知識で深める

米国の製品安全の決まりは、どういう考え方でできているか
― 「自分で証明して出す国」と、その裏返し

米国は、政府が輸入前に1点ずつ許可を出す国ではありません。売る側が「基準に合っている」と自分で証明して市場に出し、問題が起きたら市場に出たあとにリコールと制裁で正す。これが米国の消費財規制の骨格です。証明書と記録が重いのも、輸入者が製造者と同じ責任を負うのも、ここから来ています。このページは「当たるかどうか」ではなく、なぜこの形なのかを読むためのものです。手順はCPCをそろえる手順、当たるかどうかの判断は米国CPSCとはにあります。

1. 骨格 ― 「事前に許可を取る」ではなく「自分で証明して出す」

日本から輸出する方がいちばん戸惑うのが、この点です。消費財について、米国は輸入の前に政府が1点ずつ中身を審査して許可を出す形を取っていません。当たる基準に適合していることを、売る側が自分で証明して市場に出します。

売る側が証明する

当たる基準に適合していることを、自分の名前で証明して市場に出す

政府は抜き取りで見る

全部を事前に審査するのではなく、市場と水際で抜き取って確かめる

根拠は手元に置く

証明の根拠になる試験結果と記録を、求められたら出せる形で持つ

正すのは出たあと

問題があればリコール・輸入差止・制裁で正す

この形には、動きが速いという長所があります。同時に、証明が甘ければ危険なものが市場に出てしまうという弱点があります。米国の制度は、その弱点を「出たあとに強く正す」ことで埋めています。リコール・輸入差止・制裁金・訴訟が重いのは、入口をゆるくしているぶん、出口で効かせているからです。

ここを取り違えると、判断を誤ります

「政府の許可が要らない」=「自由に送れる」ではありません。許可が要らないぶん、証明する責任が自分に来ているという意味です。証明できない状態で送ることは、この制度では「まだ許可されていない」ではなく「義務を果たしていない」になります。

2. 2つの法律 ― CPSA(枠組み)とCPSIA(子ども向けの上乗せ)

米国の消費財の安全は、大きく2つの法律の上に載っています。CPSA(消費者製品安全法)が枠組みと役所(CPSC)を作り、CPSIA(消費者製品安全改善法)が子ども向け製品に上乗せをしました。

CPSA(消費者製品安全法)

消費財の安全の枠組みと、担当する役所(CPSC)を作った法律

CPSIA(消費者製品安全改善法)

子ども向け製品に、第三者試験・CPC・トラッキングラベルを上乗せした法律

GCC(一般適合証明書)

一般消費財の証明書。第三者試験は必須ではない

CPC(子ども向け製品証明書)

子ども向け製品の証明書。CPSC公認機関の第三者試験が根拠になる

CPSIAが上乗せしたものの中心が、「証明の根拠を、利害関係のない第三者の試験に置く」という考え方です。一般消費財のGCC(一般適合証明書)では第三者試験が必須ではないのに、子ども向け製品のCPCではCPSCが受け入れた試験機関の試験が要る——この差は、ここから出ています。

3. 誰が責任を負うか ― 輸入者は「作った人」とほぼ同じ立場

米国の消費者製品の安全規制では、輸入した人が「製造した人」と同じ扱いになります(消費者製品安全法の定義)。証明書を作るのも、危険を知ったときに報告するのも、リコールを実施して費用を負うのも輸入者です。工場が日本にあっても、米国の当局が向き合う相手は米国の輸入者です。

証明書を作る

CPC・GCCを自分の名前で作るのは輸入者

報告する

危険を知ったときにCPSCへ報告するのも輸入者

リコールを実施する

回収・返金・告知の実務と費用を負うのも輸入者

記録を保管する

試験結果と製造の記録を、求められたときに出せる形で持つ

日本から送る側にとって、これは「誰を米国の輸入者にするか」を決めることが、責任を誰が負うかを決めることだという意味を持ちます。FBAに在庫を置く形では出品者自身が輸入者になることが多く、その場合は出品者に責任が来ます。輸入者の決め方は「輸入者番号(IOR番号)とは」に。

4. 出口の仕組み ― 報告義務とリコール

入口をゆるくしているぶん、出口の仕組みが強く作られています。中でも日本の感覚と違うのが、問題を知った側から報告する義務です。CPSCは、CPSA第15条(b)にもとづき、製造者・輸入者・流通業者・小売業者に対し、重大な危険につながりうる欠陥や、安全規則に適合していないことを知った場合、直ちに(24時間以内に)報告するよう求めています。

  • 対象は製造者・輸入者・流通業者・小売業者(売る側の全員)
  • 報告するのは、重大な危険につながりうる欠陥や、安全規則に適合していないと知ったとき
  • 期限は直ちに(24時間以内)。判断に迷う場合の調査期間も定められています
  • CPSCの立場は「迷ったら報告する」

CPSCの案内は「迷ったら報告する」という立場です。ここを黙っていたことが後から分かると、適合していなかったこと自体より重く扱われることがあります。実際にどういう製品がどう止まっているかは「米国の輸入差止・リコールが高水準」「日本セラーが実際に引っかかる4類型」で追っています。

5. もう一段の層 ― 連邦と州は別に走っている

CPSCの基準を満たしていても、それで全部ではありません。州が独自に置いている規制が別にあります。代表がカリフォルニア州のProp 65で、こちらは「危険だから売れない」ではなく「表示しないと売れない」という作りです。連邦(CPSC)と州は目的も作りも違うため、片方を満たしても、もう片方は自動的には満たされません。

連邦(CPSC)

「基準に合っていないものは売れない」という作り

州(例:Prop 65)

「表示しないと売れない」という作り。中身の禁止ではない

重なりはしない

片方を満たしても、もう片方は自動的には満たされません

売る州で変わる

どの州で売るかによって、当たる規制が変わることがあります

6. まとめ ― この制度をひと言で言うと

◎ 入口

政府の事前許可ではなく、売る側の自己証明。だから証明書と記録が重い

◎ 責任

消費者製品の安全規制では輸入者=製造者。誰を輸入者にするかが、責任の所在を決める

← 出口

問題が出たら報告・リコール・差止。黙っていたことがいちばん重い

米国の製品安全の考え方について、よくある質問

米国へ輸出するとき、政府の事前の許可は要らないのですか?

消費財については、CPSCが1点ずつ輸入前に許可を出す仕組みではありません。売る側が、当たる安全基準に適合していることを自分で証明して市場に出す形です。そのかわり、問題があったときは市場に出たあとにリコール・輸入差止・制裁で正されます。「許可がないから自由」ではなく、「証明する責任が自分にある」と読むのが正確です。

なぜ子ども向け製品だけ、第三者の試験が必要なのですか?

自分で証明する仕組みには、証明する人が甘く見積もれてしまうという弱点があります。2008年のCPSIA(消費者製品安全改善法)は、鉛入り塗料の玩具などの問題を受けて、子ども向け製品については証明の根拠を、利害関係のない第三者の試験に置くことにしました。一般消費財のGCC(一般適合証明書)で第三者試験が必須でないのと対になっています。

輸入者は、作っていないのに責任を負うのですか?

負います。米国の消費者製品安全法は、輸入した人を「製造した人」に含めて定義しています。証明書を作るのも、危険を知ったときに報告するのも、リコールを実施するのも輸入者です。日本から送る側にとっては、「誰が米国の輸入者になるか」を決めることが、責任を誰が負うかを決めることだという点がいちばん大きな意味を持ちます。

問題が見つかったら、自分から報告しなければならないのですか?

はい。CPSCは、製造者・輸入者・流通業者・小売業者に対して、重大な危険につながりうる欠陥や、安全規則に適合していないことを知った場合、直ちに(24時間以内に)報告するよう求めています。判断に迷う場合の調査期間も定められていますが、CPSCの案内は「迷ったら報告する」という立場です。黙っていたことが後から分かると、適合していなかったこと自体より重く扱われることがあります。

州の規制は、CPSCの規制とは別ですか?

別です。カリフォルニア州のProp 65のように、州が独自に置いている表示・成分の規制があります。CPSCの基準を満たしていても、売る州の規制に当たれば対応が要ります。詳しくは「California Prop 65」に。

ワールドシフトのサポート

  • ✓当たる規制の洗い出し:製品の素材・部品・使い方から、連邦(CPSC)と州のどちらに当たりうるかを一緒に並べます
  • ✓輸入者の決め方の整理:誰が米国の輸入者になると、誰に責任が来るのかを、送り方ごとに一緒に整理します
  • ✓通関手続きのおつなぎ:提携する米国の通関業者におつなぎし、書類・申告のやり取りを引き継ぎます
  • ✓整理と洗い出しは事前の目安です。当たる規制・適合の可否・報告の要否の最終判断は、CPSC・第三者試験機関および専門家の判断によります(試験費・関税などの実費は別途かかります)
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※ご相談は無料です。実際の発送では、関税や実費(品目により試験費・危険物取扱・特殊梱包など)が別途かかります。

出典:U.S. CPSC — Children's Product Certificate/U.S. CPSC — Duty to Report to the CPSC/U.S. CPSC — Statutes(CPSA・CPSIA)。制度は変わります。

※本ページの記載は2026年9月15日時点の情報です。制度の考え方を整理したもので、個別の該当可否・法的助言ではありません。当たる基準・試験の要否・報告の要否の最終判断は、CPSCおよび依頼する第三者試験機関・専門家の判断によります。
※当社は通関業者・弁護士・税理士ではありません。税関への申告の代理、税務・法律に関する個別の相談・代理はお受けできません。該当可否の判断や当局とのやり取りが必要な場面では、提携する米国の通関業者・専門家におつなぎします。