米国の追加関税は7/24から新制度へ──日本原産品は『通常関税と合計して12.5%』。通常関税が高い品目はむしろ負担減、原産地で計算方式そのものが変わる
⚡速報関税アラート

米国の追加関税は7/24から新制度へ──日本原産品は『通常関税と合計して12.5%』。通常関税が高い品目はむしろ負担減、原産地で計算方式そのものが変わる

2026年7月31日 | 出典:USTR官報告示(Section 301 強制労働 最終措置)/JETRO(2026年7月)ほか+当社(WorldShift)整理(関税)

2026年7月24日 午前0時1分(米国東部時間)、米国の追加関税の法的な根拠が通商法Section 301(強制労働)に切り替わりました。対象は60の国・地域で、JETROによれば米国の輸入額の約99.4%をカバーします。直前まで適用されていたSection 122の一律10%上乗せは同日で失効しています。

まず、多くの方の予想と逆になる結論からお伝えします。日本の輸出者にとって、この切り替えは「値上がり」とは限りません。むしろ通常関税(MFN)が高めの品目では、7月24日を境に負担が下がっています

理由は計算方式にあります。日本原産品は「通常関税と追加関税を合計して12.5%になるように調整する」方式(合算調整)で、単純な上乗せではありません。直前のSection 122は「通常関税に一律10%を上乗せ」でしたから、たとえば通常関税7%の品目は17% → 12.5%に下がった計算になります。一方、通常関税0%の品目は10% → 12.5%で上がりました。品目によって上下が分かれたのが、今回の切り替えの実像です。

そしてもう一つ。今回の制度では原産地によって計算方式そのものが違います。60の国・地域は4つに分けられ、日本は合算調整で12.5%、中国やベトナムなどは通常関税に12.5%を単純に上乗せです。同じ商品でも、どこ産かで着地が変わります。この記事では、日本原産品の計算方式・4分類・対象外になるもの・そして「これだけは単一の数字で覚えてはいけない」理由を整理します。

TOPIC
合計12.5%
日本原産品:通常関税と合算して調整(上乗せではない)
7/24〜
TOPIC
2026/7/24
米国東部時間 午前0時1分以降の輸入申告分から
発効
TOPIC
60の国・地域
対象(JETROによれば米国の輸入額の約99.4%)
TOPIC
4分類
国ごとに税率と計算方式が異なる

何が変わったか──IEEPA失効 → つなぎの122条 → 恒久的な301条へ

今回の切り替えは、単独で降ってきた措置ではありません。2026年2月の最高裁判決でIEEPA(国際緊急経済権限法)にもとづく関税が失効したことが起点です。その穴を埋めるつなぎとして、通商法Section 122による一律10%の上乗せが入りました。ただし122条は150日という期限つきの規定で、その期限が7月24日でした。

そこで、期限のない恒久的な根拠として選ばれたのがSection 301です。今回の301条調査の理由は「強制労働で作られた産品の輸入を禁じる措置が不十分」というもので、USTR(米国通商代表部)は54の国・地域について「禁止措置を導入しておらず、実効的に執行してもいない」6(カナダ・エクアドル・EU・インドネシア・メキシコ・パキスタン)については「執行が実効的でない」とだけ認定しました。この認定の重さの違いが、後述する税率の差につながっています。

実務上の含意は「もう当分は変わらない前提で採算を組み直してよい」ということです。IEEPA→122条→301条と半年で3回変わったため、価格や仕入れの判断を保留していた方も多いはずですが、期限つきのつなぎは終わりました

2026/2
最高裁判決でIEEPAにもとづく関税が失効
2026年前半
つなぎとしてSection 122の一律10%上乗せ(150日の期限つき)
2026/6/2
USTRがSection 301(強制労働)で10%・12.5%の措置を提案
2026/7/7〜9
公聴会
2026/7/24
Section 301の最終措置が発効(午前0時1分・米国東部時間)/同日、122条は失効
2026/7/28
経過措置の期限(7/24前に積載済みの貨物は、この日までの輸入申告なら対象外)※終了済み

経過措置は「7月24日午前0時1分(米国東部時間)より前に船に積載され、かつ7月28日午前0時1分までに輸入申告された貨物」が対象でした。すでに期限を過ぎています。

日本原産品の計算方式──「上乗せ」ではなく「合計で12.5%」

日本・韓国・スイスの3か国はnet of MFN(合算調整)という扱いです。言葉は難しいですが、中身は単純です。

  • 通常関税(MFN)が12.5%未満の品目 → 通常関税+Section 301 の合計がちょうど12.5%になるよう、足りない分だけSection 301が乗る
  • 通常関税が12.5%以上の品目 → Section 301はゼロ。通常関税のまま

ここが直前の制度との決定的な違いです。Section 122は「通常関税+10%」の単純な上乗せでしたから、通常関税が高い品目ほど負担が重くなっていました。今回は12.5%が天井になるため、通常関税が2.5%を超える品目は7月24日を境に下がったことになります。

下の表は、通常関税の水準ごとに7月23日までと7月24日以降を並べたものです。衣類・履物・革製品のように通常関税が高い分野ほど、下げ幅が大きくなります。

通常関税(MFN)〜7/23(122条)7/24〜(301条)
0%10%12.5%(+2.5pt 増)
2.5%12.5%12.5%(±0)
5%15%12.5%(−2.5pt 減)
10%20%12.5%(−7.5pt 減)
15%25%15%(301はゼロ・−10pt 減)
MFN(最恵国税率):米国が通常適用する関税率。品目ごとにHTS(関税分類表)で定められている。多くの雑貨・機械・玩具・プラスチック製品は0%だが、衣類・履物・革製品は高い。
net of MFN(合算調整):通常関税と追加関税の合計が決められた率になるように、追加関税の側を調整する方式。日本・韓国・スイスは12.5%、EU・台湾は10%がこの方式。

★この記事でいちばん大事な注意点:税率は品目名では出せません。10桁のHTSコード単位でしか判定できず、「日本は12.5%」と単一の数字で覚えるのは誤りです。次のセクションの対象外品目に当たれば、答えはまったく変わります。

60の国・地域は4つに分かれる──原産地で計算方式そのものが変わる

今回の措置は全対象国が同じ扱いではありません。USTRの認定内容に応じて、税率(10%か12.5%か)計算方式(単純な上乗せか、合算調整か)の2軸で4つに分かれています。

日本の輸出者にとっての意味は明確です。日本は最も有利な側の分類に入っています。同じ通常関税の商品で比べると、中国産は日本産より確実に高く着地します。しかも中国産には従来からの対中Section 301やAD/CVD(アンチダンピング税・相殺関税)がこれとは別枠で乗るため、実際の差はさらに開きます。

ここから導かれる実務的な帰結は、「どこから送るか」ではなく「どこ産か」を正確に押さえることの価値が上がったということです。米国の原産地は発送元の国ではなく、その商品が実質的にどこで作られたかで決まります。海外で製造した商品を日本の倉庫経由で送っても、原産地は製造国のままです(詳しくは原産地規則『実質的変更』の解説、および米国税関が原産地の裏取りを本格化させた件)。

分類主な国・地域税率と計算方式
合算調整 12.5%日本・韓国・スイス通常関税と合計して12.5%(通常関税が12.5%以上なら追加ゼロ)
合算調整 10%EU・台湾通常関税と合計して10%
一律 10%英国・インド・メキシコ・カナダなど17通常関税に10%を上乗せ
一律 12.5%中国・ブラジル・ベトナム・ロシアなど38通常関税に12.5%を上乗せ(+従来の対中301・AD/CVDは別枠)

たとえば通常関税10%の品目なら、日本原産は合計12.5%、中国原産は10%+12.5%=22.5%に従来の対中措置が加わります。原産地の差がそのまま原価の差になります。

対象外になるもの──ここを見落とすと税率を間違える

今回のSection 301は「すべての輸入品に一律」ではありません。次のものは対象外です。ご自身の商品が当てはまるかどうかで答えが変わります。

  • Section 232の対象品目——鉄鋼・アルミ・銅とその派生品、自動車・自動車部品、木材・製材とその派生品など。232条の税率がそのまま適用され、今回の301条は乗りません
  • USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)で無税で輸入されるカナダ産・メキシコ産
  • ヨルダン、およびCAFTA-DR諸国(コスタリカ・ドミニカ共和国・エルサルバドル・グアテマラ・ホンジュラス・ニカラグア)の一部の繊維・アパレル
  • 官報告示のAnnex IIに掲載された品目——医薬品・医療機器、半導体と製造装置、航空機・部品、重要鉱物、原油・LNG、コーヒー・ココアなど。免除に関係するHTSコードは2,120にのぼり、うち863が直接の免除1,657は民間航空機用・医薬用途などの条件つきです
  • 国別のカーブアウト(EU・マレーシア・インドネシアなど、Annex IIのPart B以降)

念のため確認です。Section 232の対象品目には、今回の301条そのものが適用されません(上に挙げたとおり免除側で、232の税率だけがかかります)。一方で、AD/CVD(アンチダンピング税・相殺関税)や従来からの対中Section 301は別枠です。12.5%という数字は「通常関税+今回の301条」の合計に対する天井にすぎず、これらが乗る品目では合計はもっと高くなります(AD/CVDについてはこちらの解説をご覧ください)。

免除リストがHTSコードで指定されている以上、「うちはコーヒー器具だから免除」といった品目名レベルの判断は成立しません。免除されているのはコーヒー生豆であって器具ではない、といった食い違いが普通に起こります。

繊維・アパレルについては、バングラデシュ・カンボジア・インドネシア・マレーシアの特定品目に、米国産原料の購入を条件とする3年間の関税割当が設けられています。

要件はシンプル。難所は2つ

結局のところ、必要なことは2つに集約されます。①自分の商品の10桁HTSコードを確定させる ②原産地を実態どおりに押さえる。この2つが決まれば、税率は機械的に出ます。

難所①:10桁HTSの確定。税率も免除リストもHTSコードで指定されているため、品目名からは答えが出ません。しかも同じ6桁の下で税率が割れることがあり(たとえば綿の混紡率で税率が変わる衣類のように)、上位の分類まで正しく辿らないと意味が取れない明細行も多くあります。「だいたいこの辺」で決めると、通常関税が12.5%以上かどうかの判定を誤り、採算の見立てが実際とずれます。

難所②:原産地。計算方式そのものが原産地で変わるようになった以上、ここを取り違えると税率が丸ごと違ってきます。しかも米国税関は原産地の裏取りを強めており、海外の製造現場まで調査官を送る執行が実際に行われています(EAPAで過去最大10億ドル超を認定した件)。

当社(WorldShift)は発送代行の中で、HTSコードの分類・確定、原産国表示・原産地の整理、CROSS(CBPの裁定データベース)での類似裁定の調査、インボイスの作成・品名の最適化を行っています。税関から追加の情報・資料を求められたときの必要書類のご案内と提出のサポートも含みます。

なお、事前教示(binding ruling)の申請の代行は当社では承っておりません。この制度は輸入者・輸出者など直接かつ立証可能な利害を持つ者、またはその授権代理人がCBPに申請できるもので(19 CFR 177.1(c))、日本の輸出者ご自身で申請いただけます。分類が割れやすい品目で確実性を取りにいく手段として、選択肢に入る制度です。

税率・制度は変更されることがあります。判断の前には必ず最新の官報告示・JETRO等の一次情報でご確認ください。

💡 実務のワンポイント

採算を組み直すときは、通常関税(MFN)が12.5%以上かどうかだけを先に確認してください。12.5%以上ならSection 301はゼロで、7月24日の切り替えの影響を受けません(ちょうど12.5%の品目もゼロ側です)。実は多くの雑貨・機械・玩具・プラスチック製品は通常関税0%なので、「一律12.5%」で見積もってもほぼずれません。逆に、衣類・履物・革製品を扱っている場合は品目ごとに確認する価値があります。ここは下げ幅が大きく、7月23日までの数字で値付けを据え置くと利益を取り逃がします。

よくある質問

結局、日本から送る商品の追加関税は何%になりますか?
品目によって変わるため、単一の数字ではお答えできません。日本原産品は「通常関税(MFN)と合計して12.5%」になるよう調整されるので、通常関税が12.5%未満なら合計12.5%、12.5%以上ならSection 301はゼロで通常関税のままです。ただしSection 232の対象品目や官報告示のAnnex IIに載っている品目は対象外で、AD/CVDがある品目は別枠で上乗せされます。判定は10桁のHTSコード単位です。
7月24日の切り替えで、負担は増えたのですか、減ったのですか?
品目によって分かれました。直前のSection 122は「通常関税に一律10%を上乗せ」でしたが、今回は「合計で12.5%」が上限になります。そのため通常関税0%の品目は10%から12.5%へ増、2.5%の品目は変わらず、5%以上の品目は下がりました。衣類・履物・革製品のように通常関税が高い分野ほど、下げ幅は大きくなります。
日本で仕入れた商品なら、日本原産として12.5%の計算になりますか?
なりません。米国の原産地は仕入先の国や発送元の国ではなく、その商品が実質的にどこで作られたかで決まります。海外で製造した商品を日本の問屋で仕入れて送っても、原産地は製造国のままです。中国原産と判定されれば、通常関税に12.5%を上乗せする方式になり、従来の対中Section 301やAD/CVDも別枠で加わります。
経過措置は使えますか?
すでに終了しています。7月24日午前0時1分(米国東部時間)より前に船へ積載され、かつ7月28日午前0時1分までに輸入申告された貨物が対象でした。現在出荷する貨物は、通常どおり新制度で計算されます。
📘 用語ミニ解説
  • Section 301(通商法301条):外国の不公正な貿易慣行に対して米国が一方的に措置を取れる根拠規定。今回は「強制労働で作られた産品の輸入を禁じる措置が不十分」であることを理由としている。
  • Section 122(通商法122条):国際収支の不均衡に対処するための暫定措置の規定。上限15%・150日という期限がある。IEEPA関税の失効後のつなぎとして一律10%が適用され、2026年7月24日に失効した。
  • Annex II(免除品目の附属書):官報告示に添付された、Section 301の対象外となる品目のリスト。HTSコードで指定される。
🤝 むずかしく見えても、ここは任せられます

制度は半年で3回変わりましたが、期限つきのつなぎは終わり、当面はこの形が続く前提で組み直せます。当社(WorldShift)は発送代行の中で、HTSコードの分類・確定、原産国表示・原産地の整理、CROSSでの類似裁定の調査、インボイスの作成・品名の最適化を行っています。税関から追加の情報・資料を求められたときの必要書類のご案内と提出のサポートも承ります。なお事前教示(binding ruling)の申請の代行は当社では承っておりません(輸出者ご自身で申請できる制度です)。

税率・分類・対象外品目はUSTRの官報告示およびJETRO(2026年7月)の公表内容にもとづく整理です。適用は10桁のHTSコード単位で判定されます。制度・税率は変更されることがあるため、判断の前には必ず最新の一次情報をご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的とした見本です。金額はわかりやすさ優先のざっくり試算で、個別の通関・税務判断を保証しません。正確な税率・分類は各製品のHTSコードと最新の公式情報をご確認ください。