
米国の国際郵便が7/24から別制度へ──「配達のときに関税を払う」が廃止、bondと10桁HTSの月次申告に。EMS・eパケットの小口輸出は組み直しが要る
米国に国際郵便(EMS・eパケット・国際小包)で送っている人にとって、2026年7月24日は区切りの日です。CBP(米国税関・国境警備局)の暫定最終規則により、郵便で届いた荷物の関税を「配達のときに受取人から取る」やり方が無くなります。規則の原文はこう書いています——「CBPの職員はこれらの貨物について手作業で申告書を作成しなくなり、関税は名宛人への配達時には徴収されない」。
代わりに始まるのが新しい「郵便の簡易通関(postal informal entry)」です。価額$2,500以下で、HTSUS第1〜97類(=第98・99類の特殊分類を除く、ふつうの一般商品のほぼ全て)に分類される荷物を、bond(保証証券)を持つ荷主本人か、指定を受けた免許通関ブローカーが、10桁のHTS(HTSコード=米国の関税分類番号。品物ごとに10桁で決まり、税率が決まる)を全て入れたExcelを翌月7日までにCBPへ送り、Pay.govで納付する——これが新しい形です。
正直に書きます。「郵便でひとつずつ、安く送る」やり方は、ここでかなり厳しくなります。ですが裏を返せば、送り方の前提が全員そろったということでもあります。すでにクーリエ+まとめ輸入で通関の型を持っている事業者にとっては、むしろ差がつく側。米国で日本製が売れているという事実は、この規則では何も変わっていません。変わったのは“送り方の設計”だけです(米国の棚でいま何が起きているかはこちら)。
何が変わった?──「配達のときに払う」が無くなる
これまで郵便で届いた課税対象の荷物は、CBPの職員が手作業で申告書を作り、配達のときに受取人が関税を払う——という流れでした。7月24日から、これが無くなります。規則の原文は「CBP officers will no longer manually prepare entry forms for such shipments, and duties will not be collected upon delivery of such shipments to addressees(CBP職員はこれらの貨物について手作業で申告書を作成しなくなり、関税は名宛人への配達時には徴収されない)」と明記しています。
つまり「送っておけば、あとは米国側で処理してくれる」という受け身のやり方が終わるということです。関税は消えません。払う人と、払い方と、申告する人が変わるのです。
ここで日付を取り違えないでください。郵便の$800免税(デミニミス)は、多くの商品について2025年8月29日からすでに停止しています(大統領令14324)。2026年6月24日に起きたのは“停止”ではなく“明文化”で、それまで大統領令にもとづいていた停止を、19 CFR 145.31によりCBPの規則として無期限に書き込んだものです。規則の原文も「This rule does not, in practice, change the existing suspension of de minimis for postal shipments(この規則は実務上、郵便貨物のデミニミス停止の現状を変更しない)」と明言しています。
つまり免税が使えなくなったのは、10か月前からです。7月24日に始まるのは、その先の「では、どうやって申告して納付するのか」という新しい手続きのほうです。
暫定最終規則(interim final rule)=施行しながら意見も募る形式です。/日付の整理=「免税が止まった日」は2025/8/29(大統領令14324)、「規則に書き込まれた日」が2026/6/24(19 CFR 145.31)、「新しい申告・納付手続きが始まる日」が2026/7/24。6/24を“停止日”と読むと、それまで免税で送れたかのような誤解になります。
誰が申告できるのか──ここが実質的なハードル
新制度でいちばん重いのは、実は関税額ではなく「申告できる人が限られた」ことです。
規則は、申告できる者を「19 CFR 143.26(a)により輸入申告をする権利を持つ者、すなわち米国に郵送される貨物のowner(荷主)またはpurchaser(購入者)、あるいは適切に指定された免許通関ブローカー」に限定しました。さらに19 CFR 145.15が新設され、bond(保証証券)が必須になります(単発の取引ごとのbond、または包括bond。19 CFR 113.62の条件を備えたもの)。
ここが効きます。「日本から郵便で送って、米国の受取人が郵便局で払う」という個人レベルの回し方は、成立しなくなります。bondを持つ主体——自分自身か、契約した通関ブローカー——を荷物を送る前に用意しておく必要があるからです。
「誰が輸入者(IOR)になるか」を決める話と地続きです。FBA輸出の場合はAmazonは輸入者になりません(別記事)。
何を、いつ出すのか──Excelを翌月7日まで、納付もPay.govで翌月7日まで
手続きは月次のまとめ提出です。荷物が到着した翌月の7日までに、CBPが指定するメールアドレスへExcelのスプレッドシートを送り、納付も同じく翌月7日までにPay.govで行います。
そして10桁のHTSを、該当するもの全て書く必要があります。これまでCBP側が手作業でやっていた分類が、そのまま申告する側の仕事になったと考えてください。
| 提出するExcelの記載項目(規則が列挙するもの) |
|---|
| Filer Code(申告者コード)/Bond Number(bond番号) |
| 品名/原産国/該当する10桁HTSUS分類を全て |
| 数量・重量(従量税率を使う場合のみ必須)/税率/価額/関税の総額 |
| キャリア/便名(Flight/Conveyance Number)/追跡番号 |
| 到着港/到着日 |
提出先のメールアドレス・様式の詳細はCBPが指定します。運用の最新はCBPのCSMS(#69183472ほか)で確認してください。
この簡易通関が“使えない”荷物がある──そして10/22の猶予
郵便の簡易通関は万能ではありません。規則は、次に当たる貨物を対象外としています(=正式通関などが必要になります)。
- 価額$2,500超の貨物
- 数量制限(クォータ)の対象品(絶対割当・関税割当のいずれも)
- アンチダンピング/相殺関税(AD/CVD)の対象品。あわせて法律上、簡易通関の対象から外れるその他の貨物も同じ扱いです
- 酒類・たばこ製品——アルコール飲料(日本酒・ウイスキー等)、葉巻・紙巻たばこ、パイプたばこ、かぎたばこ、かみたばこなど
- PGA(他省庁)の要件の対象となる郵便貨物
- HTSUS第98類・第99類の関税がかかる貨物、または第98類やFTA(自由貿易協定)で免税を主張する貨物
ここが日本の輸出者に直接効きます。PGA=FDAやCPSCなどの規制官庁のこと。つまり食品・化粧品・サプリ(FDA)や、玩具・子ども向け製品(CPSC)は、原則としてこの郵便簡易通関の枠から外れる品目です。
そして見落とされやすいのが酒類です。日本酒・ウイスキーは、金額の大小に関係なく条文で名指しされていて、郵便の簡易通関は使えません(正式通関)。「$2,500以下だから簡易でいける」と考えると、ここで外します。
ただし猶予があります。規則は19 CFR 145.12(a)(2)(v)〜(vi)の適用日を2026年10月22日としており、それまでの間はPGA要件のある貨物・第98/99類の関税がかかる貨物・FTAで免税を主張する貨物も、郵便の簡易通関の手続きを使えるとされています。その後は「Entry Type 13」のテストが代替の選択肢として案内されています。
自分の品目にPGA要件があるかは、HTSを10桁まで確定させたうえで判定します。10/22はその意味で“自分ごとの期限”になります。
米国に小口で商品を輸出するには:通関・手続きの全体像
今回の変更を踏まえた順番は、こうなります。
- ルートを決める(郵便か、非郵便か)——DHL・UPS・FedExなどのクーリエ、航空・海上は「非郵便」で、今回の7/24の話ではなく6/24施行の別規則の対象です。FBA輸出・eBay輸出の多くはこちらに当たります(別記事)。
- 誰が輸入者(IOR)になるかを決める——郵便でも非郵便でも、申告する主体が要ります(別記事)。
- HTSを10桁で確定する——新制度では申告側の必須項目。税率を把握して原価に算入します(調べ方はHTSコードの調べ方)。
- 規制(PGA)の要否を確認する——FDA・CPSCなどの対象なら、10/22の猶予後は郵便簡易通関から外れます。
- bondを用意する——単発か包括か。自社で持つか、通関ブローカーに委ねるか。
- まとめ輸入(コンソリ)で1件化する——通関の固定費を分散します(「まとめ輸入」でコストを抑える送り方)。
非郵便(クーリエ等)の通関・関税対応、まとめ輸入はSLC(発送代行)、個人・小口の越境発送はallynairで対応できます。
郵便か非郵便かで適用される規則が違います。まずここを取り違えないことが出発点です。
(1)★“gift”と書けば免税、は通りません。郵便で残る免税は、実質“$100以下の本物の贈り物(bona fide gift)”だけです(特定の島嶼領域からのものは$200)。ここが見落とされやすいところで——もうひとつ規則に出てくる“$200以下”は「米国に到着する旅客に付随する身の回り品・家庭用品」のことで、郵便で送る荷物の話ではありません。この2つを混同して、販売した商品にgiftと書いて送るのは、免税の要件を満たさない虚偽の申告です。bona fide giftは“外国にいる個人から米国にいる個人への、対価を伴わない本物の贈り物”を指し、事業者が買い手に発送する商品は金額がいくらであっても当たりません。(2)★10/22の猶予期限を“自分ごと”に落としておくこと。食品・化粧品・サプリ(FDA)、玩具・子ども向け製品(CPSC)などPGA要件がかかる品目は、猶予が切れると郵便の簡易通関から外れます。判定にはHTSの10桁確定が先に要るので、いま自分の主力品目の分類を確定させておくのが、7〜10月をいちばん静かに越える方法です。なお酒類(日本酒・ウイスキー)とたばこは猶予の対象ですらなく、7/24から金額に関係なく正式通関です。
よくある質問
- 郵便の簡易通関(postal informal entry):2026/7/24開始。国際郵便で届く$2,500以下・HTSUS第1〜97類の貨物を、bondを持つ荷主か通関ブローカーが月次でまとめて申告・納付する手続き。
- bond(保証証券):関税・罰金の支払いを保証する証券。単発と年間包括がある。
- Pay.gov:米国政府への電子納付サイト。新制度では郵便の関税もここで納付する。
- bona fide gift:外国にいる個人から米国の個人への、対価を伴わない本物の贈り物。$100以下は引き続き免税。販売した商品は該当しない。
郵便が使いにくくなっても、送る道が閉じるわけではありません。要点は3つだけ——①郵便か非郵便かを決める②HTSを10桁で確定する③誰が輸入者になるかを決める。ルートの選定、HTSの確定、まとめ輸入、通関書類の作成といった実務は、当社の発送代行(SLC)がまとめて引き受けます(通関の可否・所要日数・費用は、最終的にCBPなど米国当局の判断によります)。個人・小口の越境発送はallynairが対応します。あなたは「米国で売れる日本製を選んで、出品すること」に集中してください。

