
米国FDA、12/14から『規格食品』に塩の代替を解禁──マヨネーズ・ツナ缶・チョコなど80規格で、減塩しても同じ名前のまま売れる
米国FDA(食品医薬品局)は、2026年10月13日付の連邦官報に掲載される最終規則で、塩(塩化ナトリウム)を使う80の食品規格を改正し、塩の一部または全部を「塩の代替」に置き換えてよいと定めました。改正された規格を参照している規格も含めると、139の規格で使えるようになります。施行は2026年12月14日です。
米国には、マヨネーズ、ツナ缶、ミルクチョコレート、ケチャップ、パスタ、チーズなどについて、「この名前で売るなら、この原料で作る」という規格(standard of identity)があります。これまで多くの規格は塩の代替を認めておらず、塩化カリウムなどで減塩すると、原則としてその名前を名乗れませんでした。12月14日からは、条件を満たせば、減塩しても同じ名前のまま売れるようになります。FDAは改正の理由として、減塩版のような、より健康的な食品を望む消費者が多いことを挙げています。
新しい義務ではなく、使うかどうかは任意の緩和です。この記事では、何が変わるのか、対象の規格、表示で気をつけること、米国へ送るまでの手順を、規則の本文に沿って整理しました。最初の一歩は、米国へ送っている(送りたい)商品の英語の名前が、対象の規格に当たるかを見てみることです。
① 何が変わるか:減塩しても「マヨネーズ」「ツナ缶」と名乗れる
規則の説明によると、塩を必須または任意の原料として定める規格のほとんどは、塩の代替を認めていませんでした。そのため、メーカーはこれらの規格食品を塩の代替で作ることが、事実上できませんでした。一方、規格の無い食品(ふつうの加工食品)では、塩の代替は以前から使えます。今回の変更は、規格のある食品だけの話です。
これまでも、「low sodium」などの表示の基準(21 CFR 101.61)まで塩分を下げれば、規格の名前に添えて売る方法はありました(21 CFR 130.10)。ただ、そこまで下げるのは現実的でない場合がある、と規則自身が説明しています。
今回の規則は、規格の総則(21 CFR part 130)に新しく「規格食品の柔軟性」という節(130.30)を設け、塩の代替を次のように定めました。
- 塩(塩化ナトリウム)の一部または全部を置き換え、食品のナトリウムを減らすために使う
- 食品の中で塩の働きをする
- 安全で適切な原料(または原料の組み合わせ)であること
- 置き換えても、その食品の基本的な性質と本質的な特徴(その食品らしさ)を変えないこと
そのうえで、80の規格それぞれの条文に「塩または塩の代替」と書き足しました。たとえばマヨネーズの規格(21 CFR 169.140)は、任意の原料が「塩」から「塩または塩の代替」になります。さらに、この80の規格を参照している59の規格でも使えるため、塩の代替を使える規格は合計139になります(規則の説明より)。
施行日は2026年12月14日です。ただし、乳製品の規格(21 CFR part 131・133)の改正は、期限までに正式な異議が出された場合、その部分の効力が止まることがあります(規則の「施行日」の節より)。乳製品以外の規格には、この手続きはありません。
② 対象の80規格:マヨネーズ・ツナ缶・チョコ・パスタ・チーズなど(うち46は乳製品)
規則の表1に載っている80の規格を、分野ごとにまとめました(当社による整理・訳)。規格に当たるのは、その英語の名前で売る場合です。同じ材料でも、規格の名前を使わない商品は対象外です。たとえば、うどん・ラーメンなどを規格の英語名(Noodle products など)で売らないなら、この規格の話ではありません。なお、この80の規格を参照している59の規格でも塩の代替が使えます(合計139)。
| 分野(21 CFR) | 件数 | 主な規格 |
|---|---|---|
| ドレッシング類(169) | 2 | マヨネーズ(Mayonnaise)、サラダドレッシング(Salad dressing) |
| 魚介の缶詰(161) | 4 | ツナ缶(Canned tuna)、カキの缶詰、太平洋サケの缶詰、ウェットパックのエビの缶詰 |
| チョコレート・ココア(163) | 5 | ミルクチョコレート、スイートチョコレート、ホワイトチョコレート、チョコレートリカー、ブレックファストココア |
| 麺・パスタ(139) | 2 | マカロニ製品(Macaroni products)、ヌードル製品(Noodle products) |
| 野菜・トマトの加工品(155・156・158) | 10 | インゲン・コーン・グリーンピース・トマトの缶詰、トマト濃縮物、ケチャップ(Catsup)、マッシュルームの缶詰、トマトジュース、冷凍グリーンピース など |
| 果物の加工品(145・150) | 3 | アップルソースの缶詰、イチジクの缶詰、フルーツバター |
| シロップ(168) | 4 | ケーンシロップ、メープルシロップ、ソルガムシロップ、テーブルシロップ |
| パン・粉(136・137) | 3 | パン・ロールパン・バンズ、セルフライジングフラワー、セルフライジング・ホワイトコーンミール |
| マーガリン(166) | 1 | マーガリン |
| 乳製品(131・133)※ | 46 | チェダー、モッツァレラ、クリームチーズなどのチーズ類、サワークリーム、エッグノッグ など |
※乳製品の規格の改正は、2026年11月12日までに正式な異議が出された場合、その部分の効力が止まることがあります。規格の正確な対象と条文は、eCFR(21 CFR part 131〜169)でご確認ください。
③ 何を使えるか・表示はどうなるか:名前は同じ、原材料名は具体的な名前で
規則は、使える塩の代替を特定していません。例として塩化カリウムを挙げつつ、ほかにも酵母エキス、グルタミン酸ナトリウム(MSG)、アミノ酸、乳由来のエキスなどが、科学文献で塩の代替になりうる原料として挙がっていると説明しています。
表示について、規則は新しい表示の義務を設けていません。そのかわり、今ある表示のルールがそのまま当てはまります。規則の説明から、押さえる点は次の4つです。
- 原材料名は、ふつうの名前で書く。「salt substitute(塩の代替)」とひとまとめに書くことは認められていません。塩化カリウムなら「potassium chloride」または「potassium salt」、MSGなら「monosodium glutamate」と書きます。
- カリウムを使ったら、栄養成分表示のカリウムに気をつける。規則の説明では、1食あたりカリウムの1日推奨量の2%以上を含む食品は、栄養成分表示にカリウムの情報が必要です。
- 「low sodium(低ナトリウム)」などと書くなら、その基準を満たす。塩の代替を使っただけでは、強調表示はできません(21 CFR 101.61)。
- 塩の代替がアレルゲンを含むなら、アレルゲン表示も必要。たとえば乳由来の原料を使う場合です。
もう1つ大事な点があります。この規則は、食品添加物としての承認や、その免除を与えるものではありません(規則の背景の節より)。塩の代替に使う原料は、これまでどおり、承認済みの食品添加物か、GRAS(一般に安全と認められる物質)として使える範囲でなければなりません。
④ 米国に減塩の規格食品を輸出するには:通関・手続きの全体像
塩の代替が使えるようになっても、食品を日本から米国へ送るための手続きはこれまでどおりです。順に見ていきます。最初の一手——商品の英語の名前と規格を見比べるところまでは、費用も申請も要りません。
- 商品の英語の名前が、80の規格のどれかに当たるかを見る。「Mayonnaise」「Canned tuna」「Milk chocolate」などの名前で売る商品が対象です。規格の条文はeCFR(21 CFR part 131〜169)で読めます。80の規格を参照している規格(59)でも使えるので、名前が一覧に無くても、条文で参照先を確かめます(規格に当たるかの判定は、FDAの条文と食品表示の専門家にご確認ください)。
- 置き換える原料が、米国で使えるものかを確かめる。承認済みの食品添加物か、GRASとして使える範囲かを、原料メーカーの資料で確かめます。この規則は添加物の承認を与えません。
- 英語ラベルを作り直す。原材料名(例:potassium chloride)、栄養成分表示のナトリウムとカリウム、アレルゲン表示を、新しい配合に合わせます(→米国で日本の菓子・調味料が伸びている──だが『ラベル不備』はFDA輸入差し止め理由の約4割)。
- FDAの施設登録を確かめる。食品を作る施設は、FDAへの施設登録が必要で、偶数年の10〜12月に更新します。2026年は更新の年です(→米国へ食品を売る第一歩『FDA施設登録』)。
- 缶詰は、低酸性缶詰食品(LACF)の扱いも確かめる。ツナ缶などの低酸性の缶詰は、工程の登録が別に必要になる場合があります(→FDA『低酸性缶詰食品(LACF)』の工程登録)。また、ツナ缶などのマグロ製品は、米国海洋大気庁(NOAA)の規則で、原産地証明(Fisheries Certificate of Origin, NOAA Form 370)を輸入時にCBPへ電子提出することと、米国の輸入者が国際漁業貿易許可(IFTP)を持っていることが求められます(50 CFR 216.24(f)(2))。
- HTSコードを決める。マヨネーズ、ツナ缶、チョコレート、麺は、それぞれ別の番号です。日本原産品は、HTS 9903.05.49 により、関税率が12.5%未満の品目は原則12.5%になります(一部の例外品目を除く。12.5%以上の品目は、その税率のまま)(→自分の商品の関税が分かるHTSコードの調べ方/米国の追加関税は7/24から新制度へ)。
- 原産国表示とインボイスを整える。英語の原産国表示と、品名・数量・単価・HTSコードが実物と合ったインボイスを用意します(→米国の原産国表示ルール/米国通関で止まらないインボイスの作り方)。
- 米国側の輸入者(IOR)とFSVPを決め、事前通知を出して送る。食品の輸入では、到着前にFDAへの事前通知が必要です。外国の食品の検証(FSVP)は米国の輸入者の義務です(→食品輸出はFDA『事前通知』が必須/米国へ食品を売るならFSVPが壁/Amazonは輸入者にならない)。
⑤ 当社の見方:減塩版を「別の名前」で出していたなら、規格の名前に戻す道ができた
ここからは当社(WorldShift)の見方です。
今回の規則は、何かを禁止するものではなく、規格食品の作り方の選択肢を増やすものです。国内向けにすでに減塩の配合を持っているメーカーにとっては、米国向けにその配合を使い、なじみのある英語の名前のまま売る道が開きます。FDAも、減塩版のような、より健康的な食品を望む消費者が多いことを、この改正の理由に挙げています(→米国で日本の菓子・調味料が伸びている)。規格の無い食品(たとえば減塩しょうゆ・減塩みそのような調味料)は、もともと塩の代替に名前の制約がありません。
逆に、これまで米国で減塩版を出すために、規格の名前を避けた別の商品名(たとえば「〜スプレッド」「〜ソース」のような名前)で売っていた場合は、12月14日以降、規格の名前に戻せるかを検討する余地があります。名前を変えるならラベルの作り直しになるので、配合・原材料名・栄養成分表示をまとめて見直すのが効率的です。
ただし、名前は同じでも、原材料名には塩化カリウムなどがそのまま載ります。減塩を売りにしたいなら、「low sodium」などの強調表示の基準を満たすかを、配合の段階で確かめておくことをおすすめします。
米国で売っている(売りたい)商品の英語名を一覧にし、「Mayonnaise」「Canned tuna」「Milk chocolate」のように規格の名前と同じものに印を付けます。印の付いた商品が今回の改正の中心です。ただし、改正された規格を参照している59の規格にも及ぶため(計139規格)、一覧に名前が無くてもeCFRの条文で参照先を確かめてください。減塩の配合に変えるなら、原材料名(potassium chloride など)と栄養成分表示のナトリウム・カリウムを同時に直す必要があるので、ラベルの改版は1回にまとめると手戻りが減ります。なお2026年はFDA施設登録の更新の年(10〜12月)です。ラベルの改版と同じ時期に済ませておけます。
よくある質問
- 規格食品(standardized food):FDAが規格(standard of identity)を定めた食品。その名前で売るには、規格どおりの原料・作り方で作る必要がある。
- 塩化カリウム(potassium chloride):塩の代替として代表的な原料。原材料名では「potassium chloride」または「potassium salt」と書く。
- GRAS:Generally Recognized as Safe(一般に安全と認められる)。専門家の間で安全と認められた使い方の物質で、食品添加物の承認が要らない。
- 栄養の強調表示(nutrient content claim):「low sodium」「reduced sodium」など、栄養成分の多い・少ないを示す表示。使うには、それぞれの基準を満たす必要がある。
塩の代替を使うか、どの原料を使うかは、メーカーご自身が決めることです。商品が規格に当たるかどうかの判定は、当社では行いません(FDAの規格の条文と、食品表示の専門家にご確認ください)。そのうえで、当社(WorldShift)のFDA代行は、英語ラベル・FDA施設登録・事前通知・FSVPをお手伝いします。日本から米国への発送、HTS分類・インボイス作成・通関の手配、FBA納品は、発送代行(SLC)がお手伝いします。

