOPIC
疾病報告0件
それでも全ユニットが回収対象=理由は品質ではなく表示
TOPIC
英語+その言語
外国語表記が残ると必須表示は両方必要(21 CFR 101.15(c)(2))

何が起きたか──7月24日の回収が、7月31日に「外国語パネル付きの全ユニット」へ拡大

米国のディスカウントスーパー Lidl US が、自社ブランド「Eridanous」のショートブレッドを回収しています。始まりは7月24日で、対象はチョコトリュフ×アプリコットの1品でした。その1週間後の7月31日、対象は外国語の原材料・栄養成分パネルが付いた全ユニットへ広がり、ココナッツ入りの1品が加わって2品になりました。

問題になったのは中身ではありません。パッケージに英語の原材料表示・栄養成分表示・アレルゲン表示が無く、買う人が小麦・大豆・乳・卵・木の実(ココナッツ)の存在を判別できない状態で棚に並んでいたことです。2026年7月15日〜28日に9州+ワシントンD.C.(デラウェア、ジョージア、メリーランド、ニュージャージー、ニューヨーク、ノースカロライナ、ペンシルベニア、サウスカロライナ、バージニア)のLidl US店舗で販売されました。疾病の報告はありません

この回収で見るべきは線の引き方です。通常の回収は「このロット」「この賞味期限」で切ります。ところが拡大後の対象は「外国語パネルが付いているかどうか」というパッケージの仕様で切られました。中身が同じでも、英語パネルの製品は棚に残り、外国語パネルの製品は全部下ろされた、ということです。

なぜ拡大したのかは、FDAが掲載した拡大告知に書かれています。Lidl USはサプライヤーの流通記録を精査し、ココナッツ入りの製品にも同じ外国語パッケージの不備がある可能性が判明したため、対象を広げました。つまり拡大は、新たな苦情や健康被害ではなく自社の記録をさかのぼった結果として起きています。ここが日本の輸出者に効きます──1件の不備が見つかったとき、同じ供給元・同じ仕様で流した在庫まで遡って洗えるかどうかが、回収の範囲を決めます。

9州+ワシントンD.C.のLidl US店舗で販売
回収開始──チョコトリュフ×アプリコットの1品
「外国語パネル付きの全ユニット」2品へ拡大──サプライヤーの流通記録の精査で、ココナッツ入り製品にも同じ不備の可能性が判明
回収対象内容量・UPC・対象範囲
Eridanous Shortbread Cookies
(チョコトリュフ×アプリコット)
330g(11.6 oz)/UPC 4056489125839
外国語パネル付きの全ユニット
Eridanous Shortbread Cookies
(アプリコット×ココア+ココナッツ)
※7/31の拡大で追加
330g(11.6 oz)/UPC 4056489125846
外国語パネル付きの全ユニット

拡大後の対象は「外国語の原材料・栄養成分パネルが付いた全ユニット」。ロット番号ではなく“パッケージの仕様”で線が引かれた点が、日本の輸出者には一番効きます。

なぜ違反になるのか──外国語表記が残ると、必須表示は英語+その言語の両方

米国の規則は2段構えです。21 CFR 101.15の(c)(1)は、必須表示を英語で行うことを求めます。そして(c)(2)——ラベルに外国語の表記が1つでも含まれる場合、必須表示をその外国語でも全て表示しなければならないと定めています。

ここが日本の輸出者に直撃します。日本語パッケージに英語シールを貼る運用は、日本語表記が残っている限り日本語側にも必須表示を揃える義務を生みます。つまり取り得る形は2つ——(a) 外国語表記を隠しきって英語だけにするか、(b) 必須表示を両方の言語で載せるか。今回のLidlの線引き(外国語パネル付きの全ユニット)は、この規則の裏返しです。英語表示を欠く輸入品を誤表示(misbranding)として扱うFDAの運用指針CPG Sec 110.900も、この条文を受けたものです。

押さえておきたいのは、この回収が「原材料が危険だった」話ではないことです。中身は普通のクッキー。しかも米国の大手小売が自社ブランド品で起こしています。つまりこれは知識量の問題ではなく、「表示を誰がいつ最終確認するか」という仕組みの問題です。仕組みを持てば避けられる、と読むのが正しい読み方です。

必須表示の言語
英語で表示(21 CFR 101.15(c)(1))
外国語表記が残る場合
必須表示をその外国語でも全て表示(同(c)(2))
英語表示を欠く輸入品
誤表示(misbranding)として扱う(CPG Sec 110.900)
今回の回収の線引き
ロット単位ではなく「外国語パネル付きの全ユニット」
21 CFR 101.15:必須表示の言語を定める規則。(c)(1)で英語、(c)(2)で「外国語表記があればその言語でも全て表示」を要求する。
FALCPA/FASTER法:米国のアレルゲン表示法。FALCPAが8品目の表示を義務化し、FASTER法で2023/1/1に「ごま」が9番目に加わった。
misbranding:誤表示・表示欠如。輸入差し止めの主要理由の一つ。

回収告知は「Tree Nut (Coconut)」、FDAガイダンスは対象外──どちらに合わせるか

今回の回収告知は、未表示アレルゲンとして「Tree Nut (Coconut)」を挙げています。ところがFDAは2025年1月6日付の最終版ガイダンス食品アレルゲンQ&A(第5版)——これは規則(final rule)ではなく、FDAの現時点の考え方を示すガイダンス文書です——で、表示義務の対象となる木の実を23種から12種へ整理し、ココナッツを外しました(ほかにchestnut、cola/kola nut、ginkgo nut、palm nut、shea nut等も除外)。現行の整理では、原材料欄には一般名(coconut等)で記載する一方、「Contains」欄への記載義務はありません

なぜ食い違うのか。回収告知は企業のプレスリリースをFDAが掲載したもので、規制の現状を示す文書ではありません。旧区分の表記が残ることは起こり得ます。したがって自社製品の表示は、告知の表記ではなく現行版のQ&Aで確認するのが正解です。

この一件が示す論点は、ココナッツそのものより深いところにあります——アレルゲンの区分は動く。2023年に「ごま」が9番目として加わり、2025年には11種が木の実から抜けました。古い情報でラベルを作ると、不足表示と過剰表示の両方が起きる。不足は回収に、過剰は不要な販売機会の喪失につながります。

木の実(tree nut):9大アレルゲンの一つ。対象の木の実はFDAの現行ガイダンス(食品アレルゲンQ&A 第5版・2025年1月)で12種に整理され、ココナッツは除外された。

ごまは2023年1月1日施行で9番目の主要アレルゲンとして加わり、2025年1月には木の実11種が対象外になりました。区分は数年単位で動きます。

日本の輸出者に効く3点

  1. 回収は「通関を通った後」に起きる。輸入差し止め(refusal)だけを見ていると見落とします。通関を通り、店頭やAmazonに並んでから回収になると、在庫の全損・返金・回収告知が一度に発生します。
  2. 「英語シールを貼る」だけでは足りないことがある。前述の21 CFR 101.15(c)(2)により、日本語表記が残れば日本語側にも必須表示が必要です。論点は(a)隠しきるか(b)両方載せるかの選択と、貼付・確認を誰がいつ行い、貼り忘れをどう検知するかの2点に絞られます。
  3. 線引きは「1枚の貼り忘れ」で止まらない。今回の対象は外国語パネル付きの全ユニットでした。表示の不備がロットではなくパッケージの仕様に紐づくと判断されれば、同じ仕様の在庫がまとめて対象になり得ます。つまり貼付運用の設計は、1個の不良ではなく在庫全体のリスクを決めます。

まず自社の1品目で、原材料表から9大アレルゲンを当て、パッケージに外国語表記が残るかを確認するのが早道です。必要な表示要素の全体像は米国の食品ラベル要件(英語表示・栄養成分・アレルゲン表示)の総論で扱っています。また、ラベルの書き方ではなく「原材料の側」からアレルゲンが入ってくる類型は性質が異なるため、「卵不使用」の卵代替粉末から卵混入のおそれ──3,860個回収で別に整理しました。

💡 実務のワンポイント

見落としの一番手は『アレルゲンの区分が動くこと』です。2023年1月にごまが9番目として加わり、2025年1月には木の実が23種→12種に整理されてココナッツ等が外れました。今回の回収告知が「Tree Nut (Coconut)」と書いているのは、告知が企業のプレスリリースだからで、現行の整理とはズレています——表示は必ず現行版のFDAガイダンスで当ててください。二番手は『英語シールの貼り忘れ』。外国語パネルが残っていること自体が今回の回収の線引きに使われ、しかも21 CFR 101.15(c)(2)は外国語表記が残る場合にその言語での必須表示も求めます。三番手は『線引きの単位』——ロットではなくパッケージの仕様で切られると、同じ仕様の在庫がまとめて対象になり得ます。貼付を現地で行う運用なら、貼り忘れを“出荷前に”検知できる形にしておくかどうかで被害の桁が変わります。

よくある質問

日本語パッケージのまま米国のAmazonで売れますか?
いいえ。米国で小売される包装食品は英語での原材料・栄養成分・アレルゲン表示が前提で、FDAは英語表示を欠く輸入品を誤表示(misbranding)として扱います(CPG Sec 110.900)。
英語のシールを貼れば大丈夫ですか?
いいえ、それだけでは足りない場合があります。21 CFR 101.15(c)(2)は、ラベルに外国語の表記が残る場合に必須表示をその外国語でも全て表示することを求めます。日本語表記を隠しきるか、両方の言語で載せるかの選択になり、現地で貼る運用なら貼り忘れを検知できる仕組みまで必要です。
回収の原因は品質ですか?
いいえ。原因は表示です。外国語パッケージに英語の原材料・栄養成分・アレルゲン表示が無く、買う人がアレルゲンを判別できない状態でした。疾病の報告はありません。
回収の対象はロット単位ですか?
今回は違います。7月31日の拡大で対象は「外国語の原材料・栄養成分パネルが付いた全ユニット」となり、ロット番号ではなくパッケージの仕様で線が引かれました。
ココナッツはアレルゲン表示が必要ですか?
原材料欄への一般名での記載は必要です。ただしFDAは2025年1月付の最終版ガイダンス(食品アレルゲンQ&A 第5版。規則ではなく、FDAの考え方を示すガイダンス文書です)でココナッツを主要アレルゲンの木の実から外したため、現行のFDAの整理では「Contains」欄への記載義務はありません(任意で記載する場合の可否は現行版のQ&Aでご確認ください)。今回の回収告知の「Tree Nut (Coconut)」表記は、企業のプレスリリースの記載です。
📘 用語ミニ解説
  • 21 CFR 101.15:必須表示の言語を定める規則。外国語表記が残る場合はその言語でも必須表示が必要((c)(2))。
  • misbranding:誤表示・表示欠如。英語表示を欠く輸入食品もこれに当たる。
  • FALCPA/FASTER法:アレルゲン表示の法。FASTER法で「ごま」が第9アレルゲンに(2023/1/1施行)。
  • 木の実(tree nut):9大アレルゲンの一つ。FDAの現行ガイダンス(2025年1月)で12種に整理され、ココナッツは除外された。
🤝 むずかしく見えても、ここは任せられます

要件そのものはシンプルです——英語で原材料・栄養成分・アレルゲンを表示し、9大アレルゲンを漏れなく拾う。難所は主にこの2つで、①どのアレルゲンが自社製品に当たるかの判定(区分は数年単位で動きます)と、②表示の「言語」の設計(日本語表記を残すなら日本語側にも必須表示が必要/隠しきるなら貼付と検知の運用をどう作るか)です。当社は区分の判定・英語ラベルの設計・出荷前チェックまでを担当し、供給者検証(FSVP)や米国代理人は提携先と連携して進めます(対応可否は製品ごと・別費用)。通関から米国内配送までは発送代行(SLC)が繋ぎます。回収は起きてからでは戻せません——だからこそ、出荷前にどこが危ないかを確認する時間に価値があります。取った後(表示の更新・原料変更時の見直し・再発防止)まで継続で見る形もご用意しています。

回収は企業の自主回収をFDAが公表したものです。回収告知は企業のプレスリリースであり、規制の現状を示す文書ではありません(今回の「Tree Nut (Coconut)」表記がその例)。7月31日の拡大は、サプライヤーの流通記録の精査でココナッツ入り製品にも同じ外国語パッケージの不備の可能性が判明したことによるものです(FDA掲載の拡大告知に記載)。対象範囲・UPCはFDAの回収告知を、表示要件は21 CFR 101および最新のFDAガイダンスをご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件への法令適用の判断や法的助言ではありません。
※本記事は一般的な情報提供を目的とした見本です。金額はわかりやすさ優先のざっくり試算で、個別の通関・税務判断を保証しません。正確な税率・分類は各製品のHTSコードと最新の公式情報をご確認ください。