
米国の“コレクティブル棚”が広がっている──GameStopは売上の41.8%がコレクティブルで単独最大に、玩具全体も1〜4月で金額+13%。ジブリ公式は6/23に米国初のポップアップ
米国の小売の“棚”が、静かに入れ替わっています。ゲーム専門店のGameStopが2026年6月2日に開示した第1四半期(2026年5月2日締め)で、コレクティブルが売上の41.8%を占め、ハードウェアを抜いて単独で最大のカテゴリになりました(前年同期は28.9%)。ゲーム機を売る店で、グッズがゲーム機より売れたということです。
業界全体も同じ方向を向いています。調査会社Circanaが6月15日に公表したところでは、米国の玩具業界は2026年1〜4月で金額が前年同期比+13%。「ゲーム&パズル」というくくりは+39%で、牽引役はポケモンだとしています。そして6月15日、スタジオジブリ公式グッズの「どんぐり共和国」が、米国で初のポップアップストアを発表(6月23日オープン)。日本の権利元自身が、米国に店を出しはじめた。
——ここから先が本題です。棚は確かに開いています。米国の実店舗のレジがポップカルチャー商材に組み替わり、業界全体の金額も伸びている。これは複数の一次情報が同じ方向を指しています。そのうえで、この3つの数字の“主語”だけは正確に切り分けておく必要があります——どれも米国市場“全体”の数字であって、「日本製品が売れている」という意味ではないからです。この記事では主語を1つずつ切り分けたうえで、日本のセラーが実際に取れる部分はどこかを書きます。結論から言えば、取り分は“米国で買えない日本版”に集中しています。
何が起きた?──ゲーム専門店で“グッズ”がゲーム機を抜いた
GameStopが2026年6月2日に開示した第1四半期(13週間・2026年5月2日締め)の売上構成です。為替は1ドル=160円で換算しています。
| カテゴリ | 2026年Q1 | 構成比 | 前年同期 | 前年の構成比 |
|---|---|---|---|---|
| コレクティブル | 3億4,890万ドル(≒558億円) | 41.8% | 2億1,150万ドル(≒338億円) | 28.9% |
| ハードウェア・アクセサリ | 3億3,370万ドル(≒534億円) | 39.9% | 3億4,530万ドル(≒552億円) | 47.1% |
| ソフトウェア | 1億5,270万ドル(≒244億円) | 18.3% | 1億7,560万ドル(≒281億円) | 24.0% |
| 総売上 | 8億3,530万ドル(≒1,336億円) | 100% | 7億3,240万ドル(≒1,172億円) | 100% |
コレクティブルは前年同期比で約+65%(開示値からの当社計算)。総売上の伸びが+14%ですから、伸びのほとんどをこのカテゴリが作ったことになります。
★ここで主語を2つ、正確にしておきます。
①「コレクティブル」は日本製品の数字ではありません。GameStopは自らこう定義しています——「アパレル、玩具、トレーディングカード、ガジェット、ポップカルチャーおよびテクノロジー愛好家向けのその他の小売商品、ならびにトレーディングカードの鑑定・グレーディングの取次サービスの販売」。アパレルもガジェットも、さらにはサービスまで入った広いくくりです。「日本のトレカが+65%」ではありません。
②「ハードとソフトの合計を上回った」ではありません。そう書いている記事を見かけますが、数字が合いません。コレクティブル3億4,890万ドルに対し、ハード3億3,370万ドル+ソフト1億5,270万ドル=4億8,640万ドル。合計には届いていません。正しくは「ハード単独・ソフト単独をそれぞれ上回り、単独カテゴリとして最大になった」です。ここを盛ると、そのまま仕入れ判断の誤差になります。
- コレクティブル41.8%
- ハードウェア・アクセサリ39.9%
- ソフトウェア18.3%
金額はGameStopの開示値。円換算は1ドル=160円での概算です。前年比+65%は開示値からの当社計算で、同社が公表している数値ではありません。
業界全体も同じ方向。ただし“伸びの中身”は正確に見る
調査会社Circanaが2026年6月15日に公表した米国の玩具業界のデータです。
- 金額は2026年1〜4月で前年同期比+13%(2025年のトレンドからの加速)
- 数量は+5%、平均単価(ASP)は+7%
- 「ゲーム&パズル」のスーパーカテゴリが+39%、牽引役はポケモン
- 18歳以上が業界の成長の35%を占める(1〜4月)
- 成長の50%超が女性の受取人から
Circana Entertainment Knowledge Groupのclient insights担当バイスプレジデント、Kristen McLean氏は「成長は、あらゆる年齢層にわたるトレーディングカード・コレクティブル・ライセンス商品への熱意によって牽引されている」と述べています。
★当社の読み:伸びの過半は“値上がり”です。金額+13%に対して数量は+5%、平均単価は+7%。つまり「安いものが、たくさん売れるようになった」市場ではありません。単価が立つ商材が伸びている市場です。ここは仕入れの方向を決める分岐点になります。
★主語の注意を2つ。+13%は米国の玩具業界“全体”の数字であって、日本製品の数字ではありません。そして+39%は「ゲーム&パズル」というカテゴリの伸びで、その牽引役がポケモンです。ポケモン単体が+39%伸びた、ではありません。
Circanaの数値は米国の玩具業界全体を対象とした小売実測です。対象期間は「1〜4月(through April)」であり、上半期ではありません。
誰が・どこで買っているか──“大人”と“実店舗”
買い手の像は、たぶんあなたの想像とずれています。18歳以上が業界の成長の35%、成長の50%超が女性の受取人。「子どものおもちゃ」という前提で商品を選ぶと、伸びている層を外します。
買う場所も変わりました。ECの話ではなく、GameStopという実店舗チェーンの棚とレジでこの構成比が動いています。米国の実店舗が、いまポップカルチャー商材の売り場に組み替わっている。しかも同社の「コレクティブル」にはトレカの鑑定・グレーディングの取次まで入っている——実店舗が“鑑定の窓口”にもなっているということです。
そして日本の権利元も動いています。Anime News Networkが2026年6月15日に報じたところでは、Vizの発表として、スタジオジブリ公式グッズを扱う「どんぐり共和国(Donguri Republic)」が米国で初のポップアップストアを開きました。
- 場所:カリフォルニア州トーランスの Del Amo Fashion Center
- 期間:2026年6月23日〜12月31日
- スタジオジブリ作品に着想を得た400点超の限定ギフト・商品
- $100超の購入で限定トートバッグ
権利元が自ら米国に売り場を作る——需要が実在することの、いちばん素直なシグナルです。
「どんぐり共和国」の出典は米国初の“ポップアップストア”である旨を述べています。常設店の有無については言及がありません。
日本の輸出者にとっての意味──棚は開いた。ただし取れるのは“日本版”だけ
ここまでの事実を、当社(WorldShift)の視点で翻訳します。ここから先は解釈です。
①棚は確かに開いています。米国の実店舗とレジがポップカルチャー商材に組み替わり、業界全体の金額も伸びている。これは複数の一次情報が同じ方向を指しています。
②しかし、その数字はあなたの商品の数字ではありません。GameStopの41.8%もCircanaの+13%も、米国市場全体・米国流通の話です。★当社の読み:米国で流通しているポケモンは英語版が主力で、日本語版のトレカはそもそも別の商材です(この点は上記3つの出典が述べているものではなく、当社の市場理解です)。ここを重ねて考えると読み違えます。
★当社の読み:③日本のセラーの取り分が集中するのは「米国で買えないもの」です。日本版・日本限定・国内流通品——米国の棚に並んでいないから、米国の棚が広がっても供給が増えない部分。ここが日本発の取り分です。
④そして市場は“単価が立つもの”を求めています。Circanaの内訳(数量+5%に対し単価+7%)がそう言っています。低単価品を数で押す戦略は、この伸びの本体ではありません。しかも2026年7月24日からは、国際郵便の簡易通関にbondと10桁HTSの月次申告が要るようになります(別記事)。低単価×郵便で数を打つやり方は、市場の側からもコストの側からも押されている——単価が立つ日本版に寄せ、まとめ輸入で通関の固定費を分散する。それが今の形です。
米国で伸びているカテゴリと、日本から送って勝てる商材は同じではありません。重なるのは「米国の需要がある」×「米国では買えない」の交差点だけです。
米国にコレクティブル(トレカ・フィギュア・キャラクター雑貨)を輸出するには:通関・手続きの全体像
順番はこうです。
- HTSを10桁で確定する——玩具・フィギュアはHTS第9503類、ゲーム類は第9504類が起点になりますが、品目ごとに分類は変わるので個別に確認が要ります。税率を原価に算入します。
- 年齢区分を決める——12歳以下向け(児童製品)として売ると、CPSCの第三者試験・CPC(適合証明書)・トラッキングラベルが必要になります。大人コレクター向けに設計・表示すれば重い試験を避けやすくなります(詳細は別記事)。
- CPSCのeFiling(2026年7月8日から義務化)に対応する——対象消費財は通関時に証明データの電子提出が要ります(別記事)。
- ラベル・原産国表示を整える。
- 誰が輸入者(IOR)になるかを決める——Amazonは輸入者になりません(別記事)。
- まとめ輸入(コンソリ)で通関の固定費を分散する(別記事)。
分類の確認から通関書類、まとめ輸入まではSLC(発送代行)、個人・小口の越境発送はallynairで対応できます。
HTSの分類は品目ごとの判断です。第9503類・第9504類は出発点であって、結論ではありません。
この分野は「数字の主語を外さないこと」が、そのまま仕入れの精度になります。(1)GameStopの“コレクティブル”には、アパレル・ガジェットに加えて“トレカの鑑定・グレーディングの取次サービス”まで入っています。米国の実店舗はいま鑑定の窓口にもなっている——ただしそれはサービスであって、日本から送る“モノ”ではありません。日本のセラーが取れるのは未鑑定の日本版カードそのものです。(2)Circanaの内訳は金額+13%に対し数量+5%・単価+7%。伸びの過半は値上がりで、“安いものを数で”の市場ではありません。しかも2026年7月24日からは郵便の簡易通関にbondと10桁HTSの月次申告が要る=低単価×郵便の数打ちは固定費で負けます。単価が立つ日本版・限定版に寄せ、まとめ輸入で通関の固定費を分散するのが合理的です。(3)買い手は子どもではありません——18歳以上が業界成長の35%、成長の50%超が女性の受取人。大人コレクター向けに設計・表示すれば、客層としても正しく、CPSCの児童製品規制の重い試験も避けやすくなります(年齢区分の線引きはガチャポンの記事で詳述しています)。
よくある質問
- コレクティブル:収集を目的に買われる商品の総称。トレカ・フィギュア・キャラクター雑貨など。小売企業ごとに定義の範囲が異なる点に注意。
- ASP(平均単価):average selling price。売上金額÷販売数量。金額の伸びが数量より大きい時は、単価上昇が伸びを押している。
- スーパーカテゴリ:調査会社が用いる大分類。Circanaの「ゲーム&パズル」はトレーディングカードを含む。
- グレーディング(鑑定):トレーディングカードの状態を第三者機関が評価・封入して等級を付けるサービス。
「米国の棚が変わった」と言われても、HTSやCPSCの話が出てきた時点で足が止まりますよね。でも要点は3つだけです——①HTSを10桁で確定する②年齢区分(大人向けか、12歳以下向けか)を決める③誰が輸入者になるかを決める。この3つが決まれば、あとは手順の話になります。分類の確認から通関書類の作成、まとめ輸入までの実務は、当社の発送代行(SLC)がまとめて引き受けます(通関の可否・所要日数・費用は最終的に米国当局の判断によります)。あなたは「米国では買えない日本版」を選ぶことに集中してください。

