米国、農機・エアコンの232条関税を上限15%に 26年6月8日から
可搬式産業機械の15%は日本などパートナー国だけ。製品全額への課税は4月6日から続く

米政権は2026年6月1日の大統領布告で、鉄鋼・アルミ・銅にかける安全保障上の追加関税(Section 232)を再調整し、6月8日に発効させた。主な変更は減税で、農業機械と住宅用エアコン(HVAC)の税率を、2027年12月31日までの暫定で25%から15%に下げた。可搬式の産業機械は、日本などパートナー国の品に限り上限15%となる。日本から米国へ機械を送る事業者は、自社の品目がどの区分に入るかで関税額が変わる。
上限15%になるのは、対象のカテゴリーだけだ。鉄鋼・アルミ・銅でできた製品(附属書I-A)は日本産でも50%、多くの派生品(附属書I-B)は25%のままとなる。
課税の土台は、2026年4月6日に発効した別の布告で、すでに製品の全額に変わっている。これは6月8日の変更ではなく、その前から続く前提だ。
農機・エアコンは原産国を問わず15%
6月8日からの減税は、品目によって仕組みが2つに分かれる。
農業機械(コンバインや収穫機など)と住宅用エアコン(HVAC)は、布告の附属書IIIに入り、税率を下げた15%の派生品の区分に加わった。これまでは25%だった。この引き下げは、原産国を問わず一律に効く。
可搬式の産業機械(附属書I-C)は、一般の税率が25%のままだ。15%が上限になるのは、日本・EUなどのパートナー国の品だけとなる。布告の原文は「25 percent, unless a lower rate of duty applies」と定め、引き下げはパートナー国向けの条項で効く。全世界で一律に15%へ下がったわけではない。
| 品目 | 税率と期間 |
|---|---|
| 農業機械・住宅用エアコン(附属書III) | 原産国を問わず、2026年6月8日から2027年12月31日までの暫定で、25%から15%に下がる。 |
| 可搬式の産業機械(附属書I-C) | 一般の税率は25%のままで、日本などパートナー国の品だけが、2026年6月8日から2027年12月31日までの暫定で上限15%になる。 |
| 鉄鋼・アルミ・銅でできた製品(附属書I-A) | 日本産を含め、50%のまま続く。 |
| 多くの派生品(附属書I-B) | 日本産を含め、25%のまま続く。 |
暫定措置は2027年12月31日までで、その後は通常の税率に戻る。
鉄鋼・アルミ・銅は50%のまま
鉄鋼・アルミ・銅でできた製品(附属書I-A)の税率は、今回の布告の後も50%だ。日本産でも同じく50%がかかる。
多くの派生品(附属書I-B)は25%だ。税率は、品目がどの附属書の区分に載るかで分かれる。
上限15%は、農業機械・住宅用エアコン(附属書III)と、可搬式の産業機械(附属書I-C)という対象カテゴリーに限られる。
課税は製品の全額、4月6日から
鉄鋼・アルミ・銅とその派生品は、2026年4月2日に署名され、4月6日に発効した布告で、製品の全額(full customs value)に課税されている。それまでは、製品に含まれる金属の価額の分だけに課していた。
6月8日の布告で新たに変わった点ではない。ただ、この前提は続いており、金属の価額を分けて申告して税額を抑える方法は使えない。
15%も50%も、製品の全額に対してかかる。
日本産の15%には原産地の証明
日本は、2025年の日米の枠組み合意を結んだパートナー国に当たる。可搬式の産業機械(附属書I-C)で日本産に上限15%を当てるには、日本産であることを示す原産地の証明が前提になる。
農業機械・住宅用エアコン(附属書III)の15%は原産国を問わない。一方で、日本産でも、鉄鋼・アルミ・銅そのものや多くの派生品には25〜50%がかかり続ける。
米国税関・国境警備局(CBP)は、今回の布告についての指示(CSMS #68855869)を出している。
まず品目の区分を確かめ、全額で計算し直す
今回の再調整で、同じ金属を使った機械でも、区分によって税率は15%・25%・50%と大きく違う。しかも、どの税率も製品の全額にかかる。関税額を左右するのは、自社の品目のHTSコードがどの附属書に入るかと、原産地を示せるかの2点だ。
確かめる順番は次のとおりだ。まずHTSコードを特定し、農業機械・住宅用エアコン(附属書III)か、可搬式の産業機械(附属書I-C)か、それとも50%か25%の通常の派生品かを照らし合わせる。附属書IIIなら、原産国を問わず15%となる。附属書I-Cなら、日本産の原産地書類をそろえることで上限15%の前提が整う。通常の派生品なら、製品の全額をもとに関税を計算し直す。
減税は2027年12月31日までの暫定措置だ。15%を前提に価格や仕入れの計画を組む場合は、期限の後に通常の税率へ戻ることも織り込んでおきたい。対象の品目や税率の細部は、布告とCBPの公式情報で確かめる必要がある。
(ワールドシフト編集部)
キーワード解説
- Section 232(232条関税):安全保障を理由に米国が課す関税。鉄鋼・アルミ・銅とその派生製品が対象。
- 全額課税(full customs value):製品の全額に課税する方式。2026年4月6日以降は、派生品も金属の分ではなく全額が対象。
- 暫定15%のカテゴリー:農業機械・住宅用エアコン(HVAC、附属書III)は原産国を問わず25%から15%に、可搬式の産業機械(附属書I-C)はパートナー国の品だけ上限15%に下がった。2027年12月31日までの暫定措置。
- 日米枠組み合意:可搬式の産業機械(附属書I-C)などの対象カテゴリーで、日本産の232条関税を上限15%に抑える取り決め。鉄鋼・アルミ・銅そのものは50%が続く。
- 原産地証明:日本産であることを示す書類。可搬式の産業機械(附属書I-C)で上限15%を当てる前提となる。
Q&A:よくある質問
- Section 232の鉄鋼・アルミ・銅の関税で、金属の分だけ申告すれば安くなる方法は、2026年6月以降も使えますか?
- 使えません。2026年4月6日以降、鉄鋼・アルミ・銅とその派生品は、製品の全額(full customs value)に課税されています。金属の価額だけを分けて課税する方式は終わりました。
- 米国へ送る農業機械や住宅用エアコン(HVAC)に、2026年6月8日以降は50%の関税がかかりますか?
- かかりません。2026年6月1日の布告で、農業機械と住宅用エアコン(附属書III)は、原産国を問わず25%から15%に下がりました。2027年12月31日までの暫定措置です。自社のHTSコードが当てはまるかをご確認ください。
- 日本から送る品なら、Section 232の関税はどれも上限15%で済みますか?
- いいえ。上限15%になるのは、農業機械・住宅用エアコン(附属書III)と、可搬式の産業機械(附属書I-C)の対象カテゴリーに限られます。日本産でも、鉄鋼・アルミ・銅そのものや多くの派生品には25〜50%がかかり続けます。附属書I-Cで日本産に上限15%を当てるには、原産地の証明が前提です。
- 可搬式の産業機械は、2026年6月8日以降どの国からでも15%になりますか?
- なりません。可搬式の産業機械(附属書I-C)の一般の税率は25%のままです。上限15%が効くのは、日本・EUなどのパートナー国の品だけです。
- 2026年6月のSection 232再調整の一次情報はどこですか?
- 2026年6月1日の米大統領布告と、CBPの指示(CSMS #68855869)、各法律事務所の解説です。最新の内容は、布告とCBPの公式情報でご確認ください。
- Further Adjusting the Tariff Regimes for Imports of Aluminum, Steel, and Copper(The White House, 2026/6/1)
- United States modifies steel, aluminum, and copper Section 232 tariffs(White & Case, 2026/6)
- U.S. Tariffs and the 2025 U.S.-Japan Framework Agreement(Congress.gov CRS)
- President Trump Modifies Section 232 Tariffs on Aluminum, Copper and Steel Imports(Thompson Hine SmarTrade)




