
米国、強制労働を理由に新Section 301関税を提案(6/2)──日本も対象・12.5%案【その後7/24に発効・日本はMFN込み合計12.5%で確定】
アメリカの“次の一手”が見えてきた。米通商代表部(USTR)は2026年6月2日、60の国・地域について「強制労働で作られた産品の輸入取締りが不十分」と判定し、その是正措置としてSection 301で追加関税(10%または12.5%)を課す案を公表した。注目は日本が上位の12.5%グループ(提案)に入っていること。公表時点で発効日は未定だったが(その後、2026年7月24日に発効が確定→article_202)、当時全輸入に乗っていた一律10%(Section 122)は7月24日に法定失効し(→article_113)、この新301はその“後継”として同日に切り替わった。つまり日本発は「7/24で安くなる」どころか、10%→12.5%へ上がる案の側にいた。以下は提案段階(7/11時点)での整理だ(結果は冒頭の更新参照)。
何が起きた?──強制労働を理由にした新しいSection 301
USTRは2026年3月12日、主要貿易相手ごとに「強制労働で作られた品の輸入を禁止・執行できているか」を調べる60件の調査を開始しました。そして6月2日、その全て(60件すべて)で取締りが不十分(=不合理な慣行)と判定し、Section 301に基づく追加関税(10%または12.5%)を提案。連邦官報にも6月5日に告示されました。
手続きとしては7月6日に書面意見の締切、7月7〜9日に公聴会(3日間)が開かれ、7月9日に終了した段階です。公表時点で発効日は未決定でしたが、当時全輸入に乗っていた一律10%(Section 122)が7月24日に法定失効する見込みだったため(→article_113)、この新301はその“後継”として時間軸がぴたりと重なっていました(実際に7/24に発効し、122は同日失効→article_202)。
税率はどう決まる?──日本はなぜ12.5%グループなのか
提案されている率は2段階です。自国で強制労働品の輸入禁止措置を持つ・相互貿易協定でその導入を約束済み・部分的にでも実効ある措置がある国は10%。それ以外はすべて12.5%という設計です。
日本は「12.5%」グループ(提案)に分類されました。同じ12.5%側には中国・インド・ベトナム・韓国などが並びます(=強制労働品の輸入禁止措置を持たないとされた国)。一方、EU・カナダ・メキシコ・英国などは、禁止措置はあるが執行が不十分とされ低い方の10%グループです。つまり日本は、主要国の中でも上の税率を提案された側にいます。(国別の分類・率はいずれも“提案”で、公聴会・意見を経て変わり得ます)
繊維・衣料には一定量まで軽減レートで通せる「テキスタイル・メカニズム」も提案されています。アパレルを扱うなら要チェックです。
率はいずれも提案(proposed)で確定ではありません。15%はSection 122の法定上限であり、新301の率ではありません。
Section 122(一律10%)との違い=“後継”が手強い理由
当時効いていたSection 122の一律10%は、150日の期限と15%の上限がある“時限措置”で、裁判でも争われていました(CITは違法と判断、連邦巡回控訴裁が差止を停止して徴収継続。詳細→article_113)。そして実際に7月24日に失効しました。
対してSection 301は、法定の率上限も自動失効もありません。過去の対中301も裁判所(CIT・連邦巡回控訴裁)で概ね維持されてきており、法的な“耐久性”は122より高いと専門家は指摘します(なお対中301への司法上の異議申立ては、2026年6月15日に連邦最高裁が上告受理を拒否して終結し、301関税の維持が確定しました)。つまり後継が301なら、上乗せはより長く・より確実に残る可能性があります。
日本の輸出者はどう動く?
いまは「提案・審査中」の段階です。決め打ちを避け、次の順で備えます。
- 当時の価格:当面は一律10%(Section 122)込みで原価・販売価格を設計(7/24までは実際に乗っていた)
- “12.5%へ上がる案”を織り込む:日本は上位グループ案。「7/24で安くなる」前提で長期の値付けを固めない
- 発効日ウォッチ:新301の発効日と最終の率・対象HTSは連邦官報/USTRで確定する。確定次第すぐ価格へ反映できる形にしておく
- “すき間”の窓:122失効(7/24)と新301発効日の間に一時的に上乗せゼロの期間が生じ得るとみられていた(実際には122失効と新301発効が同日同時刻だったため、すき間は生じなかった)
- 232対象品は新301の“除外”:鉄鋼・アルミ・銅などSection 232の対象品目・部品は、今回の新301(強制労働)の除外リスト(Annex A)に含まれ、232と新301が重ねてかかることはありません(=どちらか一方)。232そのものは品目別に継続します(→article_44・article_111)
失効・発効をまたぐ貨物の出荷・通関の段取りや、いつ・いくらに変わるかの最新情報のフォローはSLC(発送代行)でサポートします(出品価格の見直しはお客様側で。こちらは確定情報をお伝えします)。
上乗せ関税(122も新301も)は、船積み日ではなく“通関(輸入申告)した日”に効いている率で決まり、申告では通常のHTSに加えて第99類(Chapter 99)の専用コードで宣言します。落とし穴は、7/24を境にこのChapter 99コードが切り替わったこと──失効した122のコードを使い続けたり、発効した新301のコードを付け忘れたりすると、申告誤りで是正・追徴の火種になります。海上輸送中の貨物も“通関日の率”が原則で、後から遡って回避はできません。切替をまたいだ貨物の申告は、通関ブローカーに『どの日に・どのChapter 99コードで申告したか』を確認しておくのが安全です。
よくある質問
- Section 301:米国が不公正な貿易慣行に対抗して課す追加関税。率上限・自動失効が無い。
- 強制労働の取締り:今回301の“不公正慣行”の中身=強制労働品の輸入禁止・執行が不十分という判定。
- 後継(Section 122→301):7/24失効の一律10%に代わり、上乗せを続ける枠組みとして301が有力視され、実際に2026/7/24に同日で切り替わったこと。
(本記事は提案段階の記録です)結果は『7/24で安くなる』ではなく、新301が7/24に発効し、日本はMFN込み合計12.5%の合算調整方式で確定しました(→article_202)。現在の価格設計は合計12.5%(MFNが12.5%以上なら301ゼロ)を前提に。価格の見直しはお客様側で行っていただきますが、確定内容の最新情報のフォローと、制度切替をまたいだ貨物の出荷・通関の段取りは当社(WorldShift)の発送代行(SLC)がサポートします。情報を追いきれなくても、止めず・取りこぼさず対応できます。
- USTR Makes Findings and Proposes Action in 60 Section 301 Investigations(USTR, 2026/6/2)
- Notice of Determinations and Request for Comments(Federal Register, 2026/6/5)
- USTR Proposes New Section 301 Forced Labor Tariffs Covering Most Major U.S. Trading Partners(Gibson Dunn, 2026/6)
- Section 122 Surcharge Sunsets July 24(Nakachi Eckhardt & Jacobson, 2026/7/4)
- U.S. Supreme Court Declines Review of China Section 301 Tariff Challenge(Thompson Hine SmarTrade, 2026/6)

