米国で売るとき、誰が何の責任を負うか
― 輸入者・売り場・自分の、責任の地図
1. 4つの責任は、別々の人に割り当てられている
「越境ECの責任」とひとまとめにすると、必ずどこかが抜けます。分けて見てください。
申告・関税・記録。負うのは輸入者(IOR)
州の売上税。マーケットプレイスが集める仕組みが多くの州にあります
原産国・素材・成分・安全表示。売る人に来ます
基準への適合・証明書・リコール。輸入者に来ます
このうち売り場が代わりに担ってくれるのは、多くの場合「税」だけです。残りの3つは、売っている本人に残ります。
2. 輸入の責任 ― 「輸入者(IOR)」という役割
米国へ物を入れるとき、申告し、関税を払い、記録を保管する責任を負う人を「輸入者(IOR)」と呼びます。さらに消費者製品の安全規制では、輸入した人が「製造した人」と同じ扱いになります(消費者製品安全法の定義)。製品に問題があったときの報告やリコールも、輸入者の仕事です。
分類(HTS)・課税価格・原産国を決めて申告する
関税・手数料を負担する
輸入の日から5年、求められたら出せる形で持つ
報告・リコールの実施と費用も、輸入者に来ます
通関業者は輸入者の代理で手続きをする立場です。分類も価格も原産国も、決めるのは輸入者です。仕組みの詳しい説明は「米国の通関は、どういう仕組みで動いているか」に。
3. FBAに在庫を置くと、輸入者(IOR)は誰になるか ― Amazonは輸入者になりません
ここが、日本の出品者にとっていちばん実務的に重い部分です。同じ商品を売っていても、送り方を変えると輸入者が変わります。
買い手が輸入者になることがあります。関税の負担をどちらにするかを決めて売ります
出品者自身が輸入者になることが多く、Amazonは輸入者になりません
その取引先が輸入者になる形が一般的です
送り方の選択が、そのまま責任を誰が負うかの選択になっています
FBAに在庫を置くと、出品者自身が輸入者になることが多く、Amazonは輸入者になりません。つまり、在庫を米国に置いて売ることを選んだ時点で、輸入の責任も自分に来ています。輸入者番号の届出は「輸入者番号(IOR番号)とは」にまとめています。
4. 税の責任 ― 2018年に、州税の考え方が変わった
米国の売上税(Sales Tax)は州ごとの税で、連邦の税ではありません。かつては「その州に事務所や倉庫があるか」で義務の有無が決まっていました。2018年の最高裁の判断(South Dakota v. Wayfair)以降、物理的な所在が無くても、売上や取引件数が一定の基準を超えれば義務が生じうる形になりました。
その州に事務所や倉庫があるかで義務の有無が決まっていた
物理的な所在が無くても、売上や取引件数の基準を超えれば義務が生じうる
金額・件数の基準も、対象になる売上の数え方も州で異なります
マーケットプレイス側が集めて納める仕組みが、多くの州にあります
基準は州ごとに違います。また、マーケットプレイスで売る場合は売り場の側が集めて納める仕組みが多くの州にあり、自社ECで直接売る場合は自分で対応することになります。個別の当てはめは税務の専門家にご確認ください。このページは制度の形を説明するもので、税務助言ではありません。
5. 表示と製品安全の責任 ― 工場任せにはできない
米国では、原産国の表示・素材や成分の表示・製品ごとの安全表示が、別々の決まりとして走っています。工場が付けてきた表示をそのまま使って足りるとは限りません。そして、これらの責任は売る人に来ます。
英語で、消えない形で。作った国を書きます(記事21)
繊維・食品・化粧品などで、それぞれ別の決まりがあります
子ども向け製品・ボタン電池・可燃性など、製品ごとに求められます
Prop 65のように、州が独自に置いている表示の決まりがあります
製品安全の制度がなぜこの形なのかは「米国の製品安全の決まりは、どういう考え方でできているか」に整理しています。
6. まとめ ― 責任の地図をひと言で
マーケットプレイスなら売り場が集めることが多い。自社ECは自分で
売り場は輸入者にならない。FBAなら出品者自身が輸入者
売る人の責任。工場が付けてきた表示で足りるとは限らない
米国で売るときの責任について、よくある質問
Amazonで売っていれば、Amazonが責任を持ってくれるのではないですか?
分野によって違います。州の売上税については、多くの州でマーケットプレイス側が集めて納める仕組みになっています。一方、輸入者としての責任は別で、FBAに在庫を置く形では出品者自身が輸入者になることが多く、Amazonは輸入者になりません。「売り場が全部やってくれる」と読むと、輸入と製品安全のところで抜けます。
輸入者(IOR)とは、どういう役割ですか?
米国へ物を入れるときに、申告し、関税を払い、記録を保管する責任を負う人です。さらに米国の消費者製品安全法は、輸入した人を「製造した人」に含めて定義しています。製品に問題があったときの報告やリコールも輸入者の仕事になります。「運んでくれる会社」は、輸入者の代理で手続きをする立場であって、責任を引き受ける人ではありません。
州の売上税は、日本の会社にも関係しますか?
関係することがあります。2018年の最高裁の判断(South Dakota v. Wayfair)以降、米国ではその州に事務所や倉庫が無くても、売上や取引件数が一定の基準を超えれば税を集める義務が生じうる形になりました。基準は州ごとに違います。マーケットプレイスで売る場合は売り場が集める仕組みが多く、自社ECで直接売る場合は自分で対応することになります。個別の当てはめは税務の専門家にご確認ください。
製品の表示は、誰の責任になりますか?
売る人の責任です。米国では、原産国の表示、素材や成分の表示、製品ごとの安全表示など、複数の決まりが別々に走っています。工場が付けてきた表示をそのまま使って足りるとは限りません。原産国表示については「米国の原産国表示ルール」に。
送り方を変えると、責任も変わるのですか?
変わります。買い手に直接送る形では買い手が輸入者になることがあり、FBAに在庫を置く形では出品者自身が輸入者になることが多くなります。送り方の選択は、そのまま責任を誰が負うかの選択になっています。
ワールドシフトのサポート
- ✓責任の所在の整理:送り方ごとに、輸入者が誰になり、どの責任が自分に来るのかを一緒に整理します
- ✓当たる規制の洗い出し:商品の素材・用途から、表示と製品安全のどこに当たりうるかを一緒に並べます
- ✓発送と通関のおつなぎ:提携する米国の通関業者におつなぎし、発送と申告のやり取りを引き継ぎます
- ✓整理と洗い出しは事前の目安です。最終的な申告の適否・通関の可否は、米国税関および提携する通関業者の判断によります。州税の取り扱いは税務の専門家にご確認ください(関税・実費は別途かかります)
※ご相談は無料です。実際の発送では、関税や実費(品目により試験費・危険物取扱・特殊梱包など)が別途かかります。
ほかの発送ルールガイド
出典:Streamlined Sales Tax — SCOTUS Ruling: South Dakota v. Wayfair/South Dakota v. Wayfair, Inc.(U.S. Supreme Court, 2018)/U.S. Customs and Border Protection — Entry Summary/15 U.S. Code § 2052(消費者製品安全法の定義。輸入者を「製造者」に含む)。制度・各社の条件は変わります。
※本ページの記載は2026年9月15日時点の情報です。制度の形を整理したもので、個別の該当可否・法的助言・税務助言ではありません。輸入者の決定・申告の適否・州税の取り扱いの最終判断は、米国税関(CBP)・各州の当局および提携する通関業者・税務の専門家によります。
※当社は通関業者・弁護士・税理士ではありません。税関への申告の代理、税務・法律に関する個別の相談・代理はお受けできません。該当可否の判断や当局とのやり取りが必要な場面では、提携する米国の通関業者・専門家におつなぎします。
