米国で両刃カミソリが拡大 日本の替刃に指名買い
替刃の世界市場、調査会社は2034年に約61億ドルと予測。脱プラと安さが追い風

米国のひげそりで、使い捨てのプラスチック製カートリッジから、金属の柄に1枚の刃を挟む両刃カミソリ(安全カミソリ)への揺り戻しが起きている。調査会社Dataintelo の予測では、両刃カミソリの替刃の世界市場は2034年に約61億ドルになる。同社は2025年を約38億ドルとみており、年率約5.4%で伸びる見込みだ。受け皿の1つが、刃物の産地である岐阜県関市で刃を磨いてきたフェザー(Feather)や貝印など、日本ブランドの替刃だ。
追い風は3つある。使い捨てを減らしたい「脱プラ」の流れと、剃る費用の安さ、そして石けんを泡立てて剃る「ウェットシェービング」の広がりだ。
米国とカナダの男性の約61%が両刃カミソリを支持している。米国で安全カミソリを使う世帯は800万〜1,000万規模にのぼる。この2つは、各種の市場調査をもとにした概算だ。
脱プラ、安さ、ウェットシェービングの広がり
米国のひげそりで伸びているのは、5枚刃の使い捨てカートリッジではない。金属の柄に交換式の刃を1枚挟む両刃カミソリだ。選ばれる理由は大きく3つある。
1つ目は脱プラだ。両刃の替刃は金属だけでできている。プラスチックの台座ごと捨てるカートリッジ式に比べ、捨てるプラスチックが少ない。調査会社Global Growth Insights の「Safety Razor Market」によると、グルーミング用品を買うときにブランドより環境への影響を優先する消費者は39%を超える。同じ調査では、米国の消費者の58%超が、金属やリサイクルできる素材のカミソリを支持している。
2つ目は費用の安さだ。両刃の替刃で剃ると、1回あたりの費用は5〜12セント、約8〜19円で済む。カートリッジ式は1回33セント〜1.67ドル、約53〜267円かかる。両刃なら数分の一の費用で剃れる。
3つ目は、ひげそりの趣味化だ。石けんを泡立て、時間をかけて剃る「ウェットシェービング」を、儀式のように楽しむ人がいる。この楽しみ方が、SNSやレビュー動画の愛好家の集まりを通じて広がっている。
| 項目 | 使い捨てカートリッジ | 両刃カミソリ |
|---|---|---|
| 最初にかかる費用 | 使い捨ては、その都度カートリッジを買う | 両刃は、20〜40ドル前後の柄を最初に買うだけ |
| 1回あたりの費用 | 使い捨ては33セント〜1.67ドル | 両刃は5〜12セント |
| 捨てるもの | 使い捨ては、プラスチックの台座ごと捨てる | 両刃は、金属の替刃だけを捨てる |
替刃の世界市場、2034年に約61億ドルの予測
Dataintelo の予測では、両刃カミソリの替刃の世界市場は、2025年の約38億ドルから2034年に約61億ドルへ、年率約5.4%で伸びる。円に直すと約6,080億円から約9,760億円になる。1ドル=160円で換算した。成長を引っ張るのは北米と欧州だ。
米国で安全カミソリを使う世帯は、2026年の概算で800万〜1,000万規模だ。米国とカナダの男性の約61%は、肌にやさしく繰り返し使える両刃カミソリを支持している。どちらも各種の市場調査をもとにした概算だ。
近年は、女性がボディ用に剃る場面でも、金属製の安全カミソリが選ばれている。需要のすそ野は広がっている。
市場規模と成長率は調査会社の予測値で、調査機関によって幅がある。
関の刃物、フェザー・貝印の替刃に指名買い
こうした本物志向の受け皿になっているのが、日本の刃物だ。フェザー安全剃刀(Feather)は1932年の創業で、本社は大阪にある。主力の替刃工場は岐阜県関市だ。医療用のメスまで手がける刃の精度で、世界のウェットシェービング愛好家から指名買いされている。
貝印(Kai)も関にルーツを持つ。包丁の「関孫六」などで知られる総合刃物メーカーだ。
関市は、包丁や理髪用刃物などの刃物製品で、全国シェアの50%超を占める。ドイツのゾーリンゲン、イギリスのシェフィールドと並ぶ「世界三大刃物産地」でもある。こうした産地の物語そのものが、米国では強い購買理由になる。
日本ブランドは、伸びる市場の中で「刃の品質」という一点で選ばれている。柄は各国のメーカーの製品を使っても、替刃はフェザーや貝印を選ぶ。そうした買い方が定着している。
買い手は25〜45歳の男性が中心
中心の買い手は、25〜45歳の男性を核にした「こだわり派」だ。脱プラや節約を意識する女性も買い手になっている。
販路の中心はAmazonで、替刃のまとめ買いや定期購入が多い。ウェットシェービングの専門店や、ブランドが自社サイトで直接売るD2Cも定番の販路だ。
価格の目安は、金属製の柄が20〜40ドル前後、約3,200〜6,400円だ。替刃は100枚入りで十数ドルからで、1枚あたり十数円になる。柄は一度買えば長く使う。このため、この市場では利益は買い足される替刃で積み上がる。
日本ブランドにとっては、「Made in Japan」の刃の精度を前面に出し、安い替刃と区別して訴えられるかが勝負どころになる。
追加関税、122から強制労働Section 301へ
カミソリと替刃は、米国の関税分類でHTS 8212に入る。カミソリ本体は8212.10、安全カミソリの替刃は8212.20と分かれる。カミソリと替刃にかかる通常の関税は、0〜数%と低めだ。
ただし、追加関税が別枠でかかる。一律10%を上乗せしていたSection 122は、2026年7月24日に法律の定める期限で失効した。現在は「強制労働Section 301」と呼ばれる追加関税がかかる。日本原産の品は、通常の関税を含めて合計12.5%になる方式だ。
刃はステンレス鋼でできているが、鉄鋼にかかるSection 232の追加関税は、今のところかからない。2026年7月時点で、HTS 8212は232の「派生製品」リストに入っていないためだ。
ただ、このリストは随時広がる。2025年8月には428品目が一度に加わった。発表時点では407品目で、官報に載る段階で428品目に確定した。輸出のたびに、米税関・国境警備局(CBP)の最新のリストで、自社のHTSが載っていないかを確かめる必要がある。
安全規制・原産地表示・FBA納品
関税のほかに、米国へ送る前に整える点は次のとおりだ。
- 製品の安全。カミソリは鋭利な品だが、子ども向けの製品ではない。このため、米消費者製品安全委員会(CPSC)の厳しい子ども向け製品の規制では、主な対象から外れる。替刃を安全に取り出せ、捨て方が分かる包装と、必要な注意表示を整える。
- 品名。子ども向けと誤って分類されないよう、インボイスの品名には大人の身だしなみ用であることを書く。品名は「safety razor」「double-edge razor blades(adult grooming)」のように具体的にする。
- 原産国の表示(原産地表示)。「Made in Japan」を英語で、消えない形で表示する。表示がないと、表示漏れに対する関税(マーキング関税)の対象になり得る。
- FBAへの納品。カミソリと替刃は、電池やエアゾールのような危険物ではない。鋭利な品として梱包すれば、FBAにも納品できる。
柄より替刃、買い足しで積み上がる商材
日本から両刃カミソリを売る事業者にとって、主役は替刃だ。柄は一度買えば長く使われるが、替刃は使うたびに買い足される。小さく軽いので、FBAでの保管や配送とも相性がよい商材だと当社はみている。
勝負どころは、安い替刃との違いを伝えられるかだ。米国の買い手は「刃の品質」で替刃を選んでいる。フェザーや貝印の名前に加え、関という産地の物語と「Made in Japan」の刃の精度を、商品ページで前面に出したい。
輸出の準備は、次の順で進めると迷いにくい。まず、カミソリ本体と替刃でHTSを分ける。次に、品名を大人の身だしなみ用と分かるように具体的に書く。最後に、「Made in Japan」を英語で消えない形で表示する。追加関税の制度と232の派生製品リストは変わり得るため、出荷のたびに最新の情報を確かめたい。
市場の数字は調査会社の予測で、機関によって幅がある。利益は仕入れ値と販売価格、出品の条件によって変わる。手数料・送料・関税を引いて利益が残るかを商品ごとに計算し、それから仕入れの量を決めたい。
(ワールドシフト編集部)
キーワード解説
- 両刃(DE)カミソリ・安全カミソリ:金属の柄に、両側に刃が付いた交換式の替刃を1枚挟んで使うカミソリ。柄は長く使え、替刃は使うたびに買い足される。DEはダブルエッジ(double edge)の略。
- ウェットシェービング:石けんやシェービングクリームを泡立て、時間をかけて剃るスタイル。趣味や儀式として楽しむ層が米国で広がっている。
- HTS 8212:カミソリと替刃の米国の関税分類。カミソリ本体は8212.10、安全カミソリの替刃は8212.20。通常の関税は低いが、追加関税が別枠でかかる。Section 122が2026年7月24日に失効した後は、強制労働Section 301による追加関税がかかる。
- 通常の関税(MFN税率):米国が通常かける関税。日本原産の品は、強制労働Section 301による追加関税と合わせて、合計12.5%になる方式だ。
- Section 232の派生製品リスト:鉄鋼やアルミの追加関税がかかる、それらを材料にした製品の一覧。随時追加される。2026年7月時点で、HTS 8212は載っていない。
Q&A:よくある質問
- なぜ日本の両刃カミソリの替刃が米国で選ばれるのですか?
- フェザー(Feather)や貝印(Kai)など、刃物の産地である岐阜県関市で磨かれた替刃の精度が理由です。関市は包丁や理髪用刃物などの刃物製品で全国シェアの50%超を占め、ドイツのゾーリンゲン、イギリスのシェフィールドと並ぶ「世界三大刃物産地」です。柄は他国製でも、替刃は日本ブランドを選ぶ買い方が定着しています。
- 両刃カミソリの替刃の世界市場は、2034年にどれくらいの規模になる見込みですか?
- 調査会社Dataintelo の予測では、両刃カミソリの替刃の世界市場は2025年の約38億ドルから2034年に約61億ドルへ、年率約5.4%で伸びる見込みです。1ドル=160円で換算すると、約6,080億円から約9,760億円です。米国で安全カミソリを使う世帯は、各種の市場調査をもとにした2026年の概算で800万〜1,000万規模です。
- 日本から米国へ輸出するカミソリと替刃の関税は、2026年7月24日以降どうなりますか?
- カミソリと替刃にかかる通常の関税は0〜数%と低めですが、追加関税が別枠でかかります。一律10%を上乗せしていたSection 122は2026年7月24日に法律の定める期限で失効し、現在は強制労働Section 301による追加関税がかかります。日本原産の品は、通常の関税を含めて合計12.5%になる方式です。
- カミソリの替刃はステンレス鋼ですが、2026年7月時点で鉄鋼のSection 232の対象ですか?
- 2026年7月時点では対象外です。HTS 8212は、鉄鋼のSection 232の「派生製品」リストに入っていません。ただ、このリストは2025年8月に428品目が一度に加わったように随時広がります。輸出のたびに、CBPの最新のリストで自社のHTSが載っていないかを確かめてください。
- カミソリと替刃は、FBA(Amazonの倉庫への納品)で送れますか?
- 送れます。カミソリと替刃は電池やエアゾールのような危険物ではないため、鋭利な品として適切に梱包すればFBAに納品できます。小さく軽いので、保管費も抑えやすい商材です。
- 電気シェーバーの米国への輸出も、両刃カミソリと同じ扱いですか?
- 別の扱いです。電気シェーバーは電気機器で、無線の機能があればFCCの手続きが、ほかに120Vの電源への対応や電池の輸送規制などが加わります。本記事は、電動でない両刃カミソリと替刃を扱っています。
- この記事の両刃カミソリ市場の数字の出典はどこですか?
- 市場規模と成長率、1回あたりの費用、捨てるプラスチックの量はDataintelo の「Double Edge Razor Blade Market」の調査によります。あわせてBusiness Research Insights とGlobal Growth Insights のカミソリ市場の報告書を参照しました。ブランドの情報はフェザー安全剃刀の公式サイトと関市の刃物産地の資料、関税とSection 232はHTS 8212の分類とCBPのSection 232 FAQによります(2026年7月時点)。
- Double Edge Razor Blade Market Report 2034(Dataintelo)──両刃替刃の市場規模・1回あたりコスト・プラ廃棄削減率
- Razor Blade Market Size, Share & Forecast(Business Research Insights)
- Safety Razor Market Trends & Forecast Report 2026–2035(Global Growth Insights)
- FEATHER Safety Razor Co., Ltd.(公式・MADE IN JAPAN)
- Feather Safety Razor Museum / 関(せき)の刃物産地(Go! Central Japan)
- 伝統と技術/“世界三大刃物産地”(関の刃物・関刃物産業連合会)
- 第2期 関市産業振興戦略(関市・刃物製品の全国シェア)
- HS Code 8212 — Razors and razor blades(Flexport)
- Section 232 Tariffs on Steel and Aluminum FAQ(U.S. CBP)
- US Commerce Adds 428 HTS Codes to Section 232 Steel and Aluminum Derivative Lists(ArentFox Schiff)
- Tariffs Redux: What Importers Should Know About IEEPA Refunds and Section 122(Snell & Wilmer)




