
米国、ブラジル原産品に25%の追加関税──7/22発効。判定は『どの国から送るか』ではなく『原産地』、コーヒー・カカオなど除外リストも確定
米国のUSTR(米国通商代表部)は、通商法Section 301にもとづく対ブラジル調査の最終措置として、ブラジル原産のすべての輸入品に25%の追加関税を課す官報告示を公表しました。適用は2026年7月22日 午前0時1分(米国東部時間)以降に米国で輸入申告される貨物から。コーヒーやカカオなど、除外される品目のリストも同時に確定しています。
まず結論から。この関税の判定軸は「どの国から送るか」ではなく「その商品がどこ産か(原産地)」です。つまり、日本から発送しても“ブラジル原産”の商品なら25%がかかり、逆に“日本原産”の商品はこの措置と無関係です。
日本製の商品を日本から送っている大多数のセラーに、直接の影響はありません。確認すべきことは一点だけ——自分の商品ラインナップに、ブラジル原産の完成品が混ざっていないか。この記事では、措置の中身と除外品目、発効直前の注意点を整理します。日本のコーヒー器具輸出の追い風が守られた話も、後半で紹介します。
何が決まったか──調査開始から1年、25%で最終決定
今回の措置は、2025年7月15日に大統領の指示で始まったSection 301調査の結論です。調査対象はデジタル貿易・電子決済サービス、不公正な特恵関税、腐敗防止の執行、知的財産の保護、エタノールの市場アクセス、違法伐採の6分野。USTRは2026年6月1日に「ブラジルの一部の行為は措置可能(actionable)」と判断し、25%の関税を柱とする措置を提案しました。この判断・提案は2026年6月4日公表の官報告示(91 FR 33854)に掲載され、除外候補リストとあわせてパブリックコメントの募集が始まりました。
これに対し書面提出は360件超、7月6〜7日の公聴会では77人が証言。その内容を踏まえ、2026年7月15日に大統領がメモランダム(覚書)で最終指示を出し、「25%・除外リスト付き」で確定しました。提案段階から本決まりまで来た、という段階の話です。
税率の形は「いまの関税への上乗せ」です。通常の関税(HTSの各品目の税率)にプラス25%。アンチダンピング税・相殺関税(AD/CVD)など他の追加負担がある品目は、それらとも併課されます。
適用の基準日は「船積み日」ではなく「米国で輸入申告(entry)される日」です。ここは次のセクションの経過措置とセットで押さえてください。
日本のセラーに関係あるのか──判定は『どこから送るか』ではなく『原産地』
今回の25%がかかるのは「products of Brazil(ブラジル原産品)」です。“ブラジルから発送された貨物”ではありません。米国の通関では、商品ごとに原産地(country of origin=その商品が実質的に作られた国)を申告します。追加関税はこの原産地で判定されるので、日本の倉庫から発送しても、商品自体がブラジル製なら25%の対象です。
逆もまた然りで、日本原産の商品はこの措置の対象外。日本製の食器・文具・ホビー・化粧品などを送っている読者のみなさんの主力商品には、今回の関税は一切かかりません。
気をつけたいのは「日本で仕入れた=日本原産」ではないことです。たとえばブラジル原産の完成品(雑貨・サンダル・食品など)を日本の問屋で仕入れて米国へ転送しても、原産地はブラジルのまま。日本を経由しただけでは変わりません。原産地が変わるのは、日本での加工により「実質的変更(substantial transformation)」=名称・特性・用途が別の物品になったと認められる場合だけで、小分け・再包装・ラベル貼り・詰め合わせでは変わらないのが原則です(詳しくは原産地規則『実質的変更』の解説)。
確認のしかたは簡単です。商品パッケージや仕入明細の原産国表示(Made in Brazil)を見る、表示が曖昧なら仕入先に原産国を問い合わせる——この2つで足ります。
| ケース | 今回の25% |
|---|---|
| 日本原産の商品を日本から発送 | 対象外(この措置と無関係) |
| ブラジル原産の完成品を日本で仕入れて米国へ転送 | 対象(原産地はブラジルのまま) |
| ブラジル産の原料を日本で加工し、別の物品になった製品 | 「実質的変更」が認められれば日本原産=対象外(判定は品目ごと) |
| ブラジルから米国へ直送 | 対象(除外品目を除く) |
インボイスの原産国欄(country of origin)は、この判定をそのまま書く欄です。「日本から送るからJapan」ではありません。
除外品目──コーヒーは生豆も焙煎豆もインスタントも対象外
官報告示のAnnex(付属書)には、25%から除外される品目のリストが確定版として載りました。USTRは除外の理由を4つの類型で説明しています——(a)課税すると国内供給が途絶しかねない原材料、(b)経済全体の混乱を招きかねない品目、(c)米国内で十分な量・妥当な価格で生産できない品目、(d)課税してもブラジルの行為の是正に実質的に寄与しない品目。
目玉はコーヒーです。米国はコーヒー消費の多くを輸入に頼り、ブラジルは最大級の供給国。除外リストには生豆・焙煎豆(カフェインレス含む)から、インスタントコーヒー・コーヒーエキス・コーヒーベースの調製品までが入りました。紅茶・緑茶・マテ茶、カカオ(豆からココアパウダーまで)、香辛料、ブラジルナッツ・カシューナッツ、有機はちみつ、オレンジジュース、アサイーといった食品・農産品も広く除外されています。
日本のセラー目線でひとつ良い知らせを添えると、米国のコーヒー文化のコストが跳ね上がる事態は回避されたということです。米国の専門コーヒー市場で日本のドリッパーやケトルが標準になっている流れ(Hario・Kalitaが米国で標準になっている話)は、この措置で冷や水を浴びずに済みました。日本のコーヒー器具輸出の追い風は変わりません。
| 分野 | 除外の主な例(Annexより) |
|---|---|
| 食品・農産品 | コーヒー(生豆・焙煎豆・インスタント・エキス類)/紅茶・緑茶・マテ茶/カカオ(豆〜ココアパウダー)/香辛料/ブラジルナッツ・カシューナッツ/有機はちみつ/オレンジジュース/アサイー/牛肉/一部の水産物 |
| 医薬・化学 | 医薬品・医薬品原料(完成薬〜有効成分)/ビタミン類/肥料/天然ゴム |
| 資源・素材 | 鉄鉱石・銑鉄・鉄スクラップ/銅・ニッケル・亜鉛・すず等の非鉄金属/金などの貴金属/木材・パルプ |
| ハイテク・輸送 | 半導体・コンピュータ関連/民間航空機とその部品 |
| その他 | 美術品・骨董品/古着/情報資料(書籍・映画・CD等)/人道支援の寄付物資/入国者の携帯手荷物(個人使用) |
| 制度上の除外 | Section 232の対象品(鉄鋼・アルミ・銅・自動車・木材製品・半導体など)=重複課税の回避 |
除外はHTS番号(米国の関税分類番号)単位で定義されています。「品目名の印象」ではなく、自分の商品のHTS番号と官報のAnnexの突合で最終判定してください。
発効直前チェック──経過措置と『重ねがけ』
いま太平洋上にある貨物のために、経過措置が置かれています。①7月22日 午前0時1分(米国東部時間)より前に積み込みが済んでいて、最終輸送手段で輸送中であり、かつ②7月29日 午前0時1分(米国東部時間)より前に米国で輸入申告される貨物は、25%の対象外です。両方を満たす必要があるので、「船積みは済んでいるが、通関が7/29に間に合わない」貨物は対象になります。
もうひとつは「重ねがけ」です。今回の25%は既存の関税の置き換えではなく上乗せで、通常の関税・AD/CVD・他の追加関税と合算されます(合算の考え方は関税の『重ねがけ』の解説)。また、$800以下の免税(デミニミス)は2025年8月29日からすでに全世界で停止しているため、小口の貨物でも課税は免れません。
なお、Section 301自体は対中関税で長く使われてきた枠組みです(対中Section 301の解説)。米国の追加関税は「国×品目×制度」の組み合わせで動くので、自分の商品の原産地とHTS番号を確定させておくことが、すべての出発点になります(HTS番号の調べ方はこちらの解説)。
日本原産の商品しか扱っていない場合、このセクションの実務対応は不要です。ブラジル原産品を扱う場合のみ、通関のタイミングと申告コードを通関業者と確認してください。
インボイスの原産国欄を「発送国」で書いていないか、この機会に一度見直してください。原産地は「どこから送るか」ではなく「どこで実質的に作られたか」で決まり、日本で仕入れたブラジル原産品にMade in Japanと書くと、追加関税の回避と見なされ虚偽申告の火種になります。混載(複数商品を1件で送る)の場合も、25%がかかるのはブラジル原産の行だけ——インボイスの行単位で原産地が正しく書かれていれば、日本製の商品まで巻き添えになることはありません。逆に原産地が曖昧だと、貨物全体が検査・保留の対象になり得ます。
よくある質問
- Section 301(通商法301条):米国が「不公正な貿易慣行」と判断した国に対し、調査を経て追加関税などの措置を取れる通商法の条項。対中関税で広く使われてきた枠組みで、今回ブラジルの全輸入品に適用された。
- products of Brazil(ブラジル原産品):今回の25%の対象。ブラジルが原産地の商品を指し、どの国から発送されるかは問わない。
- entered for consumption(消費のための輸入申告):米国で商品を国内流通させるための正式な輸入申告。追加関税の適用はこの申告日を基準に判定される。
- 経過措置(in-transit exception):発効前に積み込みが済み輸送中の貨物を、期限内の輸入申告を条件に新関税の対象外とする救済措置。今回は7/29 午前0時1分(米国東部時間)が期限。
繰り返しになりますが、日本原産の商品を送っている限り、今回の25%は一切かかりません。確認すべきは「仕入れ商品にブラジル原産の完成品が混ざっていないか」の一点だけです。判定に迷う品目の整理、インボイスの原産国記載、通関のタイミングの相談は、当社(WorldShift)の発送代行(SLC)がサポートします(最終的な原産地の認定・関税の賦課はCBP(米国税関・国境警備局)など米国当局の判断によります)。あなたは「米国で売れる日本製を選んで、出品すること」に集中してください。

