FDA規制

米国が『人工着色料不使用』表示を緩和──合成色素さえ無ければ表示OKに、日本の菓子・飲料に追い風

2026年7月5日 | 出典:FDA +当社(WorldShift)整理(FDA規制)

米国FDA(アメリカ食品医薬品局)が、2026年2月5日に食品業界向けレターを出し、『no artificial colors(人工着色料不使用)』や『made without artificial food colors』といった任意表示について執行裁量(enforcement discretion=取締りをしない方針)を宣言しました。

ポイントは1つ。石油由来の合成色素(FD&C認証色素。赤色40号・黄色5号など)を1つも含まない食品なら、天然由来の色素を使っていても『人工着色料不使用』と表示できるようになった、という点です。従来は『添加色素が一切ない』場合しか同表示を使えませんでした。

日本の菓子・飲料メーカーにとっては、合成色素を天然由来に置き換えるだけで米国パッケージに『人工着色料不使用』を訴求できる追い風です。ただし切り分けるべき注意点もあります(後述)。

TOPIC
2026年2月5日
FDAが業界レター発出(執行裁量の開始)
TOPIC
認証色素ゼロ
表示可の条件(1つでも含めば対象外)
TOPIC
従来
『添加色素ゼロ』でしか表示不可だった
TOPIC
連邦のみ
州法・私人訴訟からの保護(safe harbor)は無し

何が起きている?──『人工着色料不使用』の使える範囲が広がった

FDAは2026年2月5日付の業界向けレターで、『no artificial colors』などの任意表示について執行裁量を示しました。執行裁量とは、法律上グレーでもFDAが取締りをしない方針を公表することです。

これまでは、この表示は『添加された色素が一切ない』食品にしか使えませんでした。天然由来の色素であっても『色を付けている』以上は使えない、という厳しい運用だったのです。

今回の転換で、石油由来のFD&C認証色素(21 CFR Part 74に掲載。赤色40号・黄色5号など)を含まないのであれば、天然由来の色素(野菜・果実由来など)を使っていても『人工着色料不使用』と表示してよい、という扱いになりました。

この表示を使える条件
以前
添加色素が一切ない食品のみ
石油由来の合成色素(認証色素)を含まなければOK
天然由来色素の扱い
以前
使っていると表示不可
使っていても表示可
合成色素を1つでも含む場合
以前
表示不可
表示不可(変わらず取締り対象)

なぜ注意が要る?──『色素の新規承認』とは別の話(誤解しやすい)

同じ時期にFDAは、ビートレッド(beetroot red)の新規承認スピルリナ抽出物の用途拡大も打ち出しました。ここが混同されやすい部分です。

これらの色素承認は異議申立てにより発効が延期され、現時点で未発効(まだ使えない)です。今回『効いている』のは『人工着色料不使用』表示の執行裁量であって、色素そのものの承認ではありません。『新しい天然色素が使えるようになった』と読むのは誤りです。

もう1つ。この執行裁量は連邦(FDA)レベルの話です。州法や私人による訴訟からの保護(safe harbor)にはなりません。州によっては別途規制や訴訟リスクが残る点は、輸出前に確認が必要です。

FD&C認証色素:FDAが1品ごとにバッチ検査して認証する石油由来の合成色素。21 CFR Part 74に掲載。赤色40号・黄色5号などが代表例。
執行裁量:法律上グレーな運用でも、FDAが当面は取締りをしないと公表する方針。承認や規則改正とは異なる。
safe harbor:『これを守れば責任を問われない』という法的な保護。今回の執行裁量は連邦レベルのみで、州法・私人訴訟には及ばない。

日本の輸出者がやること:3ステップ

  1. 色素を棚卸しする:自社製品の色素を1つずつ確認し、FD&C認証色素(赤色40号・黄色5号など)が入っていないかを洗い出します。1つでも入っていれば『人工着色料不使用』は使えません。
  2. 天然由来に置き換える:合成色素を野菜・果実由来などの天然色素へ置き換えれば、米国パッケージで『人工着色料不使用』を訴求できます。使う天然色素は承認済みの範囲に限り、未発効の新規色素(ビートレッド等)は使いません。表示は当社のFDA代行が要件を確認します
  3. FDA手続き・通関を整える:施設登録・事前通知・栄養/アレルゲン表示は従来どおり必要。通関・FBA納品は当社の発送代行(SLC)が支援します

通関の骨子として、菓子・調味料・飲料は常温物販として輸出可能で、HTS(米国の関税分類コード)は品目ごとに変わります(砂糖菓子・ソース類・清涼飲料などで別分類)。分類とラベル要件は品目単位で確認するのが要点です。どの色素が認証色素に当たるかの判断は誤りやすいため、ラベル設計とFDA手続きは当社が確認しながら進めるのが確実です。

💡 実務のワンポイント

対象は『FD&C認証色素(赤色40号・黄色5号など石油由来の合成色素)を1つも含まない』食品だけ。1つでも入っていれば従来どおり表示は使えません。まず原材料を色素単位で棚卸ししてください。

よくある質問

合成色素が入っていても『人工着色料不使用』と書けますか?
書けません。FD&C認証色素(赤色40号・黄色5号など石油由来の合成色素)を1つでも含む製品は対象外で、従来どおり取締りの対象です。
天然由来の色素を使っていても表示できるのですか?
はい。石油由来の合成色素さえ含まなければ、野菜・果実由来などの天然色素を使っていても『人工着色料不使用』と表示できるようになりました。ここが今回の転換点です。
ビートレッドなどの新しい色素はもう使えますか?
いいえ。ビートレッドの新規承認やスピルリナ抽出物の用途拡大は、異議申立てで発効が延期され、現時点では未発効(まだ使えません)。今回効いているのは『表示の執行裁量』であって色素承認ではありません。
この表示にすれば米国での訴訟リスクは無くなりますか?
無くなりません。今回の執行裁量は連邦(FDA)レベルの話で、州法や私人による訴訟からの保護(safe harbor)にはなりません。州ごとの規制・訴訟リスクは別途確認が必要です。
出典は?
FDAのプレス発表と業界向けレター、および複数の米国法律事務所の解説(Skadden)で裏取りしています。記事末尾のソースをご確認ください。
📘 用語ミニ解説
  • クリーンラベル:合成添加物や合成色素を避け、天然由来・シンプルな原材料を訴求する食品の潮流。米国の棚で差別化軸になりやすい。
  • HTS:米国の関税分類コード(Harmonized Tariff Schedule)。品目ごとに分類が変わり、菓子・ソース・飲料で別コードになる。
  • 事前通知:食品を米国へ輸入する際、到着前にFDAへ提出が必要な通知(Prior Notice)。施設登録とあわせて従来どおり必要。
🤝 むずかしく見えても、ここは任せられます

『どの色素が認証色素に当たるか』『天然由来への置き換えで表示要件を満たすか』の切り分けは判断を誤りやすい部分です。ラベル設計とFDA手続きは当社(WorldShift)が支援します。

本記事は2026年2月5日のFDA業界向けレター(『no artificial colors』表示の執行裁量)に基づく。ビートレッド新規承認・スピルリナ抽出物の用途拡大は異議申立てにより発効延期・未発効(本記事執筆時点)で、本件の対象ではない。執行裁量は連邦(FDA)レベルで、州法・私人訴訟からの保護(safe harbor)ではない。HTS分類・表示要件は品目単位・出荷時に要確認。
※本記事は一般的な情報提供を目的とした見本です。金額はわかりやすさ優先のざっくり試算で、個別の通関・税務判断を保証しません。正確な税率・分類は各製品のHTSコードと最新の公式情報をご確認ください。