中古レコードは米国輸出の商機──アナログは年10.4億ドル・19年連続成長、日本盤が探されている
市場トレンド

中古レコードは米国輸出の商機──アナログは年10.4億ドル・19年連続成長、日本盤が探されている

2026年8月29日 | 出典:RIAA 2025 Year-End Music Industry Revenue Report/CITY POP on VINYL 公式サイト(主催:東洋化成株式会社)を当社(WorldShift)が整理(市場トレンド)

アメリカのレコード愛好家の間で、「日本盤」を探す動きが語られている。帯(OBI)が付いた国内プレスは、海外の再発盤とは別物として扱われるからだ。

ここが日本の輸出者に効いてくる。その在庫は、いま日本国内にある。

土台も縮んでいない。RIAA(全米レコード協会)の2025年集計で、米国のアナログレコードの売上は約10.4億ドル(前年比+9.3%/1ドル≒160円で約1,664億円)、出荷は4,680万枚19年連続の成長で、枚数ではCD(2,950万枚)の約1.6倍が売れている。

そして製品規制の壁が薄い。食品でも化粧品でも電気製品でもないので、FDAもFCCも関わらない。代わりに見るものが、たった一つだけある——その盤が正規盤かどうかだ。

TOPIC
約10.4億ドル
米国のアナログレコード売上(2025年・前年比+9.3%)
+9.3%
TOPIC
4,680万枚
米国のアナログ出荷枚数(2024年は4,340万枚)
+340万枚
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19年連続
米国のアナログ売上が伸び続けている年数
TOPIC
CDの約1.6倍
2025年・米国出荷の比較(アナログ4,680万枚 対 CD2,950万枚)

なぜいま、米国でレコードが売れているのか

配信でいくらでも聴ける時代に、わざわざ現物を買う理由は「所有」と「見せる」に寄っていると言われます。ジャケットを飾る、盤を並べる、針を落とす手間ごと楽しむ——レコードは音を聴く道具であると同時に、持ち物として選ばれている。だから配信が伸びても食い合いにならず、伸び続けています(同じ「アナログ回帰」でも、撮る体験に価値がある米国で再燃した中古カメラ需要とは動機が違います)。

数字で見ます。RIAAの2025年の年間集計では、米国のアナログレコードの売上は約10.4億ドル(前年比+9.3%)、出荷枚数は4,680万枚でした(2024年は約9.5億ドル・4,340万枚)。19年連続で伸びている計算になります。同じ2025年のCDの出荷は2,950万枚で、アナログはその約1.6倍。「現物で音楽を買う人」の主役は、いまアナログ盤のほうです。

ただし、この数字の読み方には注意が要ります。RIAAの集計はレーベルが出荷する新品の売上で、中古盤の二次流通は含まれていません。この記事が扱う日本盤の多くは中古なので、上の数字は「現物を買う人が米国にこれだけいる」という土台の話として読んでください。中古はその上に乗っている別の市場です。

なお、米国のオーディオ機器側の動き(ターンテーブル・カートリッジ)は米国のレコード復活と日本のオーディオ機器(ターンテーブル・カートリッジ)で扱っています。本記事は再生する機械ではなく、かけるレコードそのものを商材として見ます。

アナログレコード2025年・米国出荷
4,680万枚
CD2025年・米国出荷
2,950万枚

金額・枚数はRIAAの2025年年間集計(新品の出荷ベース)。中古の二次流通は含みません。円換算は1ドル≒160円。

なぜ「日本盤」が探されるのか──帯(OBI)とシティポップ

理由として挙げられるのは主に3つです。①帯(OBI)——日本盤だけに付く紙の帯で、有無で扱いが変わる収集上の要素になっています。②国内プレスの評価——1970〜80年代の日本国内プレスは、盤質の評価が高いものとして中古市場で扱われてきました。③そもそも日本にしか無い盤がある——日本先行・日本限定で出た作品は、海外では正規に流通していません。

需要の中心にあるのがシティポップです。1970〜80年代の日本のポップスが海外で再評価され、いまは当時の盤を探す動きと、新しくアナログ化する動きが同時に起きています。後者の代表が「CITY POP on VINYL」で、2026年は7月18日に実施されました(主催=東洋化成株式会社。日本のシティポップをアナログ盤でレコードショップに一斉に並べる企画)。ここで出た盤が、いまちょうど市場に出回っている時期です。

★仕入れで必ず区別してください。1970〜80年代のオリジナル盤と、近年の再発・リイシュー盤別物で、値付けも扱いも変わります。オリジナル盤は当時プレスされた分しかありませんが、再発盤は今も新しく作られています。再発盤をオリジナルの相場で仕入れると、その時点で損が確定します。

帯(OBI):日本盤に付く細長い紙の帯。海外の愛好家は有無を重視する。
シティポップ:1970〜80年代の日本のポップス。海外で再評価が続いている。
Discogs:世界最大級のレコードのデータベース兼マーケットプレイス。

日本盤が選ばれる理由の整理は市場で一般に語られているもので、数値化された調査ではありません。

誰が・どこで・いくらで買うか──Discogs・eBay・米国Amazon(FBA)で要件が変わる

買い手は、大きく3層に分かれると言われます。①シティポップから入った新しい層——動画・SNS経由で1970〜80年代の日本のポップスを知り、その盤を現物で欲しくなった層。②以前からのコレクター——盤質と国内プレスにこだわる層。③米国内のリセラー——日本から仕入れて再販する業者です。

販路は2本立てで考えてください。性質がまったく違います。

  • 中古の一点物 → Discogs/eBay が主戦場。1枚ずつ状態が違うので、1点ごとに出品して1点ごとに送る形になります。この売り方の発送はAllynair(国際発送代行)の領域です
  • 新品・再発盤をまとめて回す → 米国Amazon(FBA)。ただしAmazonのMusicカテゴリは出品許可が要ります。許可にはレコード会社または正規卸からの卸売の請求書が必要で、個人購入や中古購入のレシートでは通りません(レーベル単位の承認を求められる場合もあります)。つまり中古盤を1枚ずつ仕入れる売り方では、そもそもFBAに乗せられません。まとまった数の新品を扱うならこちらで、発送実務はSLC(発送代行)が引き受けます

値段はどう調べるか。ここがこの商材のいいところで、相場が公開されています。Discogsは盤ごとのページにその盤が実際にいくらで売れたかの履歴を持っています。仕入れ前にこれを見れば、相場の見当が付きます(表示される項目や公開範囲は変わることがあるので、実際の画面でご確認ください)。★注意点は、同じタイトルでも「帯あり」と「帯なし」、そして盤とジャケットの状態(グレード)で値が分かれること。必ず条件を揃えて相場を見てください。「なんとなく高そう」で仕入れると外します。

競合は、もう居ます。ディスクユニオンのような老舗の中古店は以前から海外向けに販売していますし、Discogsには長く評価を積んだ日本のセラーが多数います。「日本にいるだけで勝てる」商材ではありません。差がつくのは、英語での状態表記の正確さ・梱包・発送の速さ——つまり後述の実務の質のほうです。

価格帯は盤・年代・グレード・帯の有無で大きく変わるため、この記事では具体的な金額を示しません。個別の相場はDiscogsの実売履歴でご確認ください。

ここだけは必ず見る──「正規盤かどうか」

レコードは製品規制の壁が薄い商材です。食品ではないのでFDAの手続きは不要、電気製品ではないのでFCCも電圧も関係ありません。リチウム電池も入らないので危険物にもなりません。ですが「確認することが何も無い」わけではありません。この商材で見るべきものは、製品規制ではなく権利のほうです。

まず良い知らせから。正規に製造された盤なら、日本で買った中古盤を米国で売ることは適法です。米国にはファーストセール(消尽)の考え方があり(17 U.S.C. §109(a))、海外で作られた正規品にもこれが及ぶことがKirtsaeng v. John Wiley & Sons 判決(2013年)で確定しています。「中古の転売って大丈夫なのか」という不安は、ここで解けます。

次に注意点。海賊盤・ブートレグ・無許諾の私的録音物は、この対象外です。日本の中古市場には非正規盤が混じることがあります。それと知りながら業として輸出すると、日本では著作権法113条1項2号のみなし侵害にあたり、関税法69条の2第1項3号の「輸出してはならない貨物」になります。米国側でも税関の差止め・販路のアカウント停止につながります。

見分け方は難しくありません。仕入れの段階でレーベル名・規格番号・製造元/発売元の表示があるかを確認してください。これらが無い盤、あるいは正規盤に無いはずの選曲・音源が入っている盤は避けます。判断に迷う盤は、そもそも仕入れないのが安全です。

逆に言えば、ここさえ押さえれば残りは通常の輸出実務です。見るべきものが1つに絞られているのは、この商材の強みのほうです。

ファーストセール(消尽):正規に売られた複製物は、その後の転売を権利者が止められないという考え方。17 U.S.C. §109(a)。
海賊盤(ブートレグ):権利者の許諾なく製造された盤。正規盤と違い、転売・輸出の対象にできない。

ここに書いた条文・判例は制度の紹介です。個別の盤が正規盤かどうかの判定は当社では行いません。判断に迷う場合は専門家にご確認ください。

米国にレコードを輸出するには:通関・手続きの全体像

  1. HTSコードを決める。レコード盤は8523.80.10.00「Phonograph records」が基本です(ジャケットのみを別送する場合は 4819.50.30.00「Record sleeves」)。自社の品目で確定させる手順はHTSコードの調べ方にあります
  2. 関税を確かめる——ここはレコード特有の論点があります。まず通常関税(MFN)は無税(Free)です(USITCのHTSで 8523.80.10.00「Phonograph records」=Free。ジャケット単体の 4819.50.30.00「Record sleeves」も Free)。そのうえで追加関税の扱いに注意してください。HTSには「情報資料(informational materials)」の除外項があり、そこにphonograph records が名指しで挙げられています(9903.01.31 ほか。適用される場合は「その品目本来の税率のみ」という書き方です)。一方で日本原産品には現在、合計12.5%になるよう足りない分を上乗せするSection 301の方式があります(→現行のSection 301の解説)。この除外が自分の貨物に及ぶかどうかで原価が大きく変わります。「無税だから何も乗らない」とも「必ず12.5%乗る」とも決め打ちせず、通関前に最新のHTSと通関業者に確認してください
  3. 申告価額を根拠づける。中古品でも申告価額は必要です。Discogsに同じ盤・同じグレードの実売価格が残っているので、それを根拠にした評価が使えます。帯の有無で相場が変わる点に注意し、根拠にした価格は記録に残しておいてください
  4. 通関手数料を見込む。正式通関ではMPFが1申告ごとにかかります(2026年10月1日から下限$34.58・上限$670.86。→MPFの2026年10/1改定の詳細
  5. 州の表示を確認する。レコードは塩化ビニル製品なので、カリフォルニア州で売る場合はProp 65の警告表示の要否を確認します

最初の1箱は、こう組むのが堅いです。まずDiscogsで実売履歴が確認できる盤だけを選ぶこと——相場が読めない盤は、値付けも申告価額の根拠づくりも詰まります。次に「回転する定番盤」と「1枚で単価が立つ盤」を混ぜること。定番盤だけだと利益が薄く、希少盤だけだと売れるまでの期間が読めません。枚数は箱に立てて入り、かつ申告額を把握できる範囲から始めてください。

MPF:通関手数料。正式通関で申告額の0.3464%。2026/10/1から下限$34.58・上限$670.86。
第8523項:録音済みの媒体を含むHTSの項。レコード盤はここで分類を詰める。
💡 実務のワンポイント

レコードで返品と評価下げを招くのは、ほぼ「状態の書き方」と「梱包」の2つです。状態は、Mint/Near Mint/Very Good Plus といった英語の等級表記(グレーディング)で、盤とジャケットを分けて書いてください。日本語の「美品」「並」をそのまま訳すと、相手の期待値と必ずずれます。帯の有無・インサートの有無も1行で明記を。梱包は、レコードが平積みの圧力と熱で反ることを前提に組みます。専用の段ボール(レコードメーラー)に入れ、ジャケットと盤は別々にして角を保護し、平置きではなく立てた状態で固定するのが基本です。そしてもう一点——帯は、盤とは別に薄紙かスリーブで保護してください。帯の折れは、盤が無傷でも評価を落とす原因になります。

よくある質問

米国のレコード市場はどのくらいの規模ですか?
RIAAの2025年集計で、売上は約10.4億ドル(前年比+9.3%・1ドル≒160円で約1,664億円)、出荷は4,680万枚です。19年連続で伸びており、枚数ではCD(2,950万枚)の約1.6倍が売れています。ただしこれはレーベルが出荷する新品の数字で、中古の二次流通は含みません。
中古のレコードでも輸出できますか?
正規に製造された盤であれば、中古でも輸出・転売できます。米国のファーストセール(消尽・17 U.S.C. §109(a))は海外で作られた正規品にも及ぶことがKirtsaeng判決で確定しています。ただし2点。①海賊盤・無許諾の私的録音物は対象外で、それと知りながら業として輸出すると著作権法113条1項2号のみなし侵害・関税法69条の2第1項3号の輸出禁止貨物になります。②販路によって中古品の取り扱い可否と状態表示の決まりが違います。
米国Amazonで売れますか?
AmazonのMusicカテゴリは出品許可が必要です。許可にはレコード会社または正規卸からの卸売請求書が要り、個人購入や中古購入のレシートでは通りません。そのため、中古盤を1枚ずつ仕入れる売り方ではFBAに乗せられないのが実情です。中古の一点物はDiscogsやeBayが主戦場になります。
レコードに米国の関税はかかりますか?
通常関税(MFN)は無税です。USITCのHTSで 8523.80.10.00「Phonograph records」が Free と定められています。ただし追加関税の扱いは別で、HTSには「情報資料(informational materials)」の除外項があり phonograph records が名指しで挙げられている一方、日本原産品には合計12.5%になるよう調整するSection 301の方式もあります。どちらが自分の貨物に及ぶかで原価が変わるため、通関前に最新のHTSと通関業者にご確認ください。
FDAやCPSCの手続きは要りますか?
一般の音楽レコードは食品でも化粧品でも電気製品でもないため、FDA・FCCの手続きは通常発生しません。リチウム電池も入らないので危険物にもなりません。なお子供向けとして企画・販売された盤に当たるかどうかでCPSCの扱いは変わります。対象に当たるかどうかの判定は当社では行いませんので、試験機関・専門家にご確認ください。カリフォルニア州で売る場合はProp 65の表示の要否もご確認ください。
シティポップとは何ですか?
1970〜80年代の日本のポップスを指す呼び方です。海外で再評価が続き、当時の日本盤アナログを探す動きと、新たにアナログ化する動きが同時に起きています。
レコードのグレーディングとは何ですか?
中古盤の状態を表す英語の等級表記です。Mint/Near Mint/Very Good Plus などがあり、盤とジャケットを分けて記載します。日本語の「美品」「並」をそのまま訳すと相手の期待値とずれます。
値段はどうやって調べますか?
Discogsの各盤のページに、その盤が実際にいくらで売れたかの履歴があります。仕入れ前にこれを見れば相場の見当が付きます。同じタイトルでも帯の有無と盤・ジャケットのグレードで値が分かれるため、条件を揃えて見てください。
📘 用語ミニ解説
  • アナログレコード:塩化ビニル製の音楽媒体。米国では19年連続で売上が伸びている。
  • 帯(OBI):日本盤に付く紙の帯。海外の愛好家は有無を重視する。
  • グレーディング:中古盤の状態を表す等級表記。Mint/Near Mint/Very Good Plus など。
  • RIAA:全米レコード協会。米国の音楽市場の年間集計を公表している。
🤝 むずかしく見えても、ここは任せられます

この商材は、米国側の製品規制がほとんどかかりません。食品でも化粧品でも電気製品でもないので、FDAもFCCも関わらず、危険物にもなりません。やることは正規盤かどうかの確認・分類・書類・梱包に絞られ、しかも肝心の在庫は日本国内にあります。値段もDiscogsの実売履歴で事前に調べられます。まずは相場の読める盤を数枚、1箱にまとめるところから試せる商材です。

市場の数値はRIAAの2025年年間集計(レーベル出荷ベースの新品。中古の二次流通は含みません)。円換算は1ドル≒160円。日本盤が選ばれる理由の整理は市場で一般に語られているもので、数値化された調査ではありません。条文・判例は制度の紹介であり、個別の盤の判定ではありません。関税率・分類・販路ごとの規約は変わるため、最新の公式情報をご確認ください。HTSの税率は2026年8月時点でUSITCのHTS検索により確認したものです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。金額のうち当社試算と明記した箇所は概算で、個別の通関・税務判断を保証するものではありません。正確な税率・分類は各製品のHTSコードと最新の公式情報をご確認ください。